3号機の核燃料プールで冷却中の566体の燃料は、2年かけて構内の共用プールに移す計画です。当初(2月段階)は今年の夏にも始めたいということでしたが、それが11月中に延び、現在は「いったん立ち止まって、万全の状態で出直したい」ということで開始時期も不明です。
3月のクレーンの試運転では、米国製の制御盤の電圧設定が間違っていたため制御盤が焦げました。それを改修(新設?)後、8月に試運転を行ったところ、今度は雨水でケーブルが腐食していたため警報が出て作動が止まりました。
制御盤の電圧設定は設計時の基本事項なので、それが間違ったままで完成するなどは考えられないことですし、ケーブルが雨水で腐食するというのも聞いたことのない話です。
記事からは詳細な原因等は読み取れませんが、いずれにしても「みっともない話」です。
使用済みの核燃料が、もしも空中に吊り上げられた状態で停止してしまえば、誰も近づけないほど高レベルの放射線を出すので、ロボットによるしか対処法がありません。
従って東電が言う通り、一旦立ち止まって万全の状態で出直すことは必要ですが、ここまで信じられないようなミスが重なるようでは、責任問題に波及しても仕方がありません。
産経新聞が【原発最前線】で取り上げました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【原発最前線】東電トップの責任明確化へ
福島3号機の燃料取り出し遅れで規制委 「みっともない原因」
産経新聞 2018年9月21日
「社のトップのマネジメントができているのか」。東京電力福島第1原発3号機で、使用済み燃料プールからの燃料取り出しが遅れることに対し、9月14日の原子力規制委員会の会合で厳しい意見が東電側に浴びせられた。制御盤の電圧設定を間違えるなど「みっともない原因」(田中知(さとる)委員長代理)で招いた計画遅延をめぐり、小早川智明社長の責任が問われることになる。(社会部編集委員 鵜野光博)
トラブル続々
3号機燃料プールからの燃料取り出しは、国と東電が策定した中長期ロードマップで開始時期を「平成30年度半ば」としており、東電は11月中に始める予定だった。遅延を初めて認めたのは9月6日。廃炉についての定例記者会見で、東電の廃炉・汚染水対策責任者の小野明氏は「3号機燃料プールからの燃料取り出しは、いったん立ち止まって、万全の状態で出直したい」と表明した。
3号機のプールでは566体の燃料が冷却中で、2年かけて構内の共用プールに移し、より安全な管理を行う。「水素爆発で損傷した原子炉建屋から健全な共用プールに燃料を移すことは、大きなリスクの低減になる」(東電)ためだ。
小野氏の前任の増田尚宏氏は産経新聞の2月下旬の取材に、「燃料取り出しは夏にも始めたい」と語っていた。その見通しが曇ったのは、3月15日に始めた燃料を扱うクレーンの試運転。警報が鳴り、制御盤が焦げているのが見つかった。米国から出荷された制御盤の電圧設定が間違っていたことが原因だった。
8月8日には、燃料把握機をプールに降下させていたところ警報が鳴り、停止。原因は雨水によるケーブルの腐食だった。同15日にも試運転中にクレーンが停止するトラブルが発生。クレーンの定格荷重を超えていたことが判明している。
「海外製が原因」?
これらのトラブルの原因として、東電は9月14日の規制委の会合で「当社および東芝エネルギーシステムズ(元請けメーカー)の品質管理上の問題」と説明。規制委側からは、燃料取り出しが順調に行われた4号機との比較が問われ、東電側は「環境は同じだが、3号機については海外機器メーカーのケーブルを使用し、4号機は国内製を使用していた」と述べた。
この説明に、規制委側は納得しなかった。
山形浩史・緊急事態対策監は「これは福島第1原発3号機だけの問題だとは全く思ってない」と切り出し、「普通の発電所でも製造現場でも品質保証はトップのリーダーシップが一番大事。トップが体制なりリソースを配分して現場が頑張っていく。東電の品質管理体制はこのレベルなんですね、ということだ。3号機の担当者の問題ではなく、失礼だが小野さんのリーダーシップでもなく、社のトップのリーダーシップがきっちりとできているのか。ここができていないなら、ほかもできていないということだ」と厳しく指摘。原因の詳細に加えて「トップマネジメントができているのかどうか、それを含めて次回ご回答いただきたい」と要望した。
この会合の進行を担当した規制委の田中委員長代理は「みっともない原因」と指摘した後、「海外調達は言い訳に聞こえるので、高いレベルでの品質管理をしっかりやってもらいたい」とクギを刺した。
「1000倍の関心」と更田氏
会合終了後、規制委の担当者は議論が「トップのマネジメント」に及んだことについて、「場合によっては委員会を含めた対応になる」と述べ、この日のような規制委の事務局の原子力規制庁と東電の担当者との会合だけでなく、5人の規制委員と小早川社長が相対する会合が設けられる可能性を示唆した。
規制委の更田(ふけた)豊志委員長は8月22日の会見で3号機のトラブルについて見解を問われ、「福島第1原発の廃炉作業でさらに一段とリスクを下げていくために重要なプロセスの一つが3号機からの使用済み燃料プールからの取り出しで、粛々と進めてもらえるだろうと期待していた」と不満を示した。そして、同日の定例会合で原発の燃料集合体を覆う金属製の筒「チャンネルボックス」に欠けた部分があったのが報告されたことを引き合いに出し、こう述べた。
「はっきり言って、チャンネルボックスの欠損の1000倍の関心を持って(3号機のトラブルの問題に)臨んでいる」
小早川氏は5月30日の規制委との意見交換で、第1原発でたまり続けるトリチウムを含んだ処理水の処分について更田氏らから「東電の問題なのに、なぜ判断を国に委ねようとするのか」と繰り返し迫られ、言葉に窮した過去がある。ただ、処理水問題は風評被害という複雑な要因が絡んでいたが、今回は本領の技術で解決できる分野で東電はエラーを重ねた。トップに注がれる目は、より厳しい。
◇
使用済み燃料 原発の原子炉内で一定期間使用した後に取り出した核燃料。福島第1原発では1号機に392体、2号機に615体、3号機に566体あり、それぞれ建屋内のプールで冷却されている。4号機にあった1533体の取り出しは平成26年12月に完了した。これとは別に、事故によって溶け落ちた核燃料(デブリ)が1~3号機の原子炉に存在している。