2016年5月25日水曜日

25- もんじゅ 再稼働前提で受け皿を選定と 文科相

 問題山積のもんじゅについて、文科省は「日本独自の研究開発の場を持つべきだ」との考えのもとに、再稼働を前提に新しい運営主体を選定することを明らかにしました。
 
 もんじゅを含めた日本の核燃料の再処理事業ほど原理的に不可解なものはありません。
 核燃料の再処理そこで抽出したプルトニウムを高速増殖炉もんじゅで使うのですが、もんじゅは燃料として消費する以上のプルトニウムを、発電しながら生み出す高速増殖炉なので、プルトニウムの消費先という位置づけ自体が間違っているからです。
 
 それらは単に無用なだけでなく、もんじゅは一旦爆発や燃焼事故が起きればもはや手の付けようがなく、結果的にプルトニウムは全量が外部に放出されます。再処理工場は定常的に近海を放射能で強烈に汚染します。
 
 従って再処理工場は中止し、もんじゅは廃炉にすることが唯一の正しい選択です。
 日経新聞の記事と愛媛新聞、南日本新聞の社説を紹介します。
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もんじゅ 再稼働前提で受け皿選定 文科相表明 
日経新聞 2016年5月24日
 馳浩文部科学相は24日の閣議後の記者会見で、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県)について、再稼働を前提に新しい運営主体を選定する考えを明らかにした。再稼働に必要な耐震化などの費用を算定し、将来のエネルギー確保に向けた効果を見極めたうえで、再稼働に向け政府内の調整を進める。
 
 馳文科相は会見で、政府が2014年に閣議決定したエネルギー基本計画でもんじゅの重要性は位置づけられていると強調。これまでも「廃炉はない」と明言していたが、文科省として再稼働を目指す考えを明確にした。
 高速増殖炉の実用化研究を担う経産省には、海外との共同研究で技術は開発でき、もんじゅは不要とする意見もある。だが文科省内では「日本独自の研究開発の場を持つべきだ」(同幹部)との考えが強く、立場を明確にした。
 もんじゅは昨年11月、原子力規制委員会から廃炉も視野に入れた厳しい勧告を受けた。文科省は有識者会合を設けて対応策を検討してきたが、今週金曜日に存続に向けた報告書がまとまる見通しだ。報告書を受けて文科省は関係機関と調整し、新たな運営主体を具体的に決める作業に入る。
 
 
(社説)核燃料サイクル 展望なき政策の抜本的見直しを 
愛媛新聞 2016年05月24日
 原発から出る使用済み核燃料の再処理事業の枠組みを変更する「再処理等拠出金法」が成立した。政府の関与を強めて事業継続を図るのが目的で、核燃料サイクル政策を「延命」させるための法といえよう。 
 核燃サイクルは要となる再処理工場の完成が遅れ、再処理して抽出したプルトニウムを使うはずの高速増殖炉もんじゅも、相次ぐトラブルで運転実績はないに等しい。消費のめどが立たないプルトニウムを蓄積するばかりで、政策は事実上破綻状態にある。にもかかわらず政府は事業継続のため巨費を投じ続ける。問題の先送りは許されず、政策を抜本的に見直すべきだ。 
 これまで再処理事業は、大手電力会社が出資する日本原燃が担い、各社からの任意の積立金で費用を賄ってきた。新法では新しい事業主体として国が監督権限を持つ認可法人を設置し、日本原燃に業務を委託する。電力会社には再処理費用を認可法人に支払うことを義務付ける。 
 政府が新法を必要とした背景には、電力小売りの全面自由化がある。競争激化で経営が悪化した電力会社が、再処理事業から撤退するのを防ぐ狙いが透ける。こうしたケースを想定して枠組みを変えること自体、事業の採算性に問題がある証左だと言わざるを得ない。 
 再処理工場は、事故などによる再三の工事延期で建設費は当初予定の約3倍の2兆2千億円に膨らみ、安全面への不安も募る。もんじゅには、これまで約1兆円の国費を投じ、運転していなくても維持費には毎年200億円もかかる。一方で、施設の老朽化も進んでいる。 
 
