毎日新聞が、米山知事辞職の事態に当たり、米山氏の原発政策とは何だったのかを検証する記事「18知事選/上」を出しました。全3回の短期連載記事です。
米山氏は三つの検証について、直近では検証終了までの期間を「2、3年」と述べるなどカウントダウンを進め、20年10月の任期満了までに一定の結論を出し、次期知事選の争点とすることも想定していたと見ています。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
残された三つの検証
18知事選/上 原発問題、誇りと無念さ 「反対」ありきではなく
毎日新聞 2018年5月1日
「次の知事はどなたでも構わない。その方のスタンスで結構なので、未来への解決につながる結論を出していただきたい」
米山隆一氏(50)は知事辞職を表明した4月18日の記者会見で、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働問題を巡る「三つの検証」の行方を問われると、涙ながらにこう訴えた。検証は「私の歴史的使命」だったとも言及。その言葉の端々からは、原発問題と対峙(たいじ)してきた「誇り」と、それを途中で投げ出さざるを得なくなった無念さがにじみ出ていた。
三つの検証とは、福島第1原発事故の原因▽原発事故による健康と生活への影響▽事故時の安全な避難方法--を県が独自の手法や目線で行うというもので、米山氏が2016年10月の知事選で公約の核に据えた。これらを終えない限り、再稼働の是非を巡る議論にすら応じないという姿勢を選挙戦を通じて県内全域に流布した。結果、「反原発」を主張する共産、社民、自由各党や市民の熱烈な支持を受けて、盤石と言われていた与党推薦候補に6万票以上の大差で勝つ「奇跡」を起こした。
「検証」としか言っていない米山氏が反原発の思いを糾合できたのは、検証作業を続けている限り、原発は動かないという事実があるためだ。東電は、事前の了解なしに同原発を再稼働しないとの約束を、立地自治体の柏崎市、刈羽村だけでなく県とも結んでいる。
世界最大規模の柏崎刈羽原発は1基動けば年間500億~1100億円の収益改善効果が見込まれるだけに、国や東電の再稼働への思いは強いが、米山氏は「経済性と安全性の議論は別」と一蹴する。17年2月に同原発の免震重要棟の耐震不足問題が発覚した際も「安全第一に取り組んでいるのか疑問だ。対話の前提が覆ってしまう」などと東電をけん制。同原発6、7号機が原子力規制委員会の審査に合格した後の今年1月に県庁を訪問した東京電力ホールディングスの小早川智明社長に対しても「(三つの検証を終えない限り再稼働議論に応じないという)県の判断に対して国から異を挟まれる立場にはない」と述べ、強気の姿勢を崩さなかった。
米山氏は三つの検証を「賛成派も反対派も、皆が原発問題に向き合うためのもの」と表現し、再稼働への「反対」ありきではないと主張してきた。知事就任直後の17年1月には「検証には3、4年かかる」と発言。しかし近ごろは検証終了までの期間を「2、3年」と述べるなどカウントダウンは進み、一定の筋は通してきた。20年10月の任期満了までに一定の結論を出し、次期知事選の争点とすることも想定していたとされる。
会見で県政史上最短となった約1年半の在任期間の自己評価を問われた米山氏は「『終わり良ければ全て良し』という言葉があるが、逆に終わり悪ければ全て悪い。マイナスだ」と力なく答えた。「米山カラー」の中心を担っていた原発政策に後ろ髪を引かれるように会見場を後にした。【堀祐馬】
◇
米山県政の象徴だった原発再稼働問題を巡る「三つの検証」は、米山氏のスキャンダルというまさかの事態で宙に浮いた。米山氏の原発政策とは何だったのかを検証する。