2018年7月18日水曜日

<原発のない国へ 基本政策を問う>(4)

 シリーズ4回目は、使用済み核燃料の貯蔵の問題です。
 もともと決定的な使用済み核燃料処分方法が見つからないままでスタートした原発なので、当面の対策である「中間貯蔵施設」しかあり得ませんが、それが半永久的貯蔵所となる可能生が大なので、狭小な日本ではその場所もなかなか見つかりません。
 専用容器に入れて空冷する「乾式貯蔵」はそれなりに現実的な方法ですが、当然コストは増大します。このように事態が進むにつれてどんどんコストが上がるのは原発の宿命です。
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<原発のない国へ 基本政策を問う> (4)むつ市と関電 交錯
東京新聞 2018年7月17日
 青森県むつ市の市街地から車で北に二十分ほど。津軽海峡を臨む雑木林の一角に、真新しい倉庫のような建物がある。原発から出た使用済み核燃料を、プルトニウムなどを取り出す再処理工場(同県六ケ所村)に運ぶまでの間、一時保管する中間貯蔵施設だ。
 東京電力と日本原子力発電(原電)が出資する「リサイクル燃料貯蔵」(RFS)が建設した。東電柏崎刈羽原発(新潟県)から最初の搬入を予定するが、原子力規制委員会の審査が長引き、めどが立たない。
 
 施設を巡る六月三日の報道で、地元がざわついた。関西電力が美浜、大飯、高浜の三原発(いずれも福井県)の核燃料を搬入するため、RFSへの出資を計画していると、共同通信が配信。地元紙にも載った。
 騒ぎが大きくなったのは、福井県の西川一誠知事が昨冬、大飯原発3、4号機再稼働の条件として核燃料の県外搬出を求め、関電が今年中に候補地を示すと約束しているからだ。
 
 むつ市の宮下宗一郎市長は素早く対応した。東電、原電、RFSの三社を市役所への「出入り禁止」に。報道の二日後に上京し、日下部聡・資源エネルギー庁長官に「地域に断りのない中で進めるべきではない」と抗議。六月八日には三社を市役所に呼び、報道内容を否定する言質を取り付けた。十四日の市議会で「報道のような事実はないと認識せざるを得ない」と報告し、騒動は一段落した。
 
 ただ、地元で施設に反対してきた「核の『中間貯蔵施設』はいらない!下北の会」の野坂庸子代表(70)はいぶかる。「市長は頭越しに話が出たことに怒っただけ。核燃料を受け入れないとは言っていない。条件次第で認めてしまうのでは」
 関電は、最多の三原発七基が新規制基準に適合。うち二原発四基を再稼働させたが、使用済み核燃料プールは五~八年分と余裕がない。一時保管場所を確保できずにプールが満杯になれば、原発は動かせない
 再処理工場の稼働が見通せず、電力各社はどこも同じ事情を抱える。プール内で核燃料の間隔を狭めて容量を増やしたり、専用容器で空冷したりすることを検討しているが、いずれも小手先で、限界がある
 
 実は〇五年にRFSを設立する際、東電は他社にも参加を募った。ただ、応じたのは原電のみだった。
 関電に当時の経緯を聞いたが、広報担当者は「記録がなく確認できない」と回答。豊松秀己副社長は六月二十七日の株主総会で、RFSへの出資について「方針を固めた事実はない」と述べるにとどめた。施設の候補地を示す期限は残り半年を切っている。
 
 関電のつまずきに呼応するかのように、与野党の国会議員有志が六月十三日、使用済み核燃料の問題を考える議員連盟を設立。会合は非公開だったが、事務局長の武田良太衆院議員(自民)は「関電問題」がテーマの一つと認めた。出席した野党議員は「自民党には、再稼働のために中間貯蔵に道筋を付けたい思惑もあるだろう」と話した。(宮尾幹成)
 
<エネ計画では>電力会社 貯蔵拡大
 原発を動かせば必ず出る使用済み核燃料は現在、国内に一万八千トンある。国は全量再処理する方針だが、再処理工場は稼働のめどが立っていない。エネルギー基本計画では「貯蔵能力の強化が必要」とし、「安全を確保しつつ、管理する選択肢を広げることが喫緊の課題」と指摘した。国は二〇一五年十月、使用済み核燃料対策に関する行動計画を策定。電力各社はこの計画に基づき、中間貯蔵施設や、専用容器に入れて空冷する「乾式貯蔵」など、貯蔵能力を拡大しようとしている。こうした取り組みを加速させるため、基本計画で「国が積極的に関与」すると強調。自治体や電力会社とともに「安全で安定的な貯蔵が行えるよう、官民を挙げて取り組む」と表明している。