2018年9月26日水曜日

伊方原発3号機 運転停止命令取り消し 再稼働が可能に


 
 伊方原発愛媛県3号機の運転に関する異議審において、広島高裁は、去年12月の仮処分の決定を取り消し再稼働できる状態になりました。
 決定の中で、裁判長は「伊方原発が運用されている期間中に阿蘇山で破局的な噴火が発生する可能性が根拠をもって示されていない」と述べ、「火砕流が到達する可能性が十分小さいと評価できる」という判断を示しました。
 
 阿蘇山に限らず、火山がいつ破局的噴火を起こすかの予知は出来ないというのが火山学会の定説です。従って噴火するという根拠を示せというのはもともと無理な要求です。
 昨年12月の仮処分決定は、規制委の火山ガイド原発から半径160キロ以内の範囲にある火山で噴火規模が想定できない場合は過去最大の噴火を想定す」を厳格に摘要た結果、130キロ離れた阿蘇カルデラで約9万年前に起きた破局的噴火が再現されれば伊方原発は破局的な大惨事を引き起こすことになると結論づけたもので、適用が厳格すぎるという批判は本末転倒です。
 また噴火が予知できない以上「運用中に噴火が起きる根拠が示されていない」のは当然で、逆に運用中に破局的な噴火が発生しないという根拠も当然示せません。
 
 火山灰を通常のフィルターで除去できるというのも乱暴な話で、フィルター自体がすぐに目詰まりを起こし送風も換気も出来なくなります。
 
「巨大噴火によるリスクは社会通念上容認される水準」というのも不可解で、そもそも火砕流が原発を襲えばいずれ完全燃焼が起き原発内に保有されている核燃料はことごとく放出され全世界が放射能で汚染されることになります。それが社会通念上容認されないことは自明です。
 
 基準地震動が僅かに650ガルであることを含め、再稼働ありきの決定としか思えません。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
伊方原発3号機 運転停止命令取り消し 再稼働可能に 広島高裁
NHK NEWS WEB 2018年9月25日 
愛媛県にある伊方原子力発電所3号機について、広島高等裁判所は、運転停止を命じた去年12月の仮処分の決定を取り消し、運転を認めました。伊方原発3号機は去年の決定によって運転できなくなっていましたが、判断が覆ったことで、再稼働できる状態になりました。
 
愛媛県にある伊方原発3号機について、広島高等裁判所は去年12月、熊本県にある阿蘇山の巨大噴火の危険性を指摘し、今月30日までという期限つきで運転の停止を命じる仮処分の決定を出しました。
これに対し、四国電力は、決定の取り消しを求めて異議を申し立て、広島高裁の別の裁判長のもとで審理が行われてきました。
広島高裁の三木昌之裁判長は運転停止を命じた去年12月の決定を取り消し、運転を認めました。
決定の中で、裁判長は「伊方原発が運用されている期間中に阿蘇山で破局的な噴火が発生する可能性が根拠をもって示されているとは認められず、火砕流が到達する可能性が十分小さいと評価できる」という判断を示しました。
伊方原発3号機は去年の決定によって運転できなくなっていましたが、判断が覆ったことで、再稼働できる状態になり、四国電力は、速やかに準備を進める方針です。
一方、同じ伊方原発3号機をめぐり、別の住民が申し立てた仮処分については、今月28日に大分地方裁判所が判断を示すことになっています。
 
伊方3号機めぐる経緯
四国電力の伊方原子力発電所3号機は福島第一原発の事故の1か月後に定期検査のため運転を停止しました。
その後、事故を教訓とした新しい規制基準が設けられ、伊方原発3号機は3年前の平成27年に原子力規制委員会の審査に合格しました。
そして、愛媛県や地元の伊方町の同意も得て運転停止から5年余りたったおととし8月に再稼働し、去年10月に定期検査に入るまで1年余り運転を続けていました。
一方、伊方原発の運転に反対する広島県の住民などは運転停止を求める仮処分を申し立てていて、去年3月、広島地方裁判所は「住民が重大な被害を受ける具体的な危険は存在しない」として申し立てを退けました。
これに対して住民側は抗告し、去年12月、広島高等裁判所は、熊本県にある阿蘇山の噴火の危険性を指摘して、今月30日まで運転を停止するよう命じる期限つきの決定を出しました。
この決定によって、伊方原発3号機は定期検査で運転を停止した去年10月以降、再稼働できない状態が続いています。
四国電力は異議を申し立て、広島高裁の別の裁判長のもとで改めて審理が行われてきました。
 
