2018年6月10日日曜日

日立電力事業を風力発電にシフト 英の原発は経済合理性を優先

 日立は、発電設備事業において、風力発電設備を中心とする再生可能エネルギー事業の売上高を今後4年で5倍に増やす目標を明らかにしました。2017年度の753億円から、21年度に4千億円に増やす計画です
 原子力に逆風が吹くなかようやく世界の趨勢に歩調を合わせるべく方向転換しました
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日立、英原発は「経済合理性優先」 事業は風力シフト  
 日経新聞 2018年6月8日
エレクトロニクス ヨーロッパ
 日立製作所の東原敏昭社長兼最高経営責任者(CEO)は8日、英国で進める原子力発電所の新設計画について「推進していく」と述べ、事業継続への意欲を示した。ただ電力の買い取り価格確定など英政府との本格交渉はこれからで「経済合理性を最優先に臨む」と慎重姿勢も崩さなかった
 
 東原社長は8日に東京都内で開いた投資家向け広報(IR)イベントの冒頭で語った。英国政府と事業継続の覚書を交わして以来、公式の場で発言するのは初めて。その後、原子力部門トップの武原秀俊執行役常務が英原発事業の状況を説明した。
 英政府は総額2兆3千億円を投融資する支援策を提示。英政府による直接融資などで金利負担を軽減できれば、事業運営の経費を抑えられる。このため武原氏は焦点である電力買い取り価格の水準で「日立が要求する投資リターンと、英国が望む水準を両立できる可能性がある」とした。
 今後の事業継続に向け、英政府との間で守秘義務契約を結んだことも明らかにした。武原氏は「当事者同士で率直に意見を言い合えるようになった。最終合意に向けて細かな詰めに入る」と述べた。英原発事業に3割を出資する予定の日本政府・企業連合を巡り、参加企業がまだ決まっていないことについては明言を避けた。
 
 一方、IR説明会では発電設備などの電力部門について、風力発電設備を中心とする再生可能エネルギー事業の売上高を今後4年で5倍に増やす目標を明らかにした。2017年度の753億円から、21年度に4千億円に増やす。原子力、火力に逆風が吹くなか、風力に成長をかける。
 日立は21年度に電力部門全体の売上高を現在の約4500億円から8千億円超に引き上げる目標を掲げる。再生エネはそのおよそ半分を占めることになり、大半を占める見通しの風力は一躍、主軸事業になる。小田篤執行役常務は「風力発電で世界のメジャー企業と肩を並べる」と話した。
 日立の風力発電の国内シェアは40%超で、納入した発電設備は180基を超える。アジアなど海外展開に取り組んでおり、4月には台湾で海外初の洋上風力発電設備の受注に成功した。
 
 4年間で5倍という目標は高い。小田氏は「風力で規模や技術で競合に追いつくため、M&A(合併・買収)を検討する」と話し、他社買収を事業拡大のテコにすると説明した。
 同社はこれまで、風力発電を電力部門の主軸とするとは公表していなかった。8日のイベントでは、出席したアナリストから「風力の話が急に出てきたが、何がきっかけでこうなったのか」との質問も飛んだ。
 背景には主力だった原子力、火力発電を取り巻く厳しい環境がある。日立はすでに火力発電設備の事業を三菱重工業と統合し連結子会社から切り離しているが、三菱重工との間で、南アフリカのプロジェクトを巡る訴訟を抱えている。
 
 原子力部門は21年度の売上高を17年度比で33%伸ばし、2500億円とする目標を掲げた。一見、大きく伸びるようだが、増収は英国で手がける原発新設計画向けに原子炉などの設備の売り上げが立つから。これに続く原発の新設案件は現時点でみえておらず、影響は一時的にとどまる。
 
 世界的に「エネルギーミックス(電源構成)」が再生エネにシフトするなか、日立としてもこの分野に力を入れざるを得ない。だが、すでに欧州など海外では再エネの売電価格は低下しており、設備を巡る競争も激しい。米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスなど世界大手に挑むことになる