2018年5月6日日曜日

泊原発再稼働の地元同意 9首長が「もっと広く」と

 北電泊原発(後志管内泊村)運転停止から6年となるなかで、北海道新聞が後志管内20市町村の首長にアンケートを行ったところ、泊原発再稼働の条件となる地元同意が必要な自治体の範囲について、9市町村が原発30キロ圏か、それよりも広い範囲から同意を得るべきだと回答しました。
 また2町村が今後、原発の採算性が取れなくなることに備え「北電は廃炉の検討を始めるべきだ」との見解を示しました。
 
 それとは別に北海道新聞は「泊停止6年『原発頼み』脱却の機に」とする社説を掲げました。
 原発の再稼働の審査はいま敷地内の断層の件がクリアにならず停滞し、また世論調査で道民の再稼働反対多数を占めるなか、泊原発が停止中でも電力供給に支障はないという現状を受け止め、原発に依存しない将来像を描くべきではないかと提案しています
 
 電力会社の潤沢な広告宣伝費の恩恵を受けている新聞社が、脱原発を主張するのは勇気の要ることです。
 
 二つの記事を紹介します。
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泊原発再稼働の地元同意 9首長「もっと広く」 後志管内調査 
北海道新聞 2018年5月5日
 北海道電力泊原発(後志管内泊村)の運転停止から5日で6年となった。北海道新聞が後志管内20市町村の首長にアンケートを行い、泊原発再稼働の条件となる地元同意が必要な自治体の範囲を尋ねたところ、9市町村が原発30キロ圏か、それよりも広い範囲から同意を得るべきだと回答した。また2町村が今後、原発の採算性が取れなくなることに備え「北電は廃炉の検討を始めるべきだ」との見解を示した。
 
 アンケートは4月中旬に実施した。地元同意の範囲を、原発30キロ圏か、それよりも広い範囲と答えた9市町村は小樽、留寿都、余市、積丹、倶知安、蘭越、黒松内、ニセコ、仁木。
 このうち、留寿都は避難計画策定が義務づけられる原発30キロ圏内の「緊急防護措置区域」(UPZ、13町村)と回答した。30キロ圏内の余市、積丹、倶知安、蘭越と30キロ圏外の小樽、黒松内の計6市町村は「後志管内全域」とした。30キロ圏内のニセコ町は「札幌など道央も含む後志管内より広い範囲」と回答。同じく仁木町は「その他」を選んだ上で「UPZの市町村を最低限とし、希望によってUPZ圏外の自治体も加える」との考えを示した。
 
 
(社説)泊停止6年「原発頼み」脱却の機に
北海道新聞 2018年5月5日
 北海道電力泊原発が全面停止後、きょうで6年になった。
 北電は泊の早期再稼働を目指しているが、原子力規制委員会の審査は長引いている。敷地内の断層が活断層ではないとする北電側の説明が不十分なことによる。
 世論調査で道民の再稼働反対は多数を占める。利用者に節電が定着したこともあり、「泊抜き」での電力供給に支障はなく、来年は新たな火力発電所も稼働する。
 北電はこうした現状を受け止め、再稼働一辺倒の考え方を見直し、原発に依存しない将来像を描くべきではないか。
 
 泊停止後の2度の値上げで高止まりした電気料金についても、再稼働頼みの従来の姿勢を改め、発想の転換と経営努力によって値下げを実現してもらいたい。
 泊の審査では課題が山積し、敷地内の断層のほか、積丹半島沖の海底活断層を想定した地震動評価もこれからだ。防潮堤も液状化の懸念から設計変更を求められた。
 2千億円台半ばと見込む安全対策費の増加は避けられまい。
 北電は原発の電気を安定的で低廉と言い続けてきた。果たして本当か、丁寧な検証が必要だ。
 
 来年は北電にとっての大きな節目として注目したい。
 まず2月、経済性に優れ二酸化炭素排出量も少ない液化天然ガス(LNG)火力発電所3基のうち1基が石狩湾新港で稼働する。
 北電は泊停止後、別の発電所がトラブルで止まった際の供給不安を訴えてきた。そこに新たな大規模電源が加わる意味は大きい。
 例えば、燃料費が高い石油火発をLNG火発に置き換えていくことにより、値下げ原資を捻出できないか、検討してほしい。
 
 続いて3月には、北海道と本州とを結ぶ海底ケーブル「北本連系」が60万キロワットから90万キロワットに増強される。電力の安定供給に寄与するだけでなく、再生可能エネルギーが拡大する余地を生むはずだ。
 再生エネこそ、将来の鍵を握る電源である。
 風力など出力変動が大きい再生エネも取り込めるように、国は送電線の空き容量を有効に使うためのルールづくりを行っている。
 こうした追い風を生かしたい。森林の木質バイオマス、酪農地帯のバイオガス。道内で定着しつつある再生エネが一層拡大すれば、地域振興や雇用にも結びつく。
 
 北電は値上げ以降、新電力に顧客を奪われている。地域に密着し特性を生かす姿勢で、新たなエネルギー戦略を描くべきだ。