2018年6月22日金曜日

原発再稼働のために無理なメガソーラー計画を推進の倒錯

 ジャーナリストの高野孟氏によれば、政府(経産省)が進めているエネルギー基本計画の見直しで、2030年までに原発の比率を当初のとおり20~22%とすることを確認していますが、それは原発を合計30基再稼働させることを意味します。それではあまりにも露骨なので、それと並んで再生可能エネを“主力電源”と位置づけ、原発と同様に電源構成全体の20%ほどを担わせることで、『再生エネもちゃんとやっている』というポーズを取ろうとしているのだということです。
 
 いずれにせよ再生エネが大々的に増加すること自体は喜ばしいのですが、手つかずだった山林を切り開き、そこに大々的にメガソーラーを建設するというのでは、環境破壊や治水の問題が発生する惧れがあります。
 
 高野孟氏の、シリーズ「永田町の裏を読む」を紹介します。
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 高野孟の「永田町の裏を読む 
原発再稼働のために無理なメガソーラー計画を推進の倒錯
高野孟 日刊ゲンダイ 2018年6月21日
 突然、永田町からかけ離れた田舎町の話で恐縮だが、私が居住する千葉県南房総の鴨川市で、手つかずの山林300町歩(東京ドーム64個分!)を切り開き、50万枚もの太陽光パネルを敷き詰めて「メガソーラー」を建設するという、とてつもない計画が持ち上がっている。出力は130メガワット13万キロワット)で、完成すれば全国でも5本の指に入る巨大太陽光発電所となる。
 
 太陽光発電といえば、再生可能な自然エネルギーで、環境にやさしいというのが通り相場。なのに自然のままの山林を開いて木を切り倒し、峰を削り、谷を埋め、川を殺して、とことん環境を破壊した上に「メガソーラー」を造るなどという話があり得るのだろうか。知人のエネルギー専門家に聞くと、彼は言う。
「太陽光発電の技術は本来、各戸の屋根に設置してエネルギーの自給自足を目指したり、小地域で共同で地産地消を図ったりして、できれば電力供給網から離脱(オフグリッド)してエネ自立を実現するのにふさわしい技術。ところが2011年に再生可能エネルギー買取法が成立して、当初は普及促進のために買い取り価格を高く設定したので、他業種から資本力のある大手企業が参入して大規模なものを造って効率的に儲けようとするようになった。しかしその場合も、例えばソフトバンクの北海道苫東のように、使われていなかった工業用地とか、海外だと砂漠とかの活用策として考えられるのが普通で、鴨川のようにわざわざ山林とその生態系を破壊し尽くしてメガソーラーを造るなどというバカげた計画は、国内はもちろん、世界でも聞いたことがない」と。
 
 そこで、エネルギー政策に明るい野党議員に聞いてみると、「実は今あちこちで、造成工事の途中から早くも地崩れが始まったとか、メガソーラーの弊害が問題になりつつある」という。しかも、これからますます、そういう事例が増えるだろうと予測し、こう話した。
「なぜなら、経産省が進めているエネルギー基本計画の見直しでは、2030年までに原発を今からさらに22基も再稼働させて30基の運転を確保することになっていて、それではあんまり露骨なので、それと並んで再生可能エネを“主力電源”と位置づけ、原発と同様に電源構成全体の2割ほどを担わせる。つまり、原発を生き残らせるために『再生エネもちゃんとやっている』というポーズを取っている
 
 そのため、無理なメガソーラー計画も政府が後押しするのではないか。自然エネだからといって油断は禁物である。 
 
 高野孟 ジャーナリスト
 1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。