浜岡原発はいつ起きても不思議ではない東海地震の予想震源域の真上に立っています。
その浜岡原発は、東京高裁で07年10月から続く運転差し止め訴訟、11年5月、静岡地裁浜松支部に提訴した永久停止(廃炉)を求めた訴訟、静岡地裁で11年7月から続く運転終了・廃止等請求訴訟の3つが争われていますが、いずれの訴訟でも関係者は「まだ5合目」と口をそろえ、長期化の様相を見せているということです。
裁判が長引いている理由の一つは「一般論として裁判官が原発訴訟の判決を書きたがらない」ことで、もう一つは「国が中部電力に要請し停止させた経緯があり、裁判所がより慎重になっている」からと言われています。「裁判所は国が進める新規制基準への適合性確認審査に歩調を合わせようとしているのでは」ないかという見方もあります。
なお、規制委が了承した全長2・4キロ、海抜22mの防潮壁は3月31日に完成しましたが、効果については全く不明です。仮に強度的に持ったとしても壁の切れ目の両端から津波が押し寄せて最終的に水没するのは明らかです。
また活断層の上の原発は認められないのに、震源域の真上にある原発が許されるという理屈もあり得ません。
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浜岡原発3訴訟 長期化「まだ5合目」 関心の低下危惧
静岡新聞 2016年4月30日
東京高裁、静岡地裁、静岡地裁浜松支部で審理が続く中部電力浜岡原発の廃炉などを求めた訴訟が長期化の様相を見せている。いずれの訴訟でも関係者は「まだ5合目」と口をそろえる。2011年5月14日に全炉停止してから間もなく5年。“漂流”という言葉もささやかれ始めた。数百人以上に膨らんだ原告の関心の低下を危惧する声もある。
「裁判所は国が進める新規制基準への適合性確認審査に歩調を合わせようとしているのでは」―
東京高裁で07年10月から続く運転差し止め訴訟。原告代理人の河合弘之弁護士はいぶかる。「浜ネット」の鈴木卓馬代表も同様だ。原告団の一人として非公開で行われた計56回の進行協議にも毎回出席してきた鈴木代表は「だとすれば、判決までにあと数年かかる可能性もある」と話す。
「3・11」後、全国で原発を止めるための裁判が次々に起きた。
14年5月、福井地裁は関西電力大飯原発3、4号機(福井県)の運転差し止めを命じる判決を出した(関電は控訴)。提訴から約1年半の「スピード審理」。浜岡原発の原告にはいらだちが募る。
「裁判は“漂流”している」。11年5月、静岡地裁浜松支部に提訴した永久停止(廃炉)を求めた訴訟。原告側の大橋昭夫弁護士は審理の足踏み状態を認める。県内で過去最大級の600人以上の原告団を組んだ。
裁判と住民運動の両方を用いる戦術。ただ、「原告、被告、裁判所が緊張感に欠けている」(大橋弁護士)。国の要請を受け、現状で全炉が停止していることも大きいという。
静岡地裁で11年7月から続く運転終了・廃止等請求訴訟。原告には県内の弁護士自らが名を連ね、県弁護士会所属弁護士の3分の1以上が代理人になった。
鈴木敏弘弁護団長は「一審で決着をつけたい。時間はかかるが、審理を尽くそうとすれば痛しかゆしの面もある」と述べた。
■全国で約30件係争中
東日本大震災以降、全国各地で原発の運転差し止めなどを求める訴訟や仮処分申し立てが相次いでいる。
脱原発弁護団全国連絡会によると、東北電力の東通(青森県)と女川(宮城県)、東京電力福島第2(福島県)、日本原子力発電の敦賀(福井県)の4原発を除く全原発で差し止めを巡り係争中だ。現在30件程度がある。
福井地裁が2014年5月、関西電力大飯原発3、4号機の運転差し止めを命じた訴訟(12年11月提訴)で、原告側弁護団事務局長を務めた笠原一浩弁護士は「浜岡の長期化の理由は二つ」とみる。
一つ目に「一般論として裁判官が原発訴訟の判決を書きたがらない」、二つ目に「国が中部電力に要請し停止させた経緯があり、裁判所がより慎重になっている」を挙げる。
大飯の場合、関電が裁判所の求釈明にもたつき心証面で不利に立ったことや、裁判長の訴訟指揮で科学論争に深入りせず、争点が簡素化されたことなど個別の事情もあった。笠原弁護士は「浜岡は全国のほかの訴訟よりも審理が長引くだろう」と予想する。
中電広報部は「安全性を丁寧に説明した経緯もあり、長期化している」と説明した。
<メモ> 東京高裁、静岡地裁、静岡地裁浜松支部で係争中の浜岡原発の差し止めなどを求める訴訟の争点は多岐にわたる。想定津波高や基準地震動(原発の耐震設計で基準とする地震動)、住民の避難計画の実効性、富士山などの火山噴火リスク、液状化の危険性など―だ。いずれの訴訟でも双方の主張は完全には出尽くされておらず争点整理は行われていない。その後の証人尋問についても行うか否か、だれを申請するか決まっていない。