2017年12月14日木曜日

伊方原発 阿蘇噴火の影響重視し運転差し止め 高裁レベル初判断

 四国電力伊方原発3号機運転差し止め仮処分の抗告審で、広島高裁(野々上友之裁判長)は13日、広島地裁の決定を覆し、運転を禁じる決定をしました。高裁原発の運転差し止めの判断をしのは初めてです。

 野々上裁判長は決定で、規制委が作成した「火山ガイド」が、火山の噴火規模が推定できない場合、過去最大の噴火を想定して評価すると定めていることを指摘し、伊方原発から約130キロ離れた阿蘇山約9万年前過去最大の噴火をしたときには火砕流が160キロ先に及んだとして、伊方原発敷地に到達した可能性が十分小さいとは評価できないと述べ、原発の立地として不適と断じました。
 この「火災条項」は、規制委自身が制定しておきながら、川内原発(熊本県)では田中委員長(当時)が噴火の予知は可能であると火山学会の定説に反することを述べて無視した経過があり、今回司法が「火山ガイド」に沿って厳格に判断を下したことは注目されます。

 また阿蘇山の噴火に伴う噴石や火山灰などの降下物についても、四電が想定した量(九重山大分県 噴火ベース 「2倍近くになる」と述べ、「住民らの生命身体に対する具体的危険が推定される」としました

 伊方3号機は今年10月から定期検査のため停止していて来年1月再稼働する予定でしたが、仮処分はただちに法的な拘束力を持つのでそれは出来ません。
 運転差し止めの期限については、広島地裁で別途審理している差し止め訴訟の判決で「仮処分決定と異なる判断をする可能性もある」として、来年930日までとしました。

 四電は「主張が認められなかったことは極めて残念で、到底承服できない。速やかに異議申し立ての手続きを行う」とのコメントを発表しました。
 原発に対する仮処分をめぐっては、福井地裁が20154月、大津地裁が163、関電高浜原発34号機の運転差し止めを決定しましたが、異議審や抗告審で取り消されています
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伊方原発 運転差し止め、高裁レベル初判断 広島高裁
毎日新聞2017年12月13日
 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを広島、愛媛両県の住民が求めた仮処分申請の即時抗告審で、広島高裁(野々上友之裁判長)は13日、申し立てを却下した今年3月の広島地裁の判断を取り消し、四電に運転差し止めを命じる決定を出した

 野々上裁判長は「阿蘇山(熊本県)の噴火で火砕流が原発敷地に到達する可能性が十分小さいと評価できない」などとし、火山災害による重大事故のリスクを指摘した。高裁レベルの差し止め判断は初めて。差し止め期限は来年9月末まで。仮処分はただちに効力が生じ、今後の司法手続きで決定が覆らない限り運転できない。
 伊方3号機は定期検査のため今年10月に停止。四電は来年2月の営業運転再開を目指していたが、差し止め決定で稼働スケジュールに影響が出ることは避けられない。四電は近く決定の取り消しを求める保全異議と、仮処分の執行停止の申し立てを広島高裁に行う方針だ。

 伊方3号機は2015年7月、原子力規制委員会が東日本大震災後に策定した新規制基準による安全審査に合格し、昨年8月に再稼働した。住民側は、四電の安全対策は不十分で、事故で住民の生命や生活に深刻な被害が起きるなどとして広島地裁に仮処分を申請。地裁は今年3月に申し立てを却下し、住民側が即時抗告していた。
 高裁の審理では、基準地震動(想定する最大の揺れ)の妥当性や火山の危険性などが争点となった。

 野々上裁判長は決定で、規制委が作成した安全審査の内規「火山ガイド」が、火山の噴火規模が推定できない場合、過去最大の噴火を想定して評価すると定めていることを指摘。その上で、伊方原発から約130キロ離れた阿蘇山について「四電の地質調査やシミュレーションでは、過去最大の約9万年前の噴火で火砕流が原発敷地の場所に到達した可能性が十分小さいとは評価できない」などと述べ、原発の立地として不適と断じた。

 さらに、阿蘇山の噴火に伴う噴石や火山灰などの降下物についても、四電が想定した九重山(大分県)噴火の「2倍近くになる」と説明。「伊方原発から見て阿蘇山が九重山より遠方に位置することを考慮しても、四電の降下物の厚さや大気中濃度の想定は過小」と判断。「住民らの生命身体に対する具体的危険が推定される」と述べた。
 一方、火山災害以外の地震対策などは、新規制基準の内容や規制委の判断、四電が設定した基準地震動などを「合理的」として容認した。

 運転差し止めの期限を巡って野々上裁判長は、広島地裁で別途審理している差し止め訴訟の判決で「仮処分決定と異なる判断をする可能性もある」などと述べ、来年9月30日までとした。
 東日本大震災後、差し止めを認めた判決・決定(異議審含む)は、関西電力高浜原発3、4号機(福井県、3号機は当時稼働中)を巡る昨年3月の大津地裁の仮処分など4例。いずれも地裁の判断だった。【東久保逸夫】

 四電は「基準地震動の合理性や火山事象への安全性の確保について、裁判所に丁寧に主張・立証を行ってきた。主張が認められなかったことは極めて残念で、到底承服できない。早期に仮処分命令を取り消していただけるよう、速やかに異議申し立ての手続きを行う」とのコメントを発表した。