福島県立浪江高校「津島校」 震災7年半 森に埋もれるグラウンド
産経新聞 2018年9月9日
帰還困難区域にある福島県立浪江高校津島校。グラウンドが周囲の森に同化され、マツの木で覆われ始めていた=福島県浪江町(ドローンから)
分校の校庭は野生動物に踏み荒らされ、増殖したマツの木に覆い尽くされそうだ。体育館の前に捨てられていた新聞の見出しは大きく白抜きで「原発建屋が爆発」とある。
新聞の日付は東日本大震災の発生間もない平成23年3月13日。今月11日で震災から7年半になる。
東京電力福島第1原発事故で福島県浪江町は全域で避難を余儀なくされた。県立浪江高校津島校も立ち入りが規制され、震災当時のままだ。
グラウンドのサッカーゴールも高さ4メートルほどに伸びたマツの木に隠れてよく見えない。2階建て校舎の1階は厚い板で覆われ、中の様子は分からない。
同町は昨年3月に一部地域で避難指示が解除され、今年1月には町内で成人式を開催したが、津島校のある北西部は帰還困難区域内にあり、住むことはできない。
当時の校長、鈴木吉重(よしひね)さん(65)は「グラウンドでは軟式野球部や陸上部の生徒がいつも熱心に走り込んでいたのを思い出します」と振り返る。
国が定める安全な放射線量は毎時0・23マイクロシーベルト未満だが、手元の線量計は6マイクロシーベルトを示していた。原発事故直後、線量が高レベルの津島校にも最大で約1200人が避難した。情報が錯綜(さくそう)していた。
グラウンドはあと数年で森になってしまいそうだ。同校は同県二本松市の学校に間借りしていたが、避難の長期化などの理由から昨年3月末で休校となった。
取材を終え、封鎖ゲートを出ると、住人となったイノシシが侵入者を警戒するように、にらみつけていた。(写真報道局 桐山弘太)
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