2018年9月7日金曜日

トリチウム水処理を巡って規制委長が珍妙発言の数々

 福島原発で貯蔵中のトリチウムを含む水の処分を巡り、公聴会で海などに放出せずタンクで長期保管する提案が相次いでいることに対し、原子力規制委の更田豊志5日の定例会見で否定的な考えを示しましたが、いずれも納得できるものではありませんでした。
 
・「保管が長引けば長引くほど廃炉に影響が出る」と言いますが、保管場所は大型タンクを新設すれば現在のエリアでも可能だし、7・8号機建設予定地に新設することも可能なので、廃炉作業の妨害になることはありません。
「現実的な議論を期待する」についても、123年間保管することで放射線レベルを1000分の1に減少させる案は、海を汚さない点でも最も現実的な案です。
「極端な議論は人を不幸にする」についても、「放射性三重水素(トリチウム)がDNAに取り込まれれば遺伝子を破壊する」という指摘は決して「極端な議論」ではなく、「そうした惧れが否定できない以上環境に排出することは止める」というのが国際的に確立されている「予防原則」です。
・「苦渋の決断をしなければ前に進めない」と言うのも意味が不明で、タンクによる長期保管という合理的な対策で事態を解決することができます。
 
 理屈をこね回すことで、結局一番低コストの方法を採用するというのは否定されるべき考え方です。
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福島第一原発のトリチウム水 「保管長引けば廃炉影響」
東京新聞 2018年9月6日
 東京電力福島第一原発で貯蔵中の放射性物質トリチウムを含む水の処分を巡り、海などに放出せずタンクで長期保管する提案が相次いでいることに対し、原子力規制委員会の更田豊志(ふけたとよし)委員長は五日の定例会見で「保管が長引けば長引くほど廃炉に影響が出る」と否定的な考えを示した。
 
 海洋放出には地元漁協などから強い懸念が出ているが、更田氏はこれまで「現実的な唯一の選択肢」と主張してきた。この日も「現実的な議論を期待する」と述べ、あらためて政府や東電に決断を促した。
 
 トリチウム水の貯蔵量は九十三万トンに上り、今後も年に五万トン以上のペースで増える見込み。経済産業省の有識者会議は海や大気中などに放出する五つの案を議論してきたが、先月末に福島県など三カ所で開いた公聴会では、現行や新設のタンクで長期保管するよう求める意見が多く出た。会議の山本一良(いちろう)委員長(名古屋学芸大副学長)は、今後はタンク保管の選択肢も加える意向を示している。
 
 公聴会では、トリチウム水の人体への影響がほとんどないとされていることにも「一部は細胞に取り込まれ遺伝子を破壊する」などと批判が相次いだ。更田氏は「極端な議論は人を不幸にする。苦渋の決断をしなければ前に進めない」と反論した。 (宮尾幹成)