東電は福島第一原発と第二原発の全10基を廃炉にすることを決めました。廃炉になれば当然立地自治体に対する交付金はなくなります。問題はその金額ですが、富岡町では原発事故前の予算の約30%を交付金が占めていたのでその影響は甚大です。
緩和措置として、段階的に減らされるものの10年間別の交付金があるということで、30年間掛かるとされる廃炉作業自体も一種の救済事業になりそうです。
いずれにしても立地自治体(の形)をそういう風に歪めたのは原発行政なので、廃炉後もその自治体が以前のように自立できるための必要にして十分な援助をする責任が国にはあります。まして交付金の使途を限定して強制的に作らせたハコモノの維持に自治体が苦しむようなことはあってはなりません。
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原発依存脱却、地元に難題 福島第2原発の廃炉表明
産経新聞 2018年7月14日
東京電力が福島第2原発(福島県富岡町、楢葉町)の全4基を廃炉とする方針を表明した。福島第1原発事故で一時全域避難を強いられ、今も復興途上の立地2町は歓迎の声を上げる。一方で第2原発のもたらす交付金や雇用が、町の財政や地域経済を支えてきたのも事実。今後、原発マネーに頼らない町の将来像を描けるのか、不安も広がっている。
帰還の足かせ
「住民にとって一つの安心材料になる」。富岡町の宮本皓一町長は、東電の小早川智明社長から初めて廃炉方針の説明を受けた6月28日、ほっとした様子で語った。2町をはじめとする地元は、第2原発の廃炉を繰り返し東電に求めてきた。原発の存在が住民の帰還を鈍らせ、復興の足かせになっているとの思いがあるからだ。昨年の住民調査では、帰還していない住民のうち富岡町で約4割、楢葉町で約3割が「原発の安全性」を理由に挙げている。
実際の居住人口は楢葉町で住民登録数の約48%、今も帰還困難区域が残る富岡町は約5%にとどまる。小早川氏も宮本氏と面会した際、廃炉の方針に踏み切った理由として帰還状況を考慮したと認めた。
「廃炉は年々ボディーブローのように効いてくる」。富岡町関係者はため息交じりにつぶやく。原発事故前は年間予算約70億円のうち、国からの交付金など第2原発関連の歳入は約20億円も占めていた。作業員らの町民税なども含めれば影響はさらに大きい。
県の統計によると、2016年度までに2種類の交付金だけで少なくとも富岡町に約144億円、楢葉町に約109億円が支給された。現在、主に受け取っている交付金は廃炉が決まった次年度からゼロとなる。緩和措置としての別の交付金も10年間で段階的に減らされる。復興関連の交付金もいつまで続くか見通せない中で、楢葉町の担当者は「原発がないと税収が賄えるか分からない」と嘆いた。
税収・雇用の担い手
「将来、町で若者が働く場所があるのか」。東電から第2原発の廃炉方針が公表されると、2町では心配の声が相次いだ。ある町関係者は「これが本音なんだよ。原発が地域経済を回してきたんだ」とこぼした。
廃炉には約30年かかるため、当面の間は一定の雇用が見込めるが、問題はその後だ。
2町とも第2原発に代わる産業創出に取り組む姿勢で、国や東電に支援を求めている。しかし、長年続けてきた原発との共存から抜本的に抜け出すのは簡単ではない。楢葉町の松本幸英町長は苦しい胸の内を吐露した。「原子力は巨大産業だ。一つの町が原発に代わる新たな産業を示すのは難しい」