2018年5月21日月曜日

新潟県知事選で花角氏擁立の二階幹事長のシナリオが破綻

 新潟県知事選に向けて、脱原発を謳う池田千賀子(県議)候補が事実上の野党統一候補として確定し、20日には立民党の枝野代表が新潟入りし、池田氏と同じ車で街頭演説を行いました。
 先の知事選では、米山隆一氏は「連合」の推薦等を受けませんでしたが、それによって脱原発を鮮明に出来たことが、却って好都合で当選につながったと見られました。今回は「連合」も支持を表明しているので、いまのところ公明党が自主投票を決めていることと共に、プラスの要因になると思います。
 
 ジャーナリストの横田一氏によれば、自民党推薦の花角氏は二階堂幹事長と強いつながりがある人で、そのことを伏せて擁立したかったようなのですが、そのシナリオは早々に破綻したということで、今や「中央の紐付き忖度官僚候補VS再稼働反対の民意に寄り添う県議候補」という与野党激突の構図になっているということです。
 本来そうあるべきことです。
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新潟県知事選に再稼働反対派の県議出馬で二階幹事長のシナリオが破綻!
 自公候補の“エセ県民党”ぶりが明らかに
横田 一 LITERA 2018年5月20日.
 米山隆一知事の辞任をうけて、新潟県知事選挙が5月24日の告示されるが(6月10日投開票)、柏崎刈羽原発の再稼働阻止を訴える知事候補・池田千賀子県議が予想以上に支持を広げている。
 
 米山知事の辞任直後は、今回は、与党が再稼働を容認する候補を立てて、勝利する可能性が高いだろうと見られていた。というのも、米山知事の辞任理由が女性スキャンダルだったことから、米山陣営の選対本部長だった森ゆうこ参院議員(自由)も「これが本当の“新潟ショック”」とこぼすなど、野党陣営は動揺を隠せず、「候補擁立難航で野党側の出遅れ必至」と見られていたからだ。
 しかも、混乱する野党陣営を尻目に素早く動いたのが「政界の寝業師」こと二階俊博・自民幹事長だった。米山辞職表明から2日後の4月20日、塚田一郎・新潟県連会長(参院議員)と自民党本部で面談し、“県民党”を名乗れる政党色のない候補者選考の方針で一致。「(自公推薦候補が敗れた)前回の轍を踏まないよう頑張ってくれ」と激も飛ばしたのだ。この時点で名前が浮上したのが、二階氏の運輸大臣時代に秘書官を務めた花角英世・前海上保安庁次長だ。佐渡出身の国交官僚が早い段階から有力候補に浮上したことから、地元記者も「花角氏擁立ありきの“二階シナリオ”に沿った茶番劇」としてこう証言する。
「当初、県連側が“県民党”というキャッチフレーズで独自に花角氏擁立をするかに見えましたが、それは自公の存在、政党色を隠すための巧妙な戦略。推論ですが、実際には二階氏が大臣時代の懐刀だった花角氏を擁立させたという“二階シナリオ”との見方が有力です」
 
 実際、米山氏の辞任表明の1週間後の27日に、政治色を感じさせない団体「新しい新潟を考える会」が立ち上がったが、初会合には自公県議も参加していた。そして、4日後の5月1日には自民党の友好団体の商工会議所幹部らと同会メンバーが会合を持ち、「花角氏はマネジメント能力もあり、知事として相応しい」(同会の医療法人『新成医会』渡辺毅理事長)と出馬要請を決めた。
 ただし、自民党は表向きこうした政治色を必死で消そうとしていた。9日、渡辺氏ら県民有志8名が上京して、花角氏に出馬要請したが、自公議員は一人もいなかった。選挙戦に突入すれば、前回の県知事選の自公推薦候補と同様、二階幹事長の陣頭指揮の下で建設業界や商工会議所や農業関連団体(JAや土地改良区など)の自民党友好団体・企業が集票マシーンと化していく組織型選挙となるのは確実なのに、まるで政党色のない勝手連的な県民有志の思いを受けとめた”県民党候補”という演出をしたというわけだ。
 
腹心官僚をたてた二階幹事長対抗して
再稼働反対派擁立の電撃会見を行った菊田真紀子衆院議員
 だが、こうした二階氏の仕掛けを押し返したのが、元民進党で現在は無所属の菊田真紀子衆院議員(新潟4区)だ。2017年秋の総選挙では、金子恵美・前衆院議員との一騎打ちで比例復活を許さない完勝をしたことで知しられる菊田議員だが、今回の県知事選の候補擁立でも勝負師ぶりを見せつけた。
 菊田議員は自身の知事選出馬については固辞したものの、そのかわりに5月8日、柏崎刈羽選出の池田千賀子県議とともに電撃会見を行い、池田氏を野党の統一知事候補とする流れをつくりだしたのだ。
 