 もんじゅを巡っては、原子力規制委員会が昨秋、「安全運転の資質がない」として運営主体を日本原子力研究開発機構から変更するよう勧告。しかし新たな運営主体を検討していた文部科学省の有識者会議が先週まとめた報告書原案には、具体名はなかった。特殊な炉のもんじゅは運転が極めて難しく、技術的に可能な組織は事実上、機構以外にはない。受け皿探しを有識者に丸投げしても結論が出ないのは当然だろう。この際、見切りをつけて廃炉にするべきだ。 
 
 日本は、核兵器に転用可能なプルトニウムを48トン保有。核不拡散の観点から国際的な批判が高まる。米政府高官は「日本が再処理を継続すれば他国の追随を止められない」との見解を示しており、日本政府は重く受け止めねばなるまい。近年は韓国が再処理の権利を主張し、中国は実施を表明している。日本の核燃サイクルが、核不拡散体制のあしき先例になるとの懸念は拭えない。 
 政府が核燃サイクルに固執するのは、使用済み核燃料の処分に困っているからだ。再処理せず埋設する直接処分などへの転換を真剣に検討する必要があろう核燃サイクルから速やかに撤退するとともに、新たな核のごみを生み続ける原発と決別しなければならない。
 
 
[もんじゅ検討会] 廃炉を議論するときだ
南日本新聞 2016年5月24日
 高速増殖炉もんじゅ(福井県)の新たな運営主体を巡り、文部科学省の有識者検討会が報告書をまとめた。
 もんじゅ存続を前提に、外部専門家が参加する経営協議体の設置など運営主体が備えるべき要件を盛り込んだ。
 しかし、運営主体となる具体的な受け皿を示しておらず、事実上の結論先送りである。問題を本気で解決しようとする政府の意気込みが感じられない。
 もんじゅは老朽化しており、費用の面からも廃止するのが妥当ではないか。廃炉へ向けた議論を始めるときだ。
 もんじゅは燃料として消費する以上のプルトニウムを、発電しながら生み出すことから高速増殖炉と呼ばれる。
 開発第2段階の原型炉であり、1994年に初臨界に達した。だが、95年のナトリウム漏れ事故などトラブルが続き、これまで1兆円超の国費が投入されながら運転実績はほとんどない。
 原子力規制委員会は昨年11月、現在の運営主体である日本原子力研究開発機構に代わる受け皿を示すよう馳浩文科相に勧告した。
 保守管理上の不備を繰り返し、改善の兆しが見えないため「運転を安全に行う必要な資質を有していない」と指摘したのである。
 新運営主体の選定が困難な場合は、廃炉も含んでの見直しを求める「最後通告」だったはずだ。にもかかわらず、検討会がもんじゅ存続を前提にしたのは解せない。
 
 それから既に回答期限の半年が過ぎた。昨年末以降、検討会の会合は計8回開かれた。
 停止中のもんじゅが稼働までにかかる経費や期間には触れず、再稼働の展望がないまま多大な国費を投入し続ける政策の是非を正面から問うことはなかった。
 文科省は今後、報告書を参考に関係省庁と協議し、夏までをめどに運営主体を特定して規制委に回答する方針だ。
 だが、電力業界も、特殊な炉であるもんじゅに関わることには難色を示している。選定が難航するのは必至だ。
 結論の先送りは参院選への影響を回避するためとの見方もある。だとすれば、文科省の危機感の乏しさは批判されても仕方ない。むしろ参院選の争点にすべきだ。
 もんじゅについて、政府は放射性廃棄物を減らす研究への転用も探っているとされるが、小手先の対応による解決は許されない
 規制委は文科省の遅い対応を静観しているようだが、再勧告も辞さない毅然(きぜん)とした態度を示すことが求められる。