もんじゅが、水や空気に触れると激しく反応する液体ナトリウムの抜き取り設備を持っていない問題について、産経新聞が原子力機構の副所長にインタビューしました。
機構は、原子炉容器の底部に差し込んであるパイプを利用して吸引(サイフォン現象)することで取り出せるという言い方をしますが、底部に液体ナトリウムが1立方メートルほど残ることも含め、今後5年の間にそのために必要な検討を行い改造も行うということで、現状のままで抜き出しが行える構造になっていないことは明らかです。
インタビューからは、そういうプラントを製造した責任を回避したい意向は明らかに感じられますが、全体としてあいまいな表現に満ちていて、実情は正確に把握できないというのが率直なところです。
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【原発最前線】
発端は毎日新聞 もんじゅ「ナトリウム抜き取り困難」
誤報? 本当? 副所長に聞いてみた
産経新聞 2017.12.19 17:00
廃炉の決定から1年、ようやく廃止措置計画が原子力規制委員会に提出された高速増殖炉原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)。その冷却材に使われているナトリウムについて「抜き取りは困難」とした報道に、運営する日本原子力研究開発機構が「誤報」と抗議している。ところが、規制委の更田(ふけた)豊志委員長は会見で「取り出しは難しい」との認識を示した。機構の真意は何か。もんじゅの竹内則彦副所長に聞いてみた。(社会部編集委員 鵜野光博)
機構は公式サイトで反論
機構の公式サイトには12月中旬現在、トップページに「一連の『もんじゅ』1次冷却系ナトリウム取り出しに関する報道について」との見出しが赤枠で掲げられ、「困難」とした毎日新聞、福井新聞の記事に対して「既存の設備および技術を活用すれば技術的に可能」と反論している。
発端は11月29日付の毎日新聞の1面トップ記事で、一部地域の見出しで「ナトリウム回収想定せず もんじゅ設計に『欠陥』」とされた(東京発行版は「もんじゅ設計 廃炉想定せず ナトリウム搬出困難」)。機構は同日午後、「誤報」とする解説文をサイトに掲載。ところが、この日は規制委員長の定例会見の日でもあり、更田氏は「1次系ナトリウムの取り出しは困難な作業だ」と表明。機構の主張は、規制委からはしごを外された格好になった。
産経新聞も12月10日付の「主張」でナトリウムの回収を「最難関の一つ」と指摘している。
扱い難しいナトリウム…「欠陥」を否定
一般の原子炉は核燃料の冷却に水を使うが、高速増殖炉では中性子を減速させないために液体ナトリウムを使っている。このうち直接核燃料に触れる部分を1次系ナトリウムと呼ぶ。ちなみに、平成7年にもんじゅで起きたナトリウム漏れ事故は、直接燃料に接していない2次系で起きている。
ナトリウムは空気や水に触れると激しく反応するため、扱いは難しい。毎日新聞の記事では「ナトリウムの抜き取りを想定しない設計になっている」とし、識者が「欠陥」と指摘。さらに「廃炉計画に具体的な抜き取り方法を記載できない見通し」などとした。
これに対し、機構はサイトで「配管破断事故が発生した場合でも燃料がナトリウムから露出しないよう、原子炉容器内のナトリウムを抜き取る設計にはしていない」と「欠陥」を否定。「原子炉容器の底部まで差し込んであるメンテナンス冷却系の入口配管を活用するなどにより、ナトリウムを抜き取ることが技術的に可能」と主張した。また、廃炉計画は分割申請が認められており、当面の課題となる核燃料取り出し工程の後のナトリウム抜き取りは、当初から別途申請する計画だったとしている。
「解決できる問題」「新しい技術必要ない」
産経新聞の取材に応じたもんじゅの竹内副所長は、抗議の真意について次のように説明した。以下は一問一答。
--ナトリウム抜き取りは「困難」ではないのか
「まず、困難という言葉に対していろんなレベルの考え方がある。私は技術者の端くれなので、困難に立ち向かい、それを克服することに誇りと喜びをもって取り組んでいる。ナトリウム抜き取りも廃炉も、われわれは立ち向かって解決できる問題だと認識している。しかし毎日の記事は、技術者が困ってギブアップしているかのように読者に受け取られるものではないかと考えている」
--ギブアップのような印象を修正したいということか
「そうだ」
--困難であることは間違いないのか
「廃止措置計画提出時に、機構の理事は報道陣に『既存の技術で対応できる』と説明した。全く新しい、見たこともない技術が必要とは思っていない。ただ、では明日からできるのかと言われれば、そうではないことは事実だ。日常のメンテナンスでナトリウムの一定量の抜き取り作業は行っており、メンテナンス冷却系の配管を使って抜き取れることは分かっているが、少しの技術開発は必要で、それをきちっとやるのが私どもの使命だ」
「抜き取り試験してる」「時間かかるだろう」
--「原子炉容器内のナトリウムを抜き取る設計にはしていない」とあるが、抜き取りについて未来の技術開発をあてにしていたのか、あえてそういう設計にしたのか。
「後者だ。設計の初期段階では、原子炉容器内のナトリウムが抜けるように設計対応しようという検討もなされた。その後、詳細設計へ進む段階で、抜き取るためのタンク設置を『抜き取る段階で設置すればいい』といった議論が行われ、抜き取りについてはトーンダウンした。ただ、メンテナンス冷却系の配管で抜き取れることは分かっていたので、それで吸い出して抜く試験も行い、抜ける確認をしている」
(機構によると、平成3年11月に約30トンのナトリウムを実際に充填(じゅうてん)した上で同配管から抜き取る「原子炉容器全ドレン試験」を実施した)
--その配管では最後まで抜き取れない部分がある
「配管の口より下の部分にある約1トンは抜き取れない。ただ、フランスの高速増殖炉実験炉スーパーフェニックスでは、横から機械的に穴を開けて出すということも行われている。フランスにできて、日本でできないことはない」
--フランスでもずいぶん時間がかかっている
「時間はかかるだろう」
「突然『廃止』と言われ困惑」「今でも夢の産業」
--廃炉に新たな技術開発が必要という点に、違和感を覚える人もいる
「不幸にして東京電力福島第1原発の事故があり、この廃炉はデブリ(溶融核燃料)があるため、かなりの研究開発と困難性が伴っている。われわれがもんじゅでやっていることとは違うが、イメージが重なっているのではないか。また、軽水炉(一般の原発)は高経年化につれて廃炉の検討と準備が進められているが、もんじゅは昨年12月まで運転を再開しようと思っていた。突然『廃止です』と言われ、『廃止計画を出せ』と言われて、技術屋としては困惑する。ただ、ナトリウム抜き取りに関しては設計当時に考えており、(廃止措置計画で示した)5年半の間にそれを具現化すればいいんだな、というぐらいのイメージだった」
--原子力はかつては「夢の産業」だったが、今はマイナスイメージも強くなっている
「私は今でも夢の産業のポテンシャル(潜在力)を持っていると思っている。再生可能エネルギーには、どうしても解決できない安定供給の問題がある。再生エネルギーを、原子力などのベースロード電源(季節や昼夜を問わずに供給できる電源)と適切に組み合わせて未来のエネルギーを作り上げるのが、いろいろあった後の、新しいエネルギーの夢なのではないか」
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(後 略)