 県庁内の記者会見場に池田氏と一緒に現れた菊田議員は、自公が二階氏に近い官僚の花角氏を擁立したことを皮肉りながら、池田氏を知事選に擁立することになった経緯をこう説明した。
「高い地位にある優秀な官僚ほど、官邸や権力者の意向に逆らうことができず、記憶喪失になったり、記録やデータがなくなったり、記録を改竄したりということが起こっております。新しい県知事には、こうした総理官邸のご意向に従うような人ではなく、まさに地域の中で人々の庶民の声に耳を傾けることができる方になっていただきたいと考え、池田千賀子さんが最も相応しい方ではないかと考えました」
 「『原発再稼動を阻止して欲しい』という県民の願いを受けとめて、大変悩まれましたが、決意をしていただきました」
 そして、出馬会見は二人だけだが、「様々な立場の団体や政党に幅広く声をかけて池田氏を“県民党候補”として支える態勢にしたい」と、前回の県知事選同様、野党各党や市民が池田氏を支援して、結果的に野党統一候補となる流れをつくりだすことを宣言した。
 
 また、菊田議員が会見で強調していたのが、与党陣営がキャッチフレーズにしようとしていた「県民党」だ。菊田氏は、自公の候補である花角氏について、「総理官邸のご意向に従う官僚出身“エセ県民党候補”」であり自分たちこそ地元の民意(再稼働反対)に根差した“本家の県民党候補”だと強調した。
 記者団からは「なぜ今日、出馬会見なのか」という質問も出た。すると、菊田氏が微笑みながら「女の(勝負)勘です」と答えたが、都知事選や都議選で自民党に連戦連勝をしていた頃の小池百合子都知事を彷彿させる勝負師ぶりといっていいだろう。
 
出馬を表明した池田千賀子県議の原発再稼働反対の決意
 実際、出馬を決意した池田氏は“県民党候補”としてふさわしい人物だ。1961年に柏崎市生まれた池田氏は、1981年に柏崎市役所に初の歯科衛生士として約20年間勤務した後、2003年から柏崎市議を3期務め、2015年に新潟県議会選挙で初当選。所属会派は、社民党系の「未来にいがた」だ。
 池田氏は会見で“総理官邸のご意向に従順な忖度官僚と対極にある庶民派”と菊田議員から紹介されたあと、決意表明をして“原子力ムラ内閣”とも呼ばれる安倍政権と違いを強く訴えた。
「福島原発事故の検証も終わらないまま、福島の皆様が苦しんでおられることに対する責任を誰も取らない状態の中で『新しい規制基準を作りました。この新規制基準に適合したから合格です』といった結果が、私たちの前に突きつけられている」「『自治体が作った避難計画で安全に避難ができる』『避難をした人が元の故郷に戻って元通りの生活がすぐにできる』と信じている市民は少ないのではないか」
 
 原子力規制委員会の“お墨付き”(新規制基準合格)で再稼働を進めている安倍政権に対して、池田氏は異議申立をすると同時に、「避難計画が不十分な現状での柏崎刈羽原発の再稼働には反対」「福島原発事故の検証が先決」という米山知事の方針継承を宣言したのである。
 
 質疑応答で、筆者は池田氏に対して、対立候補の花角氏をどう見ているのかを確認した。
横田「花角さんの陣営も『県民党』を称して『(福島原発事故の)検証も続ける』と言っているが、菊田氏が言った『官僚の方だと官邸や自民党の言いなりではないか』『花角さんに任せると問題ではないか』という危機感があったのか。『原発推進の安倍自民党が応援した候補者だと米山県政継承は難しい』という問題意識があったのか」
 
池田「国政の状況を見ると、官僚の皆様は『誰を向いて誰のために仕事をしているのか』と思いたくなる国民は私だけではないと思う。(花角氏出馬の)要請の経過などを報道等で知る限り、『県民党』と言っても、それを鵜呑みにして『県民が求めていきたことを必ず実現してくれるだろうと考えるべきだ』と言われても難しいのではないかと私も思っております」
 
 菊田議員が問題視した「総理官邸のご意向に従う官僚出身知事だと再稼働阻止を望む民意がないがしろにされかねない」という懸念を、池田氏も共有していたのだ。
 
新潟県知事選の結果によっては、安倍首相の3選にも影響
 いずれにしてもこの池田氏の電撃会見で、「政党色のない候補擁立で与野党相乗り」「原発再稼働を最大の争点とした与野党激突回避」という与党陣営(安倍自民党)の狙いは完全に打ち砕かれ、「中央の紐付き忖度官僚候補VS再稼働反対の民意に寄り添う県議候補」という与野党激突の構図が浮かび上がってきた。
 実際、その後の流れをみていると、野党が次々と支持を表明して結果的に統一候補となって、池田氏の支持は拡大。安倍首相の総裁選3選にも影響を与えかねない情勢となりつつある。
 
 2017年秋の総選挙以降、初めての大型地方選挙となる新潟県知事選で自公系候補が敗れれば、「安倍首相では来年の統一地方選挙や参院選を戦えない」という声が自民党内で強まる可能性はあるからだ。
“原子力ムラ内閣”こと安倍政権に「再稼働反対」の民意を突きつけた米山知事は1年半で県庁から去ることになったが、今回の新潟県知事選でその路線が継承されるのか、そして「原発推進の安倍政権ノー」の民意を示すことが出来るのか。新潟県知事選から目が離せない。(横田 一)