原子力規制委は、日本原電東海第2原発の再稼働に関する審査で、合格証に当たる「審査書案」を7月に決定する見通しであることをあきらかにしました。
同原発は1978年11月28日に運転を開始したので、まず40年の期限である11月28日までに再稼働審査を含む三つの審査をクリアする必要があります。
規制委が迅速に再稼働を認めたのはそうした配慮からですが、実際に再稼働に必要な地元と周辺地町村の事前同意が得られるかは見通せていません。
共同通信の記事と、議論は生煮えとする東京新聞の記事を紹介します。
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東海第2原発、来月「合格」へ 規制委の再稼働審査
共同通信 2018年6月27日
原子力規制委員会が、日本原子力発電東海第2原発(茨城県)の再稼働に関する審査で、合格証に当たる「審査書案」を7月に決定する見通しであることが27日、分かった。原電が目指す再稼働と最長20年の運転延長には、運転期限の11月までに再稼働審査を含む三つの審査をクリアする必要があり、第1段階で事実上の合格となれば、事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型炉としては東電柏崎刈羽6、7号機(新潟県)に次いで2例目。
ただ、実際の再稼働に必要な地元の事前同意が得られるかは見通せていない。
【茨城】
原子力規制委が東海第二の新基準審査を公表予定 事故対策費、議論生煮え
東京新聞 2018年6月27日
東海村の日本原子力発電(原電)東海第二原発を巡り、原子力規制委員会は近く、新規制基準への「適合」を意味する審査書案を公表するとみられる。ただ、事故対策工事費の調達のため、東京電力が原電に資金支援することに、委員から疑問の声が出たのに、その後は議論がない。議論が生煮えのまま、新基準の審査を終えようとしている。(越田普之)
■限界ある
「国の支援を受けて経営再建中の東電が、他社を支援していいのか。(東電として)社会に十分に説明し切れていない印象がある」
五月三十日に開かれた規制委の会合で、伴信彦委員が、東電による支援を問題視した。会合は、福島第一原発事故を起こした東電の小早川智明社長を招き、事故収束作業や原電への支援について聞く場だった。
小早川社長は「競争力のある電源を調達して収益を上げ、結果として福島の責任を全うする」と答えた。だが、伴委員からはさらなる追及はなかった。
原電支援を巡る議論は、このやりとりで終わりなのか。更田豊志委員長は六日の会見で「場合によって委員会で議論することはあり得る」と強調。一方で「私たちの権限で問える部分に限界がある」と述べた。
■鶏と卵
また、東電は資金支援の条件を「東海第二からの受電を確認できること」と説明する。送電のために対策工事が必要なのに、受電の確認を先にするというのは理解しにくい。仮に対策工事をしても、地元の反対などで再稼働できず、東電に送電できるか分からない。
更田委員長は「鶏が先か卵が先かというのは頭に浮かんだが、実際に(東電が)投資するかどうかを確認しないと許可しない、ということにはなっていない」と話し、議論は不確かなまま終わりそうだ。
脱原発団体「さよなら原発いばらきネットワーク」メンバーの川澄敏雄さんは「規制委としては、対策工事費を誰が出すかは問題ではないのだろう」と、消化不良の議論に憤る。東電に対しても「同じ被災原発で使用年数も短い福島第二を廃炉にするのに、東海第二の再稼働を支援するのはどういうことなのか」と理解に苦しむ。
■ヤマ越えた
新基準の審査を巡っては、原電は昨年十一月に最終段階の書類に当たる補正書類を提出したが、その後、論点が浮上し審査を継続。五月に、これまでの指摘を反映した補正書類を提出し記載漏れや誤記などが多数あったため、二十一日に修正して出し直した。これらを踏まえ、近く審査書案が公表される見通しとなっている。
規制委は審査書案公表の最終条件として、新基準と並行する設備の詳細を定めた工事計画の審査にめどがつくこととしていた。
審査に当たってきた山中伸介委員は二十一日、工事計画に関する試験を視察。「工事計画でも大きなヤマの一つを越えた」と述べ、審査書案公表の環境が整ったとする考えを示した。