2018年9月5日水曜日

MOX燃料は廃棄処分しかない 全体を見直すべき

 信濃毎日新聞が「MOX燃料 廃棄処分しか道はない」とする社説を出しました。
 そもそも「核燃サイクル」はスタートの初期から矛盾だらけのものでした。日本はアメリカとの協定で使用目的のないプルトニウムは所有しないとしたのにもかかわらず、プルトニウムの増殖炉「もんじゅ」を核燃サイクルの中心に据えたのがそもそもの間違いでした。
「もんじゅ」は単にプルトニウムを増殖するだけでなく、核兵器に用いられる高品質のプルトニウムが得られるので、明らかに日米協定の趣旨に反するものでした。
 
 核燃サイクルは経済的にも全く意味がなく、かつて経産省の若手官僚たちが「19兆円の請求書」でその誤りを告発しました。
 現在青森県六ケ所村で建設が進んでいる核燃料の再処理工場は、総事業費が16 兆円に上る(これまであまり公にされてきませんでした)ものだそうで、それに使用済みMOX燃料を再び使う工場を追加すれば、まさに金額も「19兆円」に一致します。若手官僚たちは、それが進みだすと金額が倍増することも大いにあり得ると当時警告しましたが、正にその誤った道に向かいつつあるわけです。亡国の事業と呼ぶべきです。
 
 その巨額の無駄を止めるためにも、まずは再処理システムの全貌を明らかにすべきです。
 そうして国民の理解が得られないものは止めるべきです。
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(社説)MOX燃料 廃棄処分しか道はない
信濃毎日新聞 2018年9月4日
 原発で使った燃料を再処理して使い続ける核燃料サイクル政策の破綻が改めて浮き彫りになった。
 再処理した燃料を一般の原発で使うプルサーマル発電で、繰り返し使うことを電力会社が断念していた。
 使った以上の燃料を生み出し「夢の原子炉」とされた高速増殖原型炉「もんじゅ」は、廃炉作業が始まっている。プルサーマルの再利用断念で核燃サイクルの意義は崩れたといっていいだろう。
 
 政府は、核燃サイクルを前提に使用済み核燃料を全量、再処理する方針を続けてきた。この方針を見直さなければならない。再処理せず、処分する方向にかじを切るときである。
 プルサーマルは、原発で使った核燃料からプルトニウムを取り出しウランと混ぜて作る混合酸化物(MOX)燃料を使う。原発を持つ電力会社10社が、使用済みMOX燃料を再び使うために備えた費用の計上を、2016年度からやめていた。
 青森県六ケ所村で建設が進んでいる核燃料の再処理工場は、総事業費が16 兆円に上る。この工場では、使用済みMOX燃料を再び使う工程はできない。新たに別の工場の建設が必要となる。技術も開発途上で、以前から困難とみられていた
 MOX燃料は元々、大量消費できる「もんじゅ」で使っていく予定だった。トラブル続きで高速炉開発のめどが立たない中、プルサーマルがつなぎの利用策として打ち出された経緯がある。
 
 プルサーマルは、東京電力福島第1原発事故後、再稼働にこぎ着けた関西電力の高浜原発などが実施している。各社は前向きとはいえない。割高で、原子炉の制御が難しく高い安全対策が求められることなどが背景にある。
 再処理で取り出されたプルトニウムは、核兵器への転用も可能だ。日本はすでに核兵器6千発分に相当する約47トンを保有しており、国際的に安全保障上の懸念が示されている。有効な削減策を打ち出すことが求められる。
 
 核燃サイクルの破綻が明らかな以上、これまでに再処理していた使用済み核燃料と、プルサーマルで出た使用済みMOX燃料は、廃棄物として処分する以外に道はない。余計なプルトニウムを生み出す六ケ所村の工場は、稼働させる意味を失っている
 処分するために必要となる費用とリスクについて、国民に十分に情報提供した上で議論を進めなければならない。