2018年9月18日火曜日

18- ブラックアウトの背景に原発固執 北電もリスクを認識

 北海道全域でブラックアウトを生じた背景について、しんぶん赤旗が取り上げました。
 様々な要因が重なっていますが、北電は15年10月の段階で電力需給検証小委員会から
「北電においては過去最大級、又はそれを上回る計画外停止が発生しても、電力需給がひっ迫することのないよう、多重的な需給対策を講じ、安定した電力需給の実現に万全を期すべき」と指摘されていたのにもかかわらず、泊原発の再稼働に固執し、結局対策を放棄していたことに最大の原因があるようです。
 
 他地域からの応援の電力を受ける本州・北海道間のケーブル容量が60万KWと、本州・四国間の430万KWに比べてあまりにも小さいのも大いに問題でした。 
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全道停電(ブラックアウト) 背景に原発固執 北電もリスク認識
 しんぶん赤旗 2018年9月16日
 北海道南西部の胆振(いぶり)地方を震源とする、最大震度7の地震から1週間以上がたちました。道内全域に及ぶ停電「ブラックアウト」が起き、いまだに市民生活に甚大な影響を与えています。ブラックアウト発生の背景には、泊原発(泊村)の再稼働に固執し、一極集中の電力供給を続けた北海道電力の経営体制があるとの指摘が出ています。
 6日未明、震源地に近い厚真町の苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所が緊急停止しました。同発電所3基の総出力は165万キロワットで、道内の電力需要の半分を担っています。
 
大電源に頼って
 電力は需要と供給を常に一致させる必要があります。需給のバランスを示すのが周波数(電圧や電流が1秒間に正と負に切り替わる回数)です。周波数の大幅な変化は発電設備の故障につながります。苫東厚真発電所の大量の電力が脱落したことを発端に、需給バランスが崩れ始め、最終的に他の発電所も自動的に停止しました。
 
 環境管理工学が専門の北海道大学工学院の山形定(さだむ)助教は「タンデム(複数人乗り)自転車をこいでいる時に、一人が脱落すると他の皆にかかる負荷が増える。限界を迎える前に一斉にこぐのをやめてしまうようなもの」と説明します。
 元北電社員の水島能裕(よしひろ)氏は「苫東厚真発電所や泊原発といった大電源に頼っていたことが、根本的な原因ではないか」と語ります。
 
 北電は「苫東厚真発電所が全基停止することは想定していなかった」としていますが、苫東火力への集中による停電のリスクは認識していました
 2012年に泊原発が停止したあと、苫東厚真発電所の設備利用率は10年の64%から13年に85%まで増加。当時、北電は「苫東厚真など大型火力の重大トラブルが起きれば、厳しい電力需給が予想」としていました。
 
 経済産業省の専門家会合(電力需給検証小委員会)は、15年10月の報告書でこう指摘していました。「北海道電力においては(中略)過去最大級、又はそれを上回る計画外停止が発生しても、電力需給がひっ迫することのないよう、多重的な需給対策を講じ、安定した電力需給の実現に万全を期すべき
 
中小規模発電を
 しかし北電はあくまで「泊再稼働によって供給面の正常化を図りたい」(真弓明彦社長、16年)と泊原発の再稼働に固執しました。同年、北電は新規制基準対応として泊原発に2000億~2500億円を投じると発表しています。水島氏は「泊の再稼働ありきで液化天然ガス(LNG)の導入も遅れてしまった」と話します。
 老朽化した火力発電所の代替として、石狩湾新港で建造中のLNG火力発電所について北電は2・3号機の稼働を2~3年遅らせる方針を昨年決めています。
 北電はLNG火力の稼働を遅らせたことについて、「火力発電所の経年劣化はわかっていたが、道内の電力需要が伸びなかったため」といいます。
 水島氏は「泊が再稼働すると電気が余るため、それを前提にあえて遅らせている。泊の再稼働ありきで老朽火力への対応は怠られていた」と批判します。
 
 地域政策が専門の小田清・北海学園大学名誉教授は「農村など、大量の電力を必要としない地域もある。その地域を賄うだけの中小規模の発電施設を全道におくべきだった。そうすれば根室や釧路の酪農地帯で牛乳を捨てることもなかった」と指摘しています。
 (「電力」取材班)