大飯1・2号機、廃炉決定 大型原発で国内初
東京新聞 2017年12月22日
関西電力は二十二日午前、臨時取締役会を開き、運転開始から四十年を迎える大飯(おおい)原発1、2号機(福井県おおい町、いずれも出力一一七・五万キロワット)を運転延長させず、廃炉にすることを正式決定した。岩根茂樹社長は福井県庁で西川一誠知事と面談し「原子炉の格納容器が狭く、安全や品質確保を考え、廃止にする判断をした」と説明。出力百万キロワットを超える大型原発の廃炉は、東京電力福島第一原発(福島県)を除くと全国初となる。
岩根社長は面談後、記者団に「あくまで工事後の作業安全や品質の問題で決定した。経済性の試算はしていない」と述べた。
一九七九(昭和五十四)年に運転を開始した大飯1、2号機は、事故時に格納容器内の圧力を下げる対策として、千二百五十トンもの巨大な氷を備えた「アイスコンデンサ方式」と呼ばれる特殊な構造を国内で唯一採用している。新規制基準に適合するには、関電が既に運転延長の認可を受けた美浜原発3号機(福井県美浜町)などとは異なる対策が必要になると原子力規制委員会から指摘されていた。
関電の計画では、既に再稼働した高浜3、4号機(同県高浜町)を含め、規制委の審査を通過した七基の対策工事に計八千三百億円かかる。関電は大飯1、2号機も「技術面、安全面を検討し、できれば申請したい」と繰り返してきたが、七基よりも対策費が多額になることは確実で、最大六十年まで運転延長しても採算が合わないとの判断も働いたとみられる。関電は1、2号機の解体費を千百六十億円と見込んでいる。
大飯原発では3、4号機が来年三月以降に順次再稼働を予定しているが、二基の廃炉は今後の原発政策に影響を与えそうだ。
二〇一三年に施行された新規制基準下で電力会社が廃炉を決めた原発は、大飯1、2号機を含めると計八基。全国最多の十五基を抱えていた福井県内の原発は八基に減る。
<大飯原発1、2号機> 関西電力が福井県おおい町に所有する加圧水型軽水炉(PWR)の原発。ともに1979年に営業運転を開始し、出力は各117万5000キロワット。
◆老朽時代…問われるエネ策
大飯原発1、2号機の廃炉が正式に決まった。政府は二〇一四年に策定されたエネルギー基本計画に基づき、三〇年時点で電力の20~22%を原発で賄う方針だが、電力会社が廃炉に踏み切る原発が増えれば、影響は避けられない。
原発の四十年廃炉ルールは、福島第一原発事故後の民主党政権時代にできた。一回に限り二十年間延長でき、既に関電の美浜3号機と高浜1、2号機(いずれも福井県)は延長が認められ、日本原子力発電(原電)も十一月に東海第二原発(茨城県)の延長を申請している。
政府の目標達成のために稼働が必要とされる原発は三十基程度。既に稼働済みも含め規制委に再稼働を申請した原発は二十六基(建設中の一基を含む)あるが、全てが稼働しても足りない上、三〇年時点では中部電力浜岡3号機(静岡県)や現在稼働中の関電高浜3、4号機など半数近い十二基が四十年を超える。未申請の原発十四基でも、九州電力玄海2号機(佐賀県)や四国電力伊方2号機(愛媛県)はこの数年のうちに四十年に達する。
大飯1、2号機の廃炉は新規制基準を満たすための費用が巨額になることなどが理由との見方があり、今後、同様の判断が相次ぐ可能性もある。
経済産業省は現行計画の見直しを進め、並行して五〇年時点をにらんだエネルギー政策を検討する有識者懇談会でも議論を進めている。新増設や建て替えが浮上する可能性もあり、エネルギー政策は原発に依存し続けるか否かの重要な局面を迎えている。NPO法人原子力資料情報室の伴英幸共同代表は「未申請の原発の多くが廃炉になることを予感させる。新規建設も世論や自治体が受け入れない。(大飯1、2号機の廃炉が)再生可能エネルギーに力を入れる方向になれば」と話した。 (中崎裕)