2018年7月4日水曜日

原発活用をにじませた「エネルギー基本計画」が閣議決定

 政府は3日、「エネルギー基本計画」を4年ぶりに改定し閣議決定しました。
 
 原発については「依存度は可能な限り低減していく」と述べる一方で、「重要なベースロード(基幹)電源」と位置付けて、実質100万キロワット原発30基稼働を目指しています。
 新増設や建て替えに言及していませんが、30基レベルを維持するためとして、なし崩し的に取り入れられる惧れがあります。
 それに原発を再稼働することで電気料金を廉価に出来るかのような記述は欺瞞で、廃炉自体が自前の資力ではできずに、使用済みの核燃料の処理に数万年を要する原発の発電コストが低廉である筈がありません。
 
 唯一評価できる点は、再生エネルギー発電を「長期安定的な主力電源として持続可能なものにする」とした点です。
 政府と電力会社は、これまで送電容量の空きがないという理由や、その裏返しとして、送電線への接続に法外な費用を要求したりすることで、再生エネの普及を妨げてきました。
 そのお蔭で日本は再生エネの後進国になってしまいましたが、今後普及させていくことで発電設備のコストを下げ、コスト低減のネックになっている固定価格買い取り制度からの離脱を早期に達成する方針を明示しました。
 
 いまや、再生エネの発電コストは原発の数分の1であるという国際常識が、日本でも早く実現されるようにして欲しいものです。
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政府にじむ「原発活用」 「エネルギー基本計画」改定
毎日新聞 2018年7月3日
 政府は3日、2030年度までの中長期的なエネルギー政策の方向性を示す「エネルギー基本計画」を4年ぶりに改定し、閣議決定した。再生可能エネルギーの「主力電源化」を打ち出す一方、原発も中長期的に活用していく姿勢をにじませた。プルトニウムの保有量削減や石炭火力発電の輸出案件の厳選など国際社会から日本に向けられる懸念への配慮も目立つ。 
 
 原発は「重要なベースロード(基幹)電源」と位置付けつつ「依存度は可能な限り低減していく」との従来方針を維持した。新増設や建て替えに言及しなかったが、温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」を踏まえて今回初めて盛り込んだ50年までの長期方針に「安全性・経済性・機動性に優れた炉」を追求すると明記。世界で実用化が進む小型原子炉など最先端の原発技術の開発を推進する姿勢を示唆した。 
 再稼働の遅れで電力の8割以上を火力発電に依存する中、産業界の声を受けて「我が国の電気料金は国際水準に照らして高く、国際競争力が劣後する懸念が高まっている」と指摘。「再稼働による低廉な電気料金水準の実現が期待される」との記述を盛り込んだ。 
 
 原発の使用済み燃料から取り出すプルトニウムについては「保有量の削減に取り組む」と明記。政府は「利用目的のないプルトニウムは持たない」との姿勢を国内外に示してきたが、世耕弘成経済産業相は3日の閣議後記者会見で「削減に取り組むという趣旨をより明確にした」と述べた。日本が国内外にプルトニウム約47トンを保有することに、核不拡散の観点から米国など海外には懸念の声もあることに配慮した。 
 
 日本が強みを持つ石炭火力発電は、高効率化・次世代化を進めつつ輸出も積極的に推進するとした。ただ世界的には石炭火力に逆風が吹いており、「石炭を選ばざるを得ない国に限り、要請があった場合は経済協力開発機構(OECD)ルールも踏まえ世界最新鋭の設備の導入を支援する」と慎重姿勢もみせた。 
 
 再生エネは「日本のエネルギー供給の一翼を担う長期安定的な主力電源として持続可能なものにする」として、発電コストの低減や固定価格買い取り制度(FIT)からの自立を早期に達成する方針を明示した。【和田憲二】