28日付の週刊女性プライムに、「原発は老朽化に耐えられるか?」と題した記事が掲載され、3人の専門家の話が紹介されました。
『環境エネルギー政策研究所』の飯田哲也所長によれば、世界の原発の平均寿命は23年なのに、日本は40年を一応の限度とするものの特例として20年延長できるとされています。
原子炉(圧力容器)も原子炉格納容器も交換は勿論、補強することも基本的にできません。従って配管やサポートなどの関連機器を補強するだけで本当に60年も使用できるのかという問題になります。
元『日本原研開発機構』の田辺文也さんによると、「福島原発2号機の格納容器は、地震の揺れかまたは劣化後に何らかの負荷がかかって破損した可能性が高く、そう考えれば容器内の圧力が上昇しなかったことが良く説明できる」ということです。
それなのに東電などがそのことを頑なに否定しているのは、「地震で壊れたことになると原発の安全性が根本から問われるからである」と述べています。
老朽原発研究の第一人者の井野博満東大名誉教授は、「原子炉は核分裂に伴う中性子線を浴びて中性子照射脆化が起きる。脆化の程度は脆性遷移温度で評価され、40年運転した関電高浜原発1号機は、99℃にまで上昇した。
そうすると地震などで緊急停止した時には急に冷たい水が注入されるので、そこまで水温が下がったときに圧力容器に亀裂が生じやすくなる」と述べています。
上記の記事は残念ながらコピーができない(転載禁止)ため、以下に要旨を紹介します。記事の本文は記載のURLにアクセスしてご覧ください。 http://www.jprime.jp/tv_net/nippon/27715
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圧力容器が割れるリスクも 原発は老朽化に耐えられるか? (要旨抜粋)
週刊女性プライム 2016年05月28日
〈週刊女性 2016年6月7日号〉
熊本地震をきっかけに、国内で唯一、稼働中の九電 川内原発の停止を求める要請が相次いでいるが、原子力規制委の田中委員長は止める理由はないとして、稼働を継続している.
NPO法人『環境エネルギー政策研究所』の飯田哲也所長は田中委員長を「科学者の風上にも置けない」として、「前震が起きた段階で予防的に止めたほうがよかった」と述べている。
■世界の原発は廃炉までの平均寿命が23年
原発も他の設備と同様に老朽化する。川内原発1号機は1984年フ月、2号機は1985年11月の運転開始から30年以上が経過している。飯田氏は「世界の原発は、廃炉までの平均寿命が23年で、運転開始から30年以上たつ原発は高齢の域に入っているので警戒したほうがいいと述べている。
■わずか2、3年の使用で微細な亀裂が1万6000か所
米カリフォルニア州サンオノフレ原発では三菱重工が納めた蒸気発生器の伝熱管に欠陥があり、水漏れ事故を起こした。交換後わずか2、3年の使用にもかかわらず微細な亀裂が1万6000か所も見つかった。その蒸気発生器と同じものが川内原発にも使われていて危険である。(飯田氏)
■福島原発2号機は地震で壊れていた!?
福島第一原発も、40年目を迎える老朽原発のひとつで、″想定外″の津波ですべての電源を失い、原子炉を冷やせなくなったことが大事故につながったと言われているが、これに対する元『日本原研開発機構』の田辺文也さんによる″疑惑″の提起は衝撃だ。
「福島原発2号機の格納容器は地震の揺れで壊れたか、あるいは劣化してその後の何らかの負荷がかかったことにより破損した可能性が高い」
津波で電源が失われたあとも2号機では原子炉隔離時冷却系という装置を用いて原子炉を冷やし続けていたが、原子炉の熱により蒸気が発生するのに対して、
「圧力抑制プールを冷やす機能は津波で失われていたから、水温がどんどん高くなるにつれ、格納容器の圧力がどんどん高まっていくはず。ところが、想定される圧力の上昇よりずっと低い。それは格納容器に穴が開いていたためとすれば、簡単に説明できる」
3月14日の夜、福島第一原発の正門で毎時3000μシーベルトという高い放射線量が観測されたが、
「2号機の格納容器に穴が開いていなければ、これだけ高い値が出ることは考えられない」
■科学的とはいえない論理で激しく否定
これに対し、東電などは「地震で早期に穴が開いた可能性を、非科学的な論理で激しく否定」したため、現在に至るまできちんと検証がなされていない。
「電力会社や保安院が認めたがらないのは、地震で壊れたとなると、これまで行ってきた、地震による影響についての評価の信頼性が危うくなるからだ」「こうした疑惑を検証することなく再稼働を進めるのは無責任」、と田辺さんは厳しく批判する。
■圧力容器が割れる老朽原発のリスク
「原発でいちばんの問題は、原子炉の炉心から飛び出した中性子線が圧力容器が脆化、つまり劣化させること」
東京大学の井野博満名誉教授(金属材料学)は老朽原発研究の第一人者で、その危険性を警告し続けてきた。
原子炉内で起きた核分裂に伴い中性子線が発生し、それが原子炉=圧力容器の内側に当たってダメージを与える『中性子照射脆化』が起きる。
「老朽原発では中性子線が金属を硬くさせる現象が起こり、硬くなった金属は弾力が失われて変形できないため、ちょっとしたひび割れでもあればそこからパリンと割れてしまう」(井野教授)
また金属は、劣化が進むと『脆性遷移温度』が上昇し、その温度を境に割れやすくなる。脆性遷移温度は新品の金属ではマイナス数十度だが、中性子線照射によって時間がたつにつれ徐々に上がっていく。
「運転開始から40年がたつ関西電力高浜原発(福井県)の1号機は、この温度が99℃にまで上昇した。地震などの緊急時には、緊急炉心冷却をして圧力容器を冷やさねばならないが、急に冷たい水が注入され(そこまで水温が下がっ)たときに圧力容器に亀裂が生じやすくなる」
■“40年で廃炉″のルールには抜け穴が
高浜原発1、2号機は原子力規制員会に再稼働を申請、″40年で廃炉″のルールがあるにもかかわらず今年4月20日に「合格」してしまった。
「40年ルールには抜け穴がある。1回限り、運転を20年延長できるという″特例″が設けられているから」(井野さん)
古い自動車を運転して怪我をしたり、人を傷つけたりする恐れがあると、保険代が高くつくことでブレーキがかかる。安全な車に買い替えようか、そもそも車をやめようか。そういう発想になるのが一般的。
ところが、原発に関して電力会社の考えは異なるようだ。前出の飯田さんは言う。
「例外がむしろ本則になるような形で、次から次に40年超えの原発も延長を図ろうとしている。それが日本の現状」