高速増殖原型炉もんじゅは半世紀に渡って少なくとも1兆1300億円を投じましたが、研究の達成度は僅かに16%であったことが、会計検査院の検査で明らかにされました。
この間装置が実際に運転された延べ日数は僅かに250日でした。
また装置を保守管理するにあたって計画を改定したものの、その妥当性に疑義があるとも指摘されました。
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もんじゅ研究達成16% 投入1兆円超 廃炉費3750億円超か
東京新聞 2018年5月12日
会計検査院は十一日、廃炉が決まっている日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)に関する検査結果を公表した。「保守管理の不備が廃炉につながった」と総括。少なくとも一兆一千三百十三億円が投じられ、研究の達成度は16%だったとした。廃炉費用は国の試算の三千七百五十億円を超える可能性があるとした。研究開発経費を合わせた総コストも増える恐れがある。
半世紀にわたって巨額の税金を投じながら研究開発に失敗した経緯を裏付ける検査結果。一方、これまで検査院がもんじゅの研究開発経費について意見表明したのは二〇一一年の一回にとどまり、検査や政策評価の在り方も議論になりそうだ。
検査院は、〇九年一月以降の保守管理の実態を調べ、期限までに検査が済んでいないなどの機器や項目が多数に上り、原子炉が冷温停止中でも機能維持が必要な重要機器も含まれていたという。
もんじゅは一九九四年四月に初運転以降、冷却材のナトリウム漏れ事故が起きた九五年十二月までで二百五日、運転再開した一〇年五~八月で四十五日の計二百五十日しか稼働していない。
検査院は稼働期間中の研究状況も調査。最初の稼働期間では予定された百四十二の試験項目のうち五十しか完了せず、次の期間は百十七の項目の全てが終わらなかった。
最終的な試験項目数から割り出した達成度は廃炉が決まった一六年十二月の時点で16%。長期的な稼働データの取得など、継続的な運転・保守管理が試験に必要だった項目は達成できなかった。
一六年度までに投じられた一兆一千三百十三億円の内訳は、建設関連費が計約五千九百七億九千万円、保守管理費が計約四千三百八十二億六千万円、人件費が計約五百九十億四千万円、固定資産税が計約四百三十二億六千万円。書類の不存在を理由に予備設計を開始した六八年度から七〇年度までの費用は含まれない。
廃炉費用については人件費や固定資産税が含まれず、ナトリウムの処理費用が変動する可能性があるなど試算よりも増える可能性があるとした。
◆ずさんな保守管理が露呈 1~2割の点検 不適切
会計検査院が公表した高速増殖原型炉もんじゅの検査結果では、日本原子力研究開発機構によるずさんな保守管理の実態が浮き彫りとなった。今後の廃炉作業は、炉心から燃料を取り出すまで現在と同レベルの保守管理が必要になると指摘し「政府一体の指導・監督」を求めた。
原子力機構は二〇〇八年度、機器点検の方法や実施頻度、時期など保守管理の手法を具体的に定めた「保全プログラム」を導入したが、一二年十一月以降、機器の点検漏れが相次いで発覚した。
検査結果報告の中で検査院は、機器の点検を期限内に実施していなかったり、点検の間隔や手法が適切でなく、プラントの安全に寄与しなかったりした点検項目の数が全体の一~二割に上ったと指摘。機器ごとに直近の検査時期が異なるのに、点検間隔の起点を〇九年一月にしたため、結果的に点検間隔を超過する機器が多数あったとした。
また検査院は、冷却システムに含まれるポンプについて、保守管理計画の改訂で追加した点検項目を直後の改訂で削除し、その後の改訂で復活させていた事例を紹介。「改訂の妥当性に疑義があるものが相当数見受けられた」と指摘した。
その上で、計画に従って機器の保守管理を行う必要性の認識が共有されておらず、必要な体制も整備されていなかったことを原因に挙げた。
<高速増殖原型炉もんじゅ>
文部科学省が所管する日本原子力研究開発機構が運営する高速増殖炉で福井県敦賀市にある。電気出力は28万キロワット。1994年4月に初臨界に達した。高速中性子でプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を増殖させ、発電しながら消費した以上のプルトニウムを生むとされる。原型炉は基礎研究用の「実験炉」に次ぐ高速炉実用化に向けた第2段階に位置付けられる(第3段階は経済性を検証する「実証炉」、最終段階が「商用炉」)。冷却材であるナトリウム漏れ事故(95年12月)、炉内装置落下事故(2010年8月)が相次ぐなどし、政府は16年12月、廃炉を決めた。