佐賀県は、玄海原発で重大事故が起きた場合、原発から5キロ圏(PAZ)の住民約8千人全員が自家用車で30キロ圏外へ避難を終えるのに「最長29時間半」かかり、迂回路の導入などで「時間は約半分」になるとの推計結果を明らかにしました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「5キロ圏」避難に29時間半 玄海原発事故で佐賀県推計
道損傷は想定せず
西日本新聞 2018年06月22日
県は、玄海原発(玄海町)で重大事故が起きた場合、原発から5キロ圏(PAZ)の住民約8千人全員が自家用車で30キロ圏外へ避難を終えるのに「最長29時間半かかる」との推計結果を明らかにした。迂回(うかい)路の導入などで「時間は約半分になる」とするが、誘導員の確保や地震による道路の被害などは想定に含んでいないという。21日の県議会で県側が説明した。
国の指針では、原発が冷却機能を失う「全面緊急事態」に陥った場合、PAZの住民は全員避難し、5~30キロ圏(UPZ)の県民約17万9千人は屋内退避することになっている。しかし実際は、UPZの住民も避難すると予想され、大渋滞の発生による避難の遅れが懸念されている。
推計では、PAZもUPZも自家用車(1台当たり2・5人乗車)での避難を想定。最も混雑が予想されるUPZも一斉に避難した場合、現行の避難路ではPAZの住民の最後の1人が30キロ圏を脱するのに「29時間半かかる」とした。
一方、渋滞が予想される唐津市の二つの交差点(竹木場、山本跨線橋(こせんきょう))を避ける迂回路を定め、玄海町と唐津、伊万里両市の13カ所の信号機を止めて警察官が交通誘導すれば「15時間20分に短縮される」という。UPZの避難も現行の避難路では「39時間かかる」と想定。迂回路を設定したり、信号機を唐津、伊万里両市でさらに9カ所止めて交通誘導をしたりすれば「18時間10分に短縮される」と推計した。
ただ、誘導する警察官や手動で信号機を止める人員の確保、道路の被害、避難者や車の被ばく検査(スクリーニング)にかかる時間、車両のガソリン切れや故障といった事態は想定しておらず、さらに時間がかかる恐れがある。
県担当幹部は総務常任委員会で「今回の結果等を踏まえ、市町や警察と連携を図りながら避難計画の充実に取り組んでいきたい」とした。
玄海原発で重大事故が起きた場合の避難時間の推計結果
| ||||
原発からの距離に応じた住民の区分
|
現行の避難路
|
迂回路や信号規制を導入した場合
|
時短効果
| |
5キロ圏内(PAZ、 約8000人)
|
29時間30分
|
15時間20分
|
14時間10分
| |
5~30キロ圏内(UPZ
約17万9000人)
|
39時間
|
18時間10分
|
20時間50分
| |
※ PAZもUPZも30キロ圏外への避難を終える時間
※ PAZの避難は、UPZの住民が屋内退避せず、一斉に避難した場合を想定