2018年6月1日金曜日

東電経営陣強制起訴 第13回公判 都司証言詳報

福島県沖を含む三陸沖から房総沖にかけて30年以内に20%の確率で巨大地震が発生するという長期評価について、被告側の東電元会長ら3人は「長期評価には専門家の間で異論があり、津波は予測できなかった」と主張しています
 30日に開かれた第13回公判で、歴史地震研究の第一人者である都司嘉宣・元東大准教授は、三陸沖から房総沖にかけての領域では巨大津波を伴う地震が過去400年間に3回起きていた」ことを古い文献調査に基づいて、当時の地震調査の部会で詳しく説明すると、当初長期評価に疑問を抱いていた専門家たちも全員が同意したと証言しました
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福島第一原発事故の裁判 地震の可能性「ほかの専門家も同意」
NHK NEWS WEB 2018年5月30日
福島第一原発の事故をめぐり、東京電力の旧経営陣3人が強制的に起訴された裁判で、古い文献を調べている学者が、東日本の沖合では過去に繰り返し津波を伴う地震が起きていたと説明しました。国の機関は、この学者の見解などをもとに、事故の9年前に福島県沖でも地震が起きる可能性を示していて、学者は、ほかの専門家も同意していたと証言しました。
 
東京電力の元会長の勝俣恒久被告(78)、元副社長の武黒一郎被告(72)、元副社長の武藤栄被告(67)の3人は、原発事故をめぐって業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴されています。
30日、東京地方裁判所では、平成14年に政府の地震調査研究推進本部が公表した長期評価の取りまとめに関わった地震学者の都司嘉宣氏が証言しました。
長期評価は、福島県沖を含む三陸沖から房総沖にかけて30年以内に20%の確率で巨大地震が発生するという内容でしたが、被告側の元会長ら3人は「長期評価には専門家の間で異論があり、津波は予測できなかった」と主張しています。
 
30日の法廷で、都司氏は、過去に起きた地震の回数が長期評価の根拠になっていると説明し、古い文献を調べた結果、三陸沖から房総沖にかけての領域では、巨大津波を伴う地震が過去400年間に3回起きていたことを明らかにし、と証言しました。
その見解について、地震調査研究推進本部の部会では、ほかの専門家から疑問を投げかけられたものの、文献の内容などを詳しく説明すると全員が同意したと証言しました。
都司氏は、次回、来月1日も証言する予定です。
 
“福島沖津波”根拠は歴史地震
30日の裁判で注目されたのは、平成14年に三陸沖から房総沖のどこでも巨大な津波を伴う地震が起きるとする長期評価の取りまとめに当たって根拠となった、古い時代に起きたとされる津波です。
30日に証言に立った元東京大学地震研究所准教授の都司嘉宣氏は、歴史地震研究の第一人者で、政府の地震調査研究推進本部で長期評価の取りまとめに関わりました。
都司氏によりますと、歴史地震とは、近代的な観測が始まった明治時代より前に起きた地震や津波で、古い文献などに記されている記録をもとに震源や規模を推測します。
長期評価では、福島県沖を含む三陸沖から房総沖にかけての領域で30年以内に20%の確率でマグニチュード8クラスの巨大な地震が発生するとされましたが、その根拠となったのは、歴史地震の研究から、この領域で400年の間に3回の巨大な津波を伴う地震が起きていたとされたことでした。
しかし、長期評価を取りまとめる専門家の部会で、実際にそうした地震があったのか異論が出されていたと、今回の裁判で指摘されています。
 
30日の裁判で、都司氏は、部会の中で歴史地震の研究者は自分だけだったと述べたうえで、3回の津波のうち、1611年に三陸沿岸を襲った津波については発生場所が議論になったものの、岩手県に残された文献で、大きな音がした30分後に津波が来たとされていることなどから、三陸沖で起きた地震による津波だったと説明し、理解を得たと証言しました。
また、1677年に房総半島の沿岸を襲った津波についても、ほかの専門家から、陸に近い領域で起きた規模が小さい地震によるものではないかという指摘が出されたということですが、都司氏は、今の仙台市の近くまで被害が及んでいたという記録が残されていて、規模の小さい地震では説明がつかないと説明した結果、ほかの委員から異論は出なかったと証言しました。
 
その結果、平成14年の長期評価の取りまとめで、三陸沖から房総沖にかけての領域では、1896年の明治三陸津波を含め、合わせて3回の巨大津波を伴う地震があったと結論づけられたと証言し、その信頼性に問題はないとの考えを示しました。