東電・中電・日立・東芝の4社が原発事業で提携するという構想は、経産省の嶋田事務次官が描いたもので、浜岡原発(静岡県)の再稼働の見通しが全く立たない中電がそれに活路を見出して積極的に動いたということです。
ダイヤモンドオンラインはこの4社連合は再編の序章であると見ています。
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中電が画策した日立・東芝・東電との原発連合は再編の序章にすぎない
堀内 亮 ダイヤモンドオンライン 2018年9月5日
「週刊ダイヤモンド」編集部
東京電力ホールディングス(HD)、中部電力の電力会社2社と日立製作所、東芝の原子力発電所のプラントメーカー2社が、原発事業で提携することが明らかになった。
いずれも、東電HDの福島第一原発と同型の沸騰水型軽水炉(BWR)タイプの原発の運営・製造を行うメンバーで、まずは原発の保守管理を担う新会社設立を目指す。もっとも、4社連合はBWR陣営を一つに束ねる原発再編の序章にすぎない。
そもそも原発の再編シナリオは、東電HDが中期経営計画「新々総合特別事業計画(新々総特)」で原子力事業を他社と統合させる方針を盛り込んだことで浮上した。
このシナリオを描いたのは、東電HDを実質的に支配下に置く経済産業省の嶋田隆事務次官。だが、東電HDを主軸とする霞が関発の再編劇に巻き込まれまいと、予防線を張る大手電力がほとんどだ。
しかし中電だけは異彩を放っていた。業界関係者によれば、「東電から主導権を奪うぐらいの熱心さと突破力をもって、原発再編劇を前進させようとしていた」という。今回の提携においても、勝野哲・中電社長が中西宏明・日立会長と頻繁に会合を持って4社連合の設立にこぎ着けた経緯がある。
中電が原発再編に前のめりなのは、所管する唯一の原発、浜岡原発(静岡県)の再稼働の見通しが全く立たないからだ。
東日本大震災後に、菅直人元首相に“最も危険な原発”と名指しされ、事実上政府から死刑宣告を受けたといえる浜岡原発。中電は安全対策に累計約4000億円を投じるが、静岡県の川勝平太知事をはじめ地元の自治体は再稼働に慎重な姿勢を崩していない。
中電は、八方ふさがりの原発事業の出口を、再編という“リスク低減策”に見いだすしかないのだ。
ジェラは期待外れ?
中電には再編の先行事例がある。東電の火力発電・燃料調達部門と統合したジェラ設立がそうだ。
統合によって実現した世界一の燃料調達力と、これまで培った発電所の運営ノウハウを武器に「世界で戦えるグローバル企業」として発足したジェラは、電力改革の希望の星として業界から羨望のまなざしで見られた。
実はジェラの発案者も、嶋田氏なのだ。このときも東電との統合について、「中電は嶋田氏に社運を懸けた」(業界関係者)とされる。
つまり、中電はジェラに続き原発でも嶋田氏の構想に再び懸けているのだ。
ところが、である。ジェラは世界的な脱火力発電の流れに逆らえず、業績予想を当初計画から下方修正せざるを得ない状況に。2019年4月の完全統合まで約5年を費やしたために世界の情勢が一変し、嶋田氏の狙いは外れつつある。
原発でも嶋田氏の再編シナリオに便乗する中電の戦略は、危うさをはらんでいる。