2018年5月14日月曜日

14- エネルギー基本計画で公募意見を「黙殺」 原発再稼働政策に反対多数

 2030年に向けた「エネルギー基本計画」の見直しに関し、4月末までに政府に寄せられた306件の国民からの意見を東京新聞が分析したところ、「基幹電源を原子力に置くのは世界の流れに逆行する」原発ゼロや縮小を求める声が66に達し太陽光など再生可能エネルギーは現行目標より拡大すべきだとの意見が62%を占めたにもかかわらず、政府は新計画で原発は「基幹電源」として電力に占める割合を30年度時点で「2022%」とする目標堅持し、その一方で再生エネは「2224%」に据え置かれ、原発反対と再生エネ拡大を求める国民の声はほとんど無視されていることが明らかになりました。
 国民の声が反映されない原因は政府が選ぶ基本政策分科会の委員に、東電に融資するメガバンクや原発メーカーの役員、経産省出身者など原発産業の利害関係者が多っているとの批判があるということです。
 
 基本政策を審議する委員が原発寄りに偏っているのは論外であるし、寄せられたコメントが全く生かされていないということは大いに問題です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
エネ計画 公募意見「黙殺」 原発再稼働政策に反対多数
東京新聞 2018年5月14日
 二〇三〇年に向けた「エネルギー基本計画」の見直しに関し、四月末までに政府に寄せられた三百六件の国民からの意見を本紙が分析したところ、原発再稼働を急ぐ政府の現行政策に反対を表明する意見が三分の二を占めていたことが分かった。反対意見は審議会ではほとんど議論されず、政府は新計画でも現行の原発拡大目標を堅持する。意見募集しながら反映は拒む経済産業省の姿勢に、審議会委員の一部も「国民の意見が軽視されている」と批判している。 (伊藤弘喜)
 
 経産省は昨年夏から計画の四年ぶりの見直しに着手。十六日にも新計画案を公表する。「計画策定に際して幅広く意見を募集する」として「意見箱」の名で窓口を設置。年初からホームページや郵送で国民や団体から記名による意見を募集した。多数の意見が集まったが、経産省は傾向などは分類しておらず、審議会で参考配布しただけ。審議でも窓口設置以降三回の会合で国民意見に言及したのは消費者団体顧問の辰巳菊子氏だけだ。
 
 意見は「基幹電源を原子力に置くのは世界の流れに逆行する」など原発ゼロや縮小を求める声が二百二件(66%)に達した一方、太陽光など再生可能エネルギーは現行目標より拡大すべきだとの意見が百九十一件(62%)を占めた
 
 しかし、政府は新計画で両電源とも四年前に決めた目標を全く変えない。原発は「基幹電源」の位置づけを変えず、電力に占める割合を三〇年度時点で「20~22%」とする目標も堅持する。一六年度実績の1・7%からは大幅拡大する。再生エネは「22~24%(一六年度実績15・3%)」に据え置く。
 
 日本のエネルギー政策を左右し、国民の安全や生活に大きな影響を及ぼす論議に国民の声が反映されない原因は政府が選ぶ委員構成の偏りにあるとの批判もある。委員は東京電力に融資するメガバンクや原発メーカーの役員、経産省出身者など原発産業の利害関係者が多い。意見箱にも「委員構成を公平にすべきだ。原発再稼働を容認する委員が多すぎる」(六十代男性)などの批判が寄せられた。
 審議会で唯一国民の意見に触れた辰巳氏は「原発反対と再生エネ拡大を求める国民の声はほとんど無視された。国民を軽視している」と疑問を呈している。
 
◆総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会の委員
 分科会長 坂根正弘(コマツ相談役)▽委員 秋元圭吾(地球環境産業技術研究機構システム研究グループリーダー)▼伊藤麻美(日本電鍍=でんと=工業代表取締役)▼柏木孝夫(東工大特命教授)▼橘川武郎(きっかわ・たけお、東京理科大教授)▼工藤禎子(くどう・ていこ、三井住友銀常務執行役員)▼崎田裕子(ジャーナリスト)▼武田洋子(三菱総研政策・経済研究センター長)▼辰巳菊子(消費生活アドバイザー)▼寺島実郎(日本総研会長)▼豊田正和(日本エネルギー経済研理事長)▼中上英俊(住環境計画研会長)▼西川一誠(福井県知事)▼増田寛也(野村総研顧問)▼松村敏弘(東大教授)▼水本伸子(IHI常務執行役員)▼山内弘隆(一橋大大学院教授)▼山口彰(東大大学院教授) (敬称略)