仮処分の争点は?
伊方原発3号機の仮処分では、主に自然災害に対する安全性をめぐって争われました。
1つ目の争点は、「火山の噴火の影響」です。
伊方原発は、熊本県の阿蘇山からおよそ130キロの場所に位置しています。去年12月広島高裁は「阿蘇カルデラの噴火の可能性が十分に小さいとは判断できず、過去最大の噴火の際に伊方原発の場所に火砕流が到達した可能性も小さいとは評価できない」と指摘しました。
また、原発の運転に影響を与える火山灰の量についても「四国電力の想定は少なすぎる」として、運転の停止を命じました
これに対して四国電力は異議を申し立て、「マグマだまりの状況や性質などから巨大噴火の可能性は極めて低く、過去最大の噴火の際も火砕流は到達していない」などと主張しました。
また、「火山灰の想定は妥当だ」としたうえで、非常用発電機の吸気口に火山灰が詰まり原発が冷却できなくなる可能性については、フィルターを取り付けるなどの対策をとったと主張しました。
一方、住民側は「現在の火山学の水準では巨大噴火の可能性を否定することはできず、原発事故で住民の生命や身体に重大な被害を与える具体的な危険性がある」などと主張しました。
火山灰については「四国電力の想定は少なすぎるうえ、フィルターによる対策が有効なのか十分な実験や検証が行われていない」などと主張しました。
2つ目の争点は、「地震の想定が妥当かどうか」です。全国の原発では想定される最大規模の地震の揺れ、「基準地震動」がそれぞれ設定され、重要な設備や機器はその揺れに耐えられるよう設計することが求められています。
四国電力は、原発の北側およそ8キロにあり、四国から近畿にかけて伸びる「中央構造線断層帯」と九州の「別府ー万年山断層帯」の合わせて長さ480キロの断層が連動した場合も想定して、最大の揺れを算定しました。
その結果、「中央構造線断層帯」のうち、原発の近くにのびる長さ69キロの区間がずれ動いた場合に最も大きな揺れになるとして、基準地震動を650ガルと算定し原子力規制委員会も了承しました。
これまでの審理で四国電力は「断層が長大なものだったとしても、ずれ動く大きさは一定の範囲を超えないため、現在の想定は妥当だ」などと主張しました。
一方、住民側は「長大な断層がずれ動いた場合に一定の範囲を超えないかどうかについては不確かな要素があり、揺れの想定が妥当ではない」などと反論しました。
 
巨大噴火に関する規制委の考え方
原子力規制委員会が、東京電力福島第一原発の事故の後に策定した規定では、原発を建てられる場所の条件として「巨大噴火が影響を及ぼす可能性が十分小さいこと」をあげています。
そのうえで、実際の審査では、巨大噴火の活動間隔や地殻変動の観測データなどを総合的に評価して、巨大噴火が差し迫った状態にあるかどうかや原発の運用期間中に発生するという科学的な根拠があるかどうかを確認するとしています。
一方、現在の知見では、巨大噴火の発生時期や規模を正確に予知することは困難とされ、火山学会は、噴火予測の限界やあいまいさの理解が不可欠だと指摘しています。
原子力規制委員会の審査については、九州電力川内原子力発電所の運転差し止めを求める仮処分の申し立てを退けたおととし4月の福岡高等裁判所宮崎支部の決定でも、「噴火の時期および規模が相当前の時点で的確に予測できることを前提にしている」として、「不合理と言わざるをえない」と批判されています。
こうした中、原子力規制委員会は、ことし3月、巨大噴火の評価に関する「基本的な考え方」示しました。
この中では、巨大噴火を想定した法規制や防災対策が、原子力以外の分野では行われていないことを理由に「巨大噴火によるリスクは社会通念上容認される水準と判断できる」として、審査の進め方に問題はないという考えを示しています。
しかし、「巨大噴火によるリスクは社会通念上容認される水準」という考え方についても、長期間にわたって広範囲に被害が及ぶ原子力災害と一般防災を単純に比較しているなどとして、日本弁護士連合会が合理的ではないと批判しています。
 
遅くともことし中には再稼働か
伊方原発3号機は、去年12月、広島高等裁判所が運転停止を求める仮処分を決定したとき、国の定期検査を受けている途中でした。
このため、四国電力が3号機を再稼働させるには、運転停止中に交換した原子炉の設備などについて国の検査が残っているため、これらをクリアする必要があります。
そのうえで、プールで貯蔵している核燃料157体を数日間かけて原子炉の中に移します。
その後、徐々に温度や圧力を上昇させ、通常であれば、およそ1か月程度で原子炉を起動するということで、遅くともことし中には再稼働するとみられています。