2018年6月26日火曜日

電力会社は自力で廃炉することがが出来ない

 東電が福島第2原発(全4基)の廃炉を決めたことで、福島第一原発(全6基)と合わせると合計10基を廃炉にすることになります。それとは別に現在廃炉が決定しているのが10基あるので、今後合計20基を廃炉にします。
 事故を起こした福島第1原発の1~3号機の廃炉には21兆円超が掛かるといわれていますが、デブリについては取り出し方法も未定なので、その額で収まる保証は何もありません。撤去が完了するまでには100年以上が掛かるという見方もあります(英国筋)。
 事故を起こしていない原発の廃炉にはそれほどの時間や費用は掛かりません、東海原発は完了までに23年、浜岡原発1・2号機は27年掛かると見込まれていますが、それも実際にやってみないことには分かりません。しかも使用済み核燃料の始末の費用はみていない筈です。
 東電の場合、10基を廃炉にするのでは会社は会計法上も成り立たず、倒産するしかありません。コスト的に見ても廃炉の大半の費用は結局電気料に加算するしかないので電気料金が大幅にアップします。
 
 そこで国による廃炉(廃炉庁の新設)がいわれ出すのですが、真相を隠したままなし崩しにそんなことに移行すること出来ません。原発が如何に高コストであるかを政府も電力会社も認めた上で、国の費用で廃炉することを国民に納得してもらうことが不可欠でしょう。
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福島第2原発も廃炉に…ニッポンにはいま、「廃炉庁」が必要だ
国が責任を負う以外、道はない
磯山友幸 現代ビジネス 2018年6月25日
東電、福島第2も廃炉表明
東京電力ホールディングスは福島第2原子力発電所(福島県楢葉町、富岡町)の原子炉4基を廃炉にする方針を表明した。
6月14日に同社の小早川智明社長が福島県庁で内堀雅雄知事と面会した際、知事が第2原発の廃炉を求めたのに対して、「4基全て廃炉の方向で検討に入っていきたい」と述べたという。
東電は事故を起こした福島第1原発の廃炉作業を進めてきたが、第2原発について「廃炉」を明言したのは初めてのことだ。
 
福島第1原発事故後、第2原発は運転を停止してきた。この日の面会で小早川社長は「根強い風評、帰還が進まない況を踏まえると、(第2原発の)あいまいな状況自体が足かせになっている」と述べたそうだ。
内堀知事は面会後の記者会見で、「多くの県民が県内の原発全基を廃炉にしてほしいと訴えてきた。今日、明確な意思表示をされたことを重く受け止めている」と話した。
知事は「重要なスタートだ」と評価したが、大手新聞などメディアは事故後7年たっての決断に「遅すぎる」と批判した。
県民感情を考えれば当然の批判とも言えるが、東電には第2原発の廃炉を明言できなかった事情がある。
 
廃炉には膨大なコストがかかる
第2原発の廃炉方針を示せば、原発設備の損失処理などが必要になり、その負担が一気に東電にのしかかることになる。
そうでなくても第1原発の廃炉と賠償には少なくとも21兆円の費用がかかるとされており、しかも、本当にその金額で収まるのかさえ見通しがたっていない。
結局は電気料金を通じて利用者や国民にツケが回るのだが、東京電力という民間会社の責任で事故処理と廃炉を行わせようとする事にもはや無理があるのだ。
原発を新設して稼働させたのは原子炉ごとにステップ・バイ・ステップだったわけだが、東電は福島第1の6基に加えて、福島第2の4基の合計10基を同時に廃炉させる事になる。
時間差なしにいっぺんに10基の廃炉費用が通常の決算にのしかかる事になれば、通常の電力会社では経営が成り立たない
 
東京電力の組織のあり方が問われていた2013年ごろには、自民党内から「廃炉庁」を設置すべきだという声が挙がった。
廃炉庁はもともと英国にある組織にヒントを得たもので、政府(廃炉庁)が責任を負って廃炉を進めるものの、廃炉作業自体は民間に事業委託する形で行う。
英国流のやり方を参考に日本独自の廃炉庁を設置すべきだというアイデアが持ち上がったのだが、その後は雲散霧消したままだ。
国が廃炉に責任を持つ姿勢を明確にせず、東電任せにしたために、福島第2原発の廃炉表明に7年もかかったと見ることもできる。
いや東電として廃炉方針を表明したからといって、実際に廃炉までの道筋が決まったわけではない。その膨大な費用をどうするのか、最終的に電力料金にすべての費用を上乗せしようとすれば、電気料金は益々上昇することになる。
原油価格の上昇によるコストの増加で、電力各社は値上げを余儀なくされているが、そんなものでは済まない可能性が出てくる。
 
どうやって必要な人材を確保するか
ここに廃炉を電力会社任せにした場合の矛盾点がある。廃炉費用がかさめば業績の悪化は避けられず、そのしわ寄せは社員の待遇などに向かう。そうなると優秀な人材を集めることが難しくなるのだ。
そうでなくても「廃炉」という後ろ向きの業務に従事する場合、社員のモチベーションを維持できるかという問題がある。
2015年に会計不正が発覚した東芝の場合、粉飾決算の修正に伴う巨額の赤字だけでなく、米国の原子力子会社ウエスチングハウスの巨額損失で、東芝本体は事実上解体されている。
国内原子力事業はまだ東芝に残っているが、福島第1原発の廃炉などに携わってきた多くの技術者が会社を去り、転職していった
 
「廃炉」を任せる優秀な人材を確保するには、技術者に将来に対する不安を抱かない「安定」が不可欠だ。
国が廃炉の方針を明確にし、国(廃炉庁)主導で廃炉を進めていく事になれば、民間企業にとっては長期にわたる作業の受注機会が生まれる。リスクを負わずに仕事があり続けるという状態になるのだ。
廃炉には通常でも長期の時間がかかる。
1998年3月に稼働を終えた東海発電所は解体作業がまだ続いており、完全な解体撤去までには23年を要し、2021年ごろになるとされている。2009年に廃炉になった中部電力の浜岡原発1、2号機の解体終了は2036年度になるとされている。
さらに、事故を起こした福島第1原発の廃炉にはさらに長期にわたる時間がかかるとみられている。
 
そんな中で、廃炉の決定が相次いでいる。
原発の稼働は原則として40年までと決まっている。60年まで延長する特例もあるが、稼働から40年を経た老朽原発が次々と廃炉決定されているのだ。
2015年には関西電力美浜原発1、2号機、同敦賀原発1号機、中国電力島根原発1号機、九州電力玄海原発1号機の廃炉が決まった。また2016年には四国電力伊方原発1号機が、2018年5月には2号機も廃炉が決まった。
これに福島の10基を加えると、全国で20基の廃炉が進んでいることになる。まさに日本は「廃炉大国」なのだ。
今後もさらに廃炉になる原子炉は増えていく。そんな中で人材を確保していくには、もはや国が廃炉に最終責任を負う体制が不可欠だ。もう一度「廃炉庁」を検討してみるべき時だろう。