国の地震調査委員会は去年12月、北海道沖合の「千島海溝」で「マグニチュード8.8程度以上」の巨大地震が、今後30年以内に7%~40%の確率で発生するおそれがあるとの想定を明らかにしました。
巨大地震が起きると福島原発には最大10メートル余りの津波が押し寄せる可能性があり、現在建屋地下室などに蓄えられているおよそ4万6000トンの濃厚な汚染水が津波の引き潮とともに海洋に流出する惧れがあります。
東電はそれを防止するために防潮堤を北側に延長して1号機から4号機をカバーするとともに、建屋の開口部122カ所を封止する計画とのことですが、放射線のレベルが高くてその作業が出来ない所が13カ所あるということです。
今回は東電も本気で津波の対策を考えているようです。
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福島第一原発 千島海溝地震で汚染水流出おそれ 津波対策強化へ
NHK NEWS WEB 2018年9月14日
東京電力は、北海道の沖合の千島海溝で巨大地震が起きた場合、福島第一原子力発電所に最大で10メートル余りの津波が押し寄せて地下にたまっている高濃度の放射性物質を含む汚染水が外部に流出するおそれがあることから、防潮堤を延長するなど津波対策を強化することを明らかにしました。
福島第一原発では、溶け落ちた核燃料を冷やすため原子炉に注いでいる水や流れ込む地下水が高濃度の放射性物質を含む汚染水となり、今も建屋の地下などにおよそ4万6000トンがたまっています。
政府の地震調査委員会が去年12月、北海道の沖合の「千島海溝」で起きる巨大地震について「切迫している可能性が高い」と評価したことを受けて東京電力が分析した結果、福島第一原発に最大で10メートル余りの津波が押し寄せ汚染水が外部に流出するおそれがあることがわかりました。
このため東京電力は津波による浸水の被害を防ぐため建屋の出入り口など開口部を塞ぐ工事を前倒しして進めていて、14日開かれた原子力規制委員会の会合では、新たに重要な設備の被害を軽減するため防潮堤を北側に延長して1号機から4号機の海側に作り、津波対策を強化することを明らかにしました。防潮堤はできるだけ早期に完成させたいとしています。
これに対して原子力規制庁の担当者からは「防潮堤の延長で廃炉作業に影響がないか検討してほしい」といった指摘が出されていました。
福島第一廃炉推進カンパニーの小野明代表は「津波に襲われれば廃炉作業のための設備が使えなくなってしまい、廃炉が遅れる可能性もある。防潮堤をどこにどういう形で作るか、急いで検討したい」と話していました。
千島海溝の巨大地震
政府の地震調査委員会は去年12月、北海道の沖合の「千島海溝」で、今後、「マグニチュード8.8程度以上」の巨大地震が起きるおそれがあるとする新たな評価を公表しました。
こうした地震は過去に350年前後の間隔で発生し、前回からすでに400年程度経過していることから、次の巨大地震が「切迫している可能性が高い」としています。
震源域は、千島海溝沿いの「十勝沖」と「根室沖」、それに北方四島がある「色丹島沖および択捉島沖」で、これらが連動した場合「マグニチュード8.8程度以上」の巨大地震が、今後30年以内に7%~40%の確率で発生するおそれがあると想定されています。
高濃度汚染水と流出リスク
福島第一原発では、事故で溶け落ちた核燃料を冷やすため、原子炉に入れ続けている水が高濃度の放射性物質を含む汚染水となって原子炉建屋などの地下にたまっています。
汚染水は建屋からくみ上げられ、専用の設備で処理されて一部は原子炉に戻されますが、そのほかはほとんどの放射性物質が取り除かれてタンクに保管されています。
汚染水は日々発生していて、処理される前の高濃度のものが原子炉建屋、タービン建屋、それにプロセス主建屋と呼ばれる建物などの地下にたまっています。
その量はおよそ4万6000トンに上り、セシウムやストロンチウムなどの放射性物質が高い濃度で含まれています。
さらに、プロセス主建屋には強い放射線を出す廃液や汚泥など、およそ600トン保管されていて、東京電力は2020年度までに高台に移送する計画を示しています。
高濃度の汚染水がたまっているこれらの建屋は、海抜8.5メートルの敷地にあります。
このため、10メートルを超えるような津波が到達した場合には建屋に津波が流れ込むおそれがあり、引き波によって高濃度の汚染水や強い放射線を出す廃液などが海に流れ出すことが懸念されています。
専門家「汚染水は最大の懸念」
福島第一原子力発電所に再び大きな津波が押し寄せた場合に懸念される高濃度の汚染水の流出について、日本原子力学会の「廃炉検討委員会」の委員長で、法政大学の宮野廣客員教授は、「建屋の地下の汚染水は濃度が非常に高く、それが外に出てしまうということになれば、影響は大きい」と話し、「今の福島第一原発のリスクを考えるうえで、環境への影響ということでは、最大の懸念の一つだ」と指摘しています。
そのうえで津波対策については、「大きな津波の場合、波力で設備が壊れることがあるので、どういう影響があるのか、きちんと評価して対策をしないといけない。すべてに対して完璧な対策を取ることはできないが、最悪な条件になったとしても最低限守るべきものを決めて、そこまでは守るという対策を進めてほしい」と話していました。
水密扉など開口部の津波対策を急ぐ
東京電力はもともと、福島第一原発が東日本大震災のときと同程度の高さおよそ13.5メートルの津波に襲われた場合などを想定して、防潮堤を建設したり、建屋の中に津波が流れ込まないよう開口部を塞ぐなどの対策を進めてきました。
こうした中、千島海溝の巨大地震が「切迫している可能性が高い」との評価を受け、対策を前倒しして進めることになりました。
東京電力はまず、地震に伴う津波の高さは最大で10.1メートルと評価したほか、1号機から4号機の原子炉建屋などがある敷地で、最大およそ1.8メートルの高さまで浸水するおそれがあると評価しました。
1号機から4号機の建屋には、設備や機器を運び込む入り口や空気を取り入れ口などの開口部が合わせて122あります。
現場では大きな水密扉の設置など開口部を塞ぐ作業が進められていますが、これまでに作業を終えたのは61か所にとどまっています。
このため、現在予定している26か所の開口部を塞ぐ工事のうち、6か所は年度内に作業を終え、残りの20か所は半年程度前倒しするなどして、2020年度上期までに完了させることにしています。
このほか、22か所については工事を検討しています。
しかし、現場の放射線量が高く作業が行えない場所が13か所あり、今後対応を検討したいとしています。