2018年9月1日土曜日

海洋放出反対が殆ど トリチウム汚染水対策 公聴会

 福島原発で増え続けているトリチウム水の処分方法について、8月30日(富岡町)と31日(郡山市・東京都)に、計3カ所で公聴会が開かれました。
 1日目は計14人、2日には計30人が意見を述べましたが、1日目は海洋放出案に反対する意見が多数を占め2日目は「海洋放出」への賛成は皆無でした。
 
 福島県漁連の会長は、海洋放出は「試験操業という形で地道に積み上げてきた福島県水産物の安心感をないがしろにし、魚価の暴落、漁業操業意欲の喪失を招く。福島県漁業に致命的な打撃を与える」と述べ、別の発言者は「石油備蓄用の大型タンクによる陸上保管も検討対象にすべきだと提案しました。
 
 またトリチウム(半減期123年)放射線(ベータ線)は比較的弱く、人体に入っても大部分は排出されるとして、その影響を軽視する向きがありますが、がん専門医の西尾氏はトリチウムは水素としてDNAに取り込まれ、遺伝子情報が変化する」ので、「人類に対する緩慢な殺人行為だ」と非難しました水素はDNAを構成する5元素の一つです。
 
 いずれにしても海洋放出を当然視していた原子力規制委の目論見は外れました。
 そもそもトリチウムの問題を深刻化させている原因は、高額な国費と長大な時間を掛けて作った凍土遮水壁が全く機能を発揮していないことにあるのですが ・・・ 
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海洋放出反対 相次ぐ トリチウム汚染水・福島公聴会
 しんぶん赤旗 2018年8月31日
 東京電力福島第1原発事故で増え続けている高濃度のトリチウム(3重水素)を含む汚染水の処分方法をめぐり、国の汚染水処理対策委員会の小委員会は30日、一般の意見を聞く公聴会を福島県富岡町で開きました。団体・個人の計14人が意見表明しました。
 処分対象の汚染水にトリチウム以外の放射性物質も基準値を超えて残留していることをめぐり「議論の前提が崩れた」「やり直すべきだ」と厳しい批判が相次ぎました。同対策委員会が2016年に示した海洋放出案に反対する意見が多数を占めました。
 
 海洋放出に強く反対している福島県漁連の野崎哲会長は、風評被害について「払拭には想像を絶する精神的、物理的な労苦を伴うことを経験した」と強調。「試験操業という形で地道に積み上げてきた福島県水産物の安心感をないがしろにし、魚価の暴落、漁業操業意欲の喪失を招く。福島県漁業に致命的な打撃を与える」と述べました。
 福島県新地町の漁師の小野春雄さん(66)は「本格的な操業が何年も遅れ、漁労技術も途絶えてしまう」と訴えました。
 
 原発問題住民運動全国連絡センターの伊東達也筆頭代表委員は、石油備蓄用の大型タンクによる陸上保管も検討対象にすべきだと提案。トリチウム水の扱いをめぐり「加害者である政府が原発事故の法的責任を表明してこそ、県民、国民から受け入れられる可能性が出てくる」と述べました。
 
 公聴会は31日にも同県郡山市と東京都で開きます。国は公聴会の意見を踏まえ処分方法を検討します。
 トリチウム 水素の同位体。陽子1個と中性子2個からなり、3重水素ともいいます。半減期は約12年。水の分子の水素がトリチウムに置き換わったのがトリチウム水です。化学的性質が水素と同じため、福島第1原発にある放射性物質除去設備では取り除くことができません。
 
 
<福島第1> 公聴会終了 トリチウム水処分、長期保管含め議論へ
河北新報 2018年9月1日
 東京電力福島第1原発の敷地内にたまり続ける放射性物質トリチウムを含む水の処分方法を巡り、政府の小委員会は31日、国民の意見を聞く公聴会を東京都内と郡山市で開き、計30人が持論を述べた。有力な選択肢に浮上した「海洋放出」への賛成は皆無で、結論を急ぐ政府や東電への不信感が噴出した。
 
 公聴会は30日の福島県富岡町を含め3回開催した。終了後、小委委員長の山本一良名古屋大名誉教授は公聴会で複数挙がった「タンクでの長期保管」を処分の選択肢に加え、期限を切らずに議論する考えを明らかにした。公聴会の追加開催も検討する方針。
 東京・内幸町のイイノホールでは16人が意見を語った。トリチウム(三重水素)の健康被害について、北海道がんセンター名誉院長の西尾正道さん(71)=札幌市=は「(放射線の影響だけでなく)水素としてDNAに取り込まれ、遺伝子情報が変化する」と懸念。トリチウムの環境放出を「実害が遅れて出てくる。人類に対する緩慢な殺人行為だ」と非難した。
 
 トリチウムの半減期は約12年。原子力市民委員会(事務局東京)の細川弘明事務局長(63)=京都市=は「大型タンクで100年以上保管すべきだ。技術的、経済的に可能。長期保管は放射能を減衰させる積極的効果がある」と強調した。 
 郡山市商工会議所での公聴会では、汚染水を多核種除去設備(ALPS)などで処理した水にトリチウム以外の放射性物質も残っている問題に関し「議論の前提が崩れた」と訴える人が相次いだ。
 郡山市から札幌市に避難する会社員鈴木則雄さん(60)は「ALPSでどこまで再処理するかが示されないと意見の出しようがない」と疑問視。福島県三春町のヘルパー大河原さきさん(66)は「処分は漁業との関係ばかりが問題にされがちだが、広く国民や海外にも意見を聴く必要がある」と指摘した。