伊方原発は昨年12月、広島高裁が抗告審で広島地裁の決定を覆し、運転を禁じる決定をしたため、再稼働できないままで経過しています。高裁が原発の運転差し止めの判断をしたのは初めてで注目されました。
同決定は、阿蘇山が約9万年前に過去最大の噴火をしたときには火砕流が160キロ先に及んだとして、伊方原発敷地に到達した可能性が十分小さいとは評価できないと述べ、原発の立地として不適と断じました(規制委の「火山ガイド」が過去最大の噴火を想定して評価すると定めていることに忠実に従った結果です)
また、禁止の期間を本年9月30日までに限定したのも異例で注目を浴びました。
四電が異議を申し立てた異議審が結審し、広島高裁は18日、異議審についての決定を25日に出すことを決めました。
関係記事
西日本新聞と大分合同新聞の記事を紹介します。
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伊方原発異議審の決定、25日に 運転禁止仮処分で広島高裁
西日本新聞 2018年09月18日
四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転を差し止めた広島高裁の仮処分決定を不服とした四国電の申し立てによる異議審で、広島高裁(三木昌之裁判長)は18日、決定を25日午後1時半に出すことを決めた。
四国電の異議が認められれば、伊方3号機は再び運転が法的に可能となる。退けられた場合は運転できない状態が続くが、現状の仮処分の差し止め効力は9月30日までとなっている。
昨年12月の広島高裁決定は、約130キロ離れた熊本県・阿蘇カルデラで大規模噴火が起きた際、火砕流が原発敷地内に到達する可能性を指摘。四国電の火山リスクの想定は過小と判断した。
伊方原発 近く可否判断へ 広島高裁異議審と大分地裁仮処分
大分合同新聞 2018年9月18日
【大分合同・愛媛伊方特別支局】阿蘇の巨大噴火リスクを理由に伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転を差し止めた広島高裁の仮処分決定の期限が今月末に迫った。決定を不服として四国電力が申し立てた異議を審理してきた同高裁の判断は、月内に示されるとの見方が強い。大分地裁でも同種の仮処分申請に対する決定が月内にも出る見込み。運転再開か、停止の継続か。2件の司法判断に注目が集まっている。
昨年12月の広島高裁決定は、原発の再稼働審査に用いられる「火山影響評価ガイド」を厳格に適用した。伊方から約130キロ離れた阿蘇カルデラで約9万年前に発生した過去最大の噴火で「火砕流が原発敷地に到達した可能性が十分小さいとは評価できない」と指摘。規定に沿えば「立地不適だ」と結論付けた。
伊方3号機は当時、定期検査のため停止中。今年1月に予定していた運転再開はできなくなった。四国電は「火砕流は伊方に到達していない」「原発運用期間中に巨大噴火が起きる可能性は小さい」と同高裁に異議を申し立て、裁判担当社員を増員して逆転を図った。
差し止め決定を出した野々上友之裁判長は定年退官し、異議審は三木昌之裁判長が担当。審尋は4月と7月の2回開かれた。住民側は火山学者ら5人の証人尋問を申請したが退けられたため、「電力側に肩入れしている」と三木裁判長らの忌避を申し立てた。最高裁は今月3日にこれを認めない決定をし、審理は終結した。
一方、大分地裁(佐藤重憲裁判長)でも、大分県内の住民4人が2016年に申し立てた伊方3号機差し止めの仮処分に対する審尋(計12回)が今年5月に終了した。裁判長は最終審尋の場で「9月中に決定を出す」と述べたという。
伊方原発沖には国内最大級の「中央構造線断層帯」が通っており、周辺住民には大地震による重大事故の懸念も根強い。こうした地震や火山のリスクをどう評価するか、どのような基準で差し止めの可否を判断すべきかといった主要争点は、広島高裁、大分地裁とも共通だ。
仮処分は民事保全法に基づく手続き。裁判所の決定が直ちに効力を持つ。広島高裁、大分地裁のどちらか一カ所でも運転差し止めを認めれば、同機は引き続き法的に運転できない状態が続く。