相馬地方市町村会主催、WHO共催の「こどもと震災復興 国際シンポジウム2016」が7~8日、相馬市民会館で開かれました。
初日は飯舘、南相馬、新地、相馬の4市町村長が復興の現状などを報告し、相馬市の医師や弁護士らは被災者への健康影響や対策、法的支援策などを示しました。
その中で相馬中央病院の森田医師は、震災直後の混乱で衛生管理が不徹底になったために高齢者の死亡率が震災前の1・5倍になったこと、しかし震災後5年間のがんによる死亡率を調査した結果は、震災前と比べて増加傾向が見られなかったことなどを報告しました。
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こどもと震災国際シンポ 8日まで相馬
福島民報 2016年5月8日
「こどもと震災復興 国際シンポジウム2016」は7日、相馬市民会館で開会した。8日まで。相馬市の医師や弁護士、教育などの関係者が東日本大震災、東京電力福島第一原発事故以降の対策や課題などを報告。熊本地震の発生を受け、出席者はより適切な防災や災害対策の在り方、長期的な復興施策の実現には地域間での教訓の共有が不可欠-との認識で一致した。
相馬地方市町村会の主催、世界保健機関(WHO)の共催、実行委員会の主管、日本医師会の特別後援、福島民報社などの後援。震災、原発事故から5年が過ぎ、相馬地方で実施した健康や生活環境に関する調査結果や対策などを検証し世界に発信する。
初日は飯舘、南相馬、新地、相馬の4市町村長が復興の現状などを報告。相馬市の医師や弁護士らは被災者への健康影響や対策、法的支援策などを示した。
8日は午前9時に開会する。国際原子力機関(IAEA)、WHO、福島医大などが放射線の健康影響などを説明する。午後零時10分から千客万来館で昼食会を開く。地元食材を使った海産物カレーなどを無料で振る舞う。聴講無料。
■相馬中央病院の森田医師報告
高齢者死亡率1・5倍 震災前と比較調査 衛生管理不徹底
相馬市の相馬中央病院の森田知宏医師は震災と原発事故後1カ月間に相馬、南相馬両市で75歳以上の高齢者の死亡率が震災、原発事故以前の約1・5倍に増えたとする調査結果を示した。感染症による肺炎が最多で、震災直後の混乱で衛生管理が不徹底となった点を要因に挙げた。
津波などによる直接死を除き、平成23年3月11日から1カ月間の死亡率を平成18年から22年の3月11日から1カ月間の平均死亡率を1として比較した。男性の75歳から84歳は1.61倍、85歳以上は1・64倍だった。女性の75歳から84歳は1・55倍、85歳以上は1・45倍に増加した。
森田医師は「肺炎の主な原因は口腔(こうくう)内の衛生状態の悪化と考えられ、熊本地震の被災地でも注意が必要だ」と警鐘を鳴らした。
震災後5年間の死亡率とがんによる死亡率の大きな増加は認められなかった。相馬、南相馬両市で18年以降の推移と比べた。高齢化の状況などを補正した人口10万人当たりの年齢調整死亡率は、18年は男性599人、女性329人。26年は男性523人、女性302人で大差はなかった。
同じく年齢調整がん死亡率は18年は男性184人、女性100人に対し、26年は男性166人、女性86人。高齢化の進展を踏まえ、「長期的な健康対策が欠かせない」と指摘した。
がん死亡率「震災後増えず」 震災・原発事故後の健康影響調査
福島民友 2016年05月08日
震災と原発事故後の南相馬、相馬両市民への健康影響について、相馬中央病院などの研究チームが震災後5年間のがんによる死亡率を調査し、震災前と比べて増加傾向はみられなかったとする結果をまとめた。
7日、相馬市で開幕した「こどもと震災復興国際シンポジウム」で、同病院の森田知宏医師が結果を示し「(原発事故の被災地では)放射性物質が降り注いでがん患者が増えたとの声もあるが、研究結果からはがんで亡くなった人は増えていない」と説明した。
研究チームは厚生労働省の人口動態統計などを利用し、2006(平成18)~14年の年ごとのがんによる死亡者数などを比較した。10万人当たりのがん死亡率は06年が男性184人、女性100人だったのに対し、14年は男性166人、女性86人と震災前より減少。がんを含む全ての死亡率では、06年は10万人当たり男性599人、女性329人なのに対し、14年は男性523人、女性302人だった。どちらも医療の発達などにより死亡率が低下したと分析している。