今度の北海道胆振地方の大地震はこれまで知られていなかった活断層によるものでした。先の阪神淡路大地震でもそうでした。
そうしたことから分かることは、現在日本に2000本余りあるとされている活断層はまだ一部に過ぎず、全ての活断層を網羅したものではないということです。実際に起きてみないと分からない活断層はまだまだあるだろうということです。
それなのに原発の再稼働に当たっては、活断層か否かは分かるということを前提にしたうえで、なんと基準地震動を数百ガルにするというような、実に安易な考え方で審査を進めています。
苫東厚真火力発電所の事故の詳細は不明ですが、ボイラー周りの配管が破損したとか、ボイラー本体が故障したとか、発電機本体が壊れたとかと言われています。
いずれにしても、もともと発電所は震度5以上に対しては持たないと言われているので、同発電所を震度7が加わる場所に設置したのは、活断層があることが分からなかったからに他なりません。
今度の北海道胆振地方の地震の加速度が1504ガルだったことを思えば、未知の地震に対して前述のような低レベルに想定することはあり得ず、しかるべき余裕を見て2000ガル以上に設定すべきです。それなのに実際には数百ガルなどに設定しているのは、そうしないと既設の原発を再稼働出来ないからです。
現実は恐ろしい欺瞞の下に再稼働が進められているということです。
西日本新聞の「未知の活断層 ~ 」という社説を紹介します。
関係記事
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(社説) 未知の活断層 さらなる「構え」九州でも
西日本新聞 2018年09月15日
北海道で起きた地震は厚真(あつま)町で震度7を記録した。気象庁の震度階級(10段階)で最も高く「人は立っていることができず、飛ばされることもある」と表現されるほどの揺れだ。
この激しさは、「未知の活断層」の存在を忘れるなという教訓を、改めて私たちに突きつけた。今回の地震は、これまで見つかっていなかった地下の断層が動いて起きたのではないかとみられるからだ。
厚真町には、町内を南北に走る活断層「石狩低地東縁断層帯南部」がある。政府の地震調査委員会によると、地震の起きる確率が「やや高いグループ」に入っていて、震度6強以上に襲われる可能性は、以前から指摘されていた。
ただ、今回の震源は、その断層帯から東へ約10キロ離れた場所だった。専門家の間では「関連性は薄い」として、知られていない活断層があったとの見方が出されている。
全国には約2千の活断層がある。九州にも主なものだけで20近くある。あくまでそれらは現在までの「判明分」にすぎない。活断層は実際に地震が起きて存在が分かることも多い。2005年の福岡沖地震の場合も、発生して初めて、地震空白域とみられていた玄界灘の海底に、陸地の警固断層帯が延びていることが判明した。
活断層は千~数万年単位で動くので警戒がおろそかになりがちだ。日本はいつ、どこで大きな揺れに見舞われてもおかしくない地震列島である。未知の活断層まで考えるならば、原子力発電所の立地を巡る議論にも少なからず影響を与えるだろう。
北海道の地震で当面警戒すべきは、石狩低地東縁断層帯が刺激され、再び強い地震を起こすことだ。熊本地震では、前震を起こした日奈久断層帯の動きが布田川断層帯での本震につながったとみられる。
さらに気になるのは、北海道沖で起きる恐れがある巨大地震との関連だ。地震調査委が、千島海溝沿いで30年内にマグニチュード9級の海溝型地震が起きる確率は最大40%とする見解を、昨年暮れに示したばかりだ。千島海溝でプレートが潜り込む時に陸にかかる力が強まっていて、内陸地震が起きやすくなっていると考える研究者もいる。
九州で言えば、巨大な海溝型地震を引き起こす南海トラフとの関連だ。北海道と同様に考えるなら、熊本地震のような内陸地震が増える恐れもある。
自治体が作成するハザード(被害予測)マップで地域の避難場所などを確認したい。食料や水などの準備はできているかも重要だ。改めて「構え」と「備え」を万全にしたい。