東京新聞は、原発を支えたという自責の念から、これまでに原発事故で飼い主を失った犬猫たち1000匹の命を救って来た、浪江町の建設会社経営者を取り上げました。
心温まる記事です。
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「原発支えた」自責、犬猫1000匹の命救う
福島・浪江の建設会社経営者
東京新聞 2018年5月30日
東京電力福島第一原発事故で全町避難を強いられた福島県浪江町で、建設業を営む赤間徹さん(55)はこの七年、飼い主とはぐれたり事故後に生まれた犬や猫を保護し、新たな飼い主らに引き渡してきた。その数、約千匹。事故がなければ飼われ続けていたはずの動物を見捨てられなかった。根底には「自分は原発で食ってきたから」という自責の念がある。(内田淳二)
常磐自動車道浪江インターに近い人けのない集落に、犬や猫の鳴き声でにぎやかな自宅がある。犬小屋で寝ていた雑種の大型犬「マック」が赤間さんの声を聞き、大きなあくびをした。
六年前の秋、福島第一原発がある双葉町で、民家の庭先に迷い込んでいた。当初はけがや皮膚病で毛が抜け、やせこけていた。元の飼い主は避難先の事情で引き取れないといい、ここで暮らしている。
赤間さんは十八歳で福島第一原発の配管などの溶接を始めた。四十七歳で建設会社を起こし、原発の維持管理に関わってきた。
子どものころから犬が好きで、事故前には浪江町の自宅に十四匹を保護。事故後は廃炉作業に携わりながら、避難先の郡山市からの車での行き帰りの途中、犬や猫を見つけると保護し、愛護団体やインターネットを通じて飼い主を探した。現在は犬二十二匹、猫六十匹と暮らす。
一昨年十一月に夜も自宅に滞在できる準備宿泊が始まるまで、毎日通って世話をした。えさ代に加え、車の燃料代がかさんだ。東電からの賠償金では間に合わず、貯金を取り崩した。知り合いから「何で他人の犬猫のためにお金使ってんだ」と不思議がられても、やめなかった。
「自分はずっと原発で食ってきた。その原発の事故さえなければ、動物たちは人と一緒に暮らせていたのに…」という思いがある。
廃炉に携わるのも、同じ自責の念から。「除染の方が危険も少ないし割もいいんだけど」。原子炉近くで、放射線を防ぐ鉛のベストを着ても五分しか作業できない現場も経験した。
ただ、会社は開店休業中。事故前に二十人いた従業員は各地に避難し、残った六人も除染をする会社などに移った。自宅は帰還困難区域に近く、放射能への不安から妻(59)や三人の子は今も避難先にいるため、一人暮らしが続いている。
「一緒にやっぺ」と言ってくれた獣医師ら仲間たちが支えだった。「あなたが倒れたら大変。何でも送るから」と、何度も食料を送ってくれた支援者もいる。「この七年、悪いことばかりではなかった。事故前には出会えなかった人たちと出会えた。これからもできることをやっていきたい」。顔をほころばせ、犬と猫をそっとなでた。