2018年9月3日月曜日

03- 放射性廃棄物ってなに?

<わかる原発> Q放射性廃棄物ってなに?
読売新聞(福井県版) 2018年09月03日
◇レベル低下 数万年必要
 
Q (福井)県内でも廃炉になる原子力発電所が増えてきたね。ニュースで見かける放射性廃棄物ってなに?
A 放射能を帯びたごみのことで、その強さによって「低レベル」と「高レベル」に分かれます。
 高レベル廃棄物は、原発の使用済み核燃料から発生したごみです。使い終わったプルトニウムやウランを再利用する際、出てくる廃液を、溶かしたガラスと混ぜて固体化します。
  低レベル廃棄物は、原子炉を廃炉にする時に出るごみです。放射能が強い順に「L1」から「L3」まで3段階あります。L1は、制御棒など炉の中から出たごみ。炉心に近い配管などの消耗品がL2。炉心から遠い位置で出るコンクリートや金属などはL3です。
 
Q どのようにして処分するの?
A 高レベル廃棄物は、電力会社などの出資で設立された原子力発電環境整備機構(NUMOニューモ)が担います。爆発や核分裂を起こしてエネルギーを放出することはありませんが、近づくと被曝ひばくする危険があるため、生活環境から遠ざける必要があります。完全に放射能のレベルが下がるには数万年かかるとされ、300メートルよりも深い地層に埋めて、人が管理しなくてもいい方法で処分する方針です。
  低レベル廃棄物は、電力会社など事業者が処分に責任を持ちます。やはり埋蔵処分が基本ですが、レベルに応じて数メートル~70メートル以深と、埋める深さに幅があります。廃棄物を覆うコンクリートが老朽化していないか監視するなど、人の管理が必要ですが、L3のように放射能レベルが低ければ、50年ほどで影響がなくなり、土地も使えるようになります。
 
Q 廃炉でどのくらいのごみがでるの?
A 一般的には、原発の解体で生じたごみのうち、L1が0・04%、L2が0・32%、L3が1・9%くらいを占めるとされています。放射能レベルが極めて低く、健康への影響がほとんどない廃棄物も約5%あり、原子力規制委員会の許可を得れば普通の産業廃棄物と同じように処理することができます。残りの約93%は通常の産廃です。
  県内では、日本原子力発電敦賀原発1号機(敦賀市)で約1万3000トン、関西電力美浜原発1、2号機(美浜町)で計約5000トン、日本原子力研究開発機構の新型転換炉「ふげん」(敦賀市)で約5万トン、高速増殖炉「もんじゅ」で約2万7000トン(通常の廃棄物に再処理可能なものを含む)の低レベル廃棄物が出ると推計されています。
 
Q すごい量だね。処分の見通しは立っているの?
A 県は原発敷地内への埋設を認めておらず、処分は難航しそうです。
 今年6月、原子力規制委の更田豊志委員長は「廃棄物の問題は市民の生活や経済活動に関わることで、規制委が判断する問題ではない」としつつも、「コスト面では、各原発の敷地内での処分が最も有利だと思う」と発言しました。これに対して、渕上隆信敦賀市長は「事業者とは敷地外に持って行く約束になっている。規制委としての方針なら抗議する」と不快感を示すなど、処分を巡る問題は絶えません。本格化する廃炉作業を前に、廃棄物の処分について議論を加速させなければなりません。
(高木文一)