米山知事辞職の事態に当たり、米山氏の原発政策とは何だったのかを検証する毎日新聞の連載記事「18知事選/下」 完結編です。
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残された三つの検証
18知事選/下 立地首長とは平行線 委員会存廃も争点に /新潟
毎日新聞 2018年5月3日
「皆さん、よく慎重派、推進派と言うが、(東京電力柏崎刈羽)原発の一番近くで暮らしている私が再稼働に慎重でないわけがなかろう?」
米山隆一知事(50)が辞職をためらう記者会見のあった4月17日、刈羽村役場に詰めかけた報道陣に、品田宏夫村長(61)は冗談ともつかない口調でこう言い放った。品田村長はよく知られた再稼働の推進派。住民の安心と原発の安全確保を再稼働の前提とする限り、慎重さが求められる。そういう意味での“慎重派”なのだ。
品田村長の言葉は揺るぎない。「誰が知事になろうとも原発に対する私の考えは変わらない」と持論を展開。「屋上屋を架すようなものだ」。県の三つの検証について、原子力規制委員会の審査合格を引き合いにこう喝破し、県の検証作業の継続に再考を促した。
県の三つの検証は、柏崎市でも賛同が得られていない。米山氏の辞職を受け、改めて立地首長との意見の相違が浮き彫りになった。
同市の桜井雅浩市長(56)は“条件付き容認派”を自任する。これまで再稼働の二つの条件として、国や東電に対し「実効性ある避難計画」「1~5号機の2年以内の廃炉計画」の策定を突きつけている。容認とは「福島復興のためにも6、7号機再稼働の価値は認める。同時に1~5号機は徐々に確実に減らしていく」ということだ。
桜井市長は三つの検証のうち、福島第1原発事故の原因を検証する技術委員会のあり方に否定的だ。その理由は、規制委が4年をかけ160回以上の会合で検討したうえでの「合格」に対し、県の技術委は時間的、回数的に制約がある中での検証だからだ。
桜井市長は米山氏が辞職表明した18日、「県が原発の安全性を判断することに関わっていいのか。県は事故が起きた際に賠償責任を負えないだろう」と検証見直しを提案した。
再稼働に“慎重派”の米山氏との意見の相違は手つかずのまま残る。昨年11月の米山氏、桜井市長、品田村長の3者会談。桜井市長は「原発の安全は国が一元的に判断すべきだ」との考えから、三つの検証の合理的な進行と早期終了を訴えた。品田村長は三つの検証を「政治的」決断だとしたうえで、議論の余地があるとした。対する米山氏は国と県の「ダブルチェック」の価値を説き、議論は平行線をたどった。
米山県政の象徴だった「三つの検証」は完全に継承されるのか、一部になるのか、消滅するのか。「ポスト米山」を巡る知事選の争点の一つとして注目される。【内藤陽】