ビジネスジャーナルが原発の核燃料プールの問題を取り上げました。
日本には各原発の燃料プールに既に1万8000トンの使用済み核燃料が貯蔵されており、未使用の核燃料もそれと一緒に保管されています。
政府は今後合計30基もの原発を再稼働させる意向ですが、そんなことをすれば年間1000トン近く使用済み核燃料が増加するので、核燃料プールは数年間で満杯になってしまいます。
その状況を少しでも緩和するために、各原発では、より緻密(燃料集合体同士をより密集させる)に配置するなどの対策を進めていますが、それ自体はプール内で核分裂を招く危険につながっています。
使用済み核燃料は六ケ所村の再処理工場で再処理することになっています。しかし同工場はこれまで2兆円を投じましたが、いまだに完成していません。これまで完成時期の遅延が20回あまりも繰り返されました。
完成すれば問題が解決するわけではありません。核燃料を再処理してプルトニウムなどを取り出すことにはもともと何の経済的メリットもなく、稼働することになれば合計で19兆円乃至50兆円もの国費が空費されると見込まれています。
福島原発では、11年の事故時に4号機の燃料プールが水素爆発で傾き、それが倒壊したり水が抜けたりしたら大惨事になる心配がありました。幸いに4号機の最上階はそれほど放射能で汚染されていなかったので、最優先でプールから核燃料を抜き出して他所に移動させて事なきを得ました。
核燃料プールにはもともとそういう危険性が内在しています。
稼働中の関電高浜原発が、ミサイル攻撃を受けた場合広域で被害が出るとして運転差し止めを求めた仮処分申請で、大阪地裁は3月30日、そうした具体的な危険性はなく、危機が迫れば政府は原発を停止させるのであるからとして却下しました。
しかし燃料プールがミサイル攻撃を受ければ、直ちに福島原発4号機で懸念された事態が起きる訳なので、ミサイル攻撃によって広域が放射能で汚染される危険性は厳然と存在しています。
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原発の使用済み核燃料、貯蔵プール満杯目前で保存状況は危険…
2兆円投入の再処理工場は稼働せず
神樹兵輔 ビジネスジャーナル 2018年5月4日
マネーコンサルタント
2011年3月の東京電力福島第一原発事故の記憶も生々しい13年9月、安倍晋三首相はIOC(国際オリンピック委員会)総会で、オリンピックの東京招致演説を行っています。
「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、統御されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません」
しかし福島第一原発は大事故以来、4基の原子炉は廃炉に向けて数十年におよぶ期間、総額8兆円以上もかかる廃炉作業に追われています。原子炉建屋に流れ込んだ地下水は今も汚染され続け、保管する汚染水タンクは増え続けています。
これほどの大事故を招いてなお、津波対策を怠っていた無責任な東京電力はじめ、電力業界は原発再稼動に向けて、虎視眈々と動きを進めています。“原発ゼロ”を阻止すべく、安倍首相の取り込みにも成功しています。政府は新たに安全基準をつくり、はじめから原発再稼動ありきで国民を騙し続ける方針に変わりはありません。
危機的状況は、原子炉や汚染水の問題だけではありません。全国の原発(54基)の原子炉建屋上部には使用済み核燃料プールがありますが、ここには未使用、使用済み合わせても数千本単位の燃料が冷却保存されています。年間1000トン以上も増え続ける使用済み核燃料は、すでにプール内で満杯状況に近づいています。
危険な使用済み核燃料が増え続ける
原発を稼働させるための核燃料は、核反応を続けていると稼働に不都合な核分裂生成物ができてしまうため、一定期間核分裂をさせると、新しい燃料と交換せざるを得なくなります。そのため、日本にはすでに1万8000トンにおよぶ使用済み燃料がたまり、あと数年でプールが満杯状況を迎えます。使用済み核燃料は数年間、水を循環させるプールの中で冷やし続ける必要があり、万一空気中に露出されると熱を帯びて核分裂を起こし、メルトダウンに至るという危険なシロモノなのです。
福島第一原発の事故発生時には、津波による全電源喪失によって貯蔵プールへの冷却水の循環ができなくなり、高温の水が蒸発して、あわや大惨事という事態に直面しました。プールは厚さ145~185cmの鉄筋コンクリート製ですが、水素爆発によって一部が損傷し、冷却水が漏れ、使用済み核燃料が空気中に露出して核爆発を起こすという危険な状況にも置かれていたのです。水素爆発によって4号機のプールの支えが破壊され崩壊寸前になり、当時の原子力委員会委員長から菅直人首相に「首都圏壊滅」のシナリオまでが示されていたのです。その後、コンクリートでプールの支えを補強し、事なきを得ましたが、間一髪の異常事態を迎えていたのです。
燃料プールは一定の仕切りで燃料同士を離して保管するようになっていますが、近年、使用済み核燃料の増大で保管に困った電力会社は、ラックと呼ばれる仕切りを狭めることで、ぎゅうぎゅう詰めの状態で保管するまでになっています。この状態は、燃料棒同士が接触しやすくなっており、プール内で核分裂を招きやすい非常に危険な状態なのです。
日本では、使用済み核燃料はプールで十分に熱を冷ました後、青森県の六ケ所村にある再処理工場施設に送って、そこでウランやプルトニウムを取り出して新しい燃料に加工することが前提でした。しかし、これまでに2兆円以上のコストをかけてなお、再処理工場稼働のめどは立っておらず、永遠に処理できないまま、核のゴミは、全国の原発の使用済み核燃料プールで貯蔵され続けているのです。
日本は火山大国、地震大国です。火山の噴火による火砕流や火山灰、津波などの災害とは無縁でなく、すぐそこにある危険と背中合わせなのです。そのうえ、航空機の事故、隕石の落下、北朝鮮のミサイル攻撃などがあれば、使用済み核燃料プールの崩壊によって大惨事が予想されるのです。のん気にオリンピックなど開いている場合ではないでしょう。
一刻も早く、原発ゼロに政策の舵を切り、核のゴミをどう処分していくかを検討すべきです。日本中に国民が住む場所がなくなる事態を回避するためにも、これこそが日本の喫緊の課題といえるのではないでしょうか。 (文=神樹兵輔/マネーコンサルタント)