「第5次エネルギー基本計画」が謳う「原発の比率20~22%」は約30基の原発稼働を要するもので、廃炉の分を差し引くと、再稼働が可能な全原発を再稼働させた上に、新たに原発を建設しないと賄えません。
加えて、主力と謳う再エネの目標値「22~24%」は、世界の趨勢と比べてあまりにも低すぎます。因みにドイツでは65%、フランスでは40%を掲げ、中国に至っては「50年までに80%に拡大する」と宣言しています。
こんなに世界の数字とかけ離れているのは、原子力ムラの「原発」を最優先するために、無理に再生エネを低く抑える必要があるからです。
原発は建設費が高く、運転管理には常時数千人を要し、加えて毎年回転機器の部品を取り替えるなど莫大な維持管理費が掛かります。いずれ品不足から核燃料の高騰も予想されます。
それに対して再生エネは建設費が安く、維持管理費も殆ど掛からずに、燃料代はタダです。
電気代が高くては工業製品のコストが上がり諸外国との競争に勝てません。原子力ムラの利権を守ることは、結局国を亡ぼすことにつながります。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
不都合なことは隠蔽…原子力ムラの空疎なエネルギー計画
日刊ゲンダイ 2018年7月8日
達成する気のない目標を掲げてどうするのか。3日に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」のことである。
計画では、地球温暖化対策のパリ協定発効を受け、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの「主力電源化」が明記されたのだが、その一方で原発は相変わらず「重要なベースロード電源」と位置づけられたまま。2030年までに電源構成に占める原発の比率を「20~22%」とする目標まで新たに盛り込まれた。
そのうえ、再エネが「主力」という割には目標値が「22~24%」と低すぎる。世界は、ドイツが65%、フランスは40%を掲げている。中国も再エネに力を入れ始め、習近平主席は昨年10月の党大会で、「50年までに再エネを全電力の8割に拡大する」と宣言した。
このままでは、日本は脱原発どころか、再エネ事業においても取り残されてしまうだろう。ただでさえ、4日には、名古屋高裁(金沢支部)が、関西電力の大飯原発の運転差し止めを命じた1審の判決を覆し、全国的な原発再稼働へと弾みをつけている。脱原発弁護団全国連絡会共同代表の河合弘之弁護士がこう言う
「経産省は海外で再エネ事業が拡大していることを分かっていながら、具体的な政策を打ち出さない。欧米より後れを取って当然です。再エネを『主力電源』と打ち出したのもしょせん、海外に足並みをそろえるポーズに過ぎません。原発の比率を震災前の25%から20~22%に下げても、約30基の原発稼働が必要なのです。大飯原発の運転差し止め命令の取り消し判決は、原子力ムラの利益を確保したい政府を忖度したのでしょう」
震災後の新規制基準に基づいて再稼働した原発は9基。18基の廃炉が決定しているので、建設中の3基を含め17基が稼働しても、30基には足りない。エネルギー基本計画を実現するなら、新たな原発の増設が必至なのに、それは書き込まないで、今はまだ不都合な事実を隠しているのだ。
再エネが「主力電源」なんてウソ八百。空疎な言葉を並べて、事実をヒタ隠す――。安倍政権の常套手段じゃないか。