2017年12月28日木曜日

規制委 柏崎刈羽原発6・7号機の再稼働申請に 正式合格の決定

 原子力規制委は27日の定例会合で、柏崎刈羽原発67号機が、原発の新規制基準に「適合」するとした審査書を正式決定しました。
 10月から1か月かけて行った意見募集(パブリックコメント)では870件が集まり、福島事故を起こした東電に「原発の運転資格はない」とする意見が多かったものの、規制委は「福島事故の収束をやり遂げ、柏崎刈羽を安全第一で運営する」との内容を保安規定に盛り込ませることで、東電に運転資格ありと判断し、字句を修正しただけで審査を通しました。
 また、柏崎刈羽で新たな事故が起きても、東電には賠償能力がない点を問題視する意見もありましたが、規制委は直接的には答えず、新基準向けの工事費を工面できることや、「原子力損害賠償制度がある」と一般論を書いただけで、東電全体の経営状況やほとんど備えがない賠償制度の現状には触れませんでした。

 肝心の住民避難については、避難用バスの運転手が確保できていませんし、そもそも法整備が追いついていないので、運転手がバスの運行を止めて現場に行くことができない状況だということです。

 柏崎刈羽原発6・7号機の正式合格に当たり、日刊ゲンダイは「事故後対応は丸投げ 柏崎刈羽原発 基準適合の無責任」とする記事を、東京新聞は「柏崎刈羽 新基準適合は『ない』づくし」とする記事を出しました。
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事故後対応は丸投げ 柏崎刈羽原発「基準適合」の無責任
日刊ゲンダイ 2017年12月28日
 拙速ではないか――。27日、原子力規制委員会が、東京電力が再稼働を目指す新潟県の柏崎刈羽原子力発電所6、7号機について、新規制基準「適合」の審査書を決定した。福島第1原発と同型の「沸騰水型」原子炉の「合格」は原発事故後初めてだ。
 規制委の更田豊志委員長は、27日の定例会見で「(決定は)感情論に流されず技術的に判断した結果」と言ったが、再稼働となると話は別だ。

 今年10月から約1カ月にわたって募集された東電の適格性審査結果に対する「パブリックコメント」(870件)には「1F(福島第1原発) 事故を起こした東電に適格性ナシ」といった意見が並び、県は独自の検証委員会を立ち上げて原発の安全性を調査している。

 柏崎刈羽原発を取材しているフリージャーナリストの横田一氏がこう言う
「泉田裕彦前新潟県知事(現・衆院議員)の時代から、地域防災・避難計画のずさんさが指摘されていました。原発周辺には住民が約44万人いるにもかかわらず、万が一の時の避難用バスの運転手すら確保できていない。そもそも、法整備が追いついていないので、運転手がバスの運行を止めて現場に行くことができません

 規制委は原発プラントの安全性を審査しただけで、事故後の対応については国や自治体に丸投げというワケだ。柏崎刈羽原発差し止め訴訟の弁護団長・和田光弘弁護士はこう言う。
「規制委がちゃんと審査したのか疑問です。地元研究会の資料によると5号機から7号機の下には活断層があるし、基準地震動について(規制委は)東電が提出したデータ以外に、独自の調査をしていません。東電側が出した審査書類が基準を超えていれば『合格』というわけです」

 更田委員長は「東電には(福島原発事故)当時の緊張感を忘れてもらいたくない」と、どこか他人事の様子。事故処理すら終わってないのに、再稼働なんて無理だ。


柏崎刈羽 新基準「適合」は「ない」づくし
こちら原発取材班 東京新聞 2017年12月28日
 原子力規制委員会が、東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)は対策工事を講じれば新規制基準に「適合」すると正式に決定した。東電は福島第一原発事故を起こした当事者。その事故収束もままならない中、もしも柏崎刈羽で新たな事故が起きれば、事故収束の要員確保、新たな賠償とも対応できる力はない。再稼働に不可欠の地元同意を得られる見通しもない。 (小川慎一、宮尾幹成)



収束要員に余裕「ない」 賠償の余力「ない」 地元の理解「ない」
 福島第一原発では、いまだ事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)の状況はよく分かっていない。
廃炉作業は世界が未経験の難作業となるのは必至。担い手である技術者や作業員は不可欠の存在。もし柏崎刈羽で事故が起きれば、ただでさえ限られた担い手の確保はさらに困難となる。
 資金面からみても、東電の原発運転資格には疑問がある。福島事故で巨額の負債を抱え、東電は実質的には破綻している。新たに柏崎刈羽で事故が起きれば、新たな負担に耐えられる余力は到底ない。原発事故の保険は1200億円あるが、現実の事故被害は兆円単位。福島事故は21兆5000億円(政府試算)にのぼる。
 再稼働には、地元の同意が必要だが、そんな状況にはない。東電は2014年11月に原子力部門のトップだった姉川尚史(たかふみ)常務(当時)が国会で、「(柏崎刈羽の)30キロ圏内の自治体の理解がなければ、再稼働の条件が十分でない」と明言した。
 本紙は30キロ圏の9市町村に取材。どの自治体も、新潟県が独自に進めている①事故原因②健康被害③避難-の三つの検証を見守ると答えた。県の検証はまだ2、3年かかる見通し。規制委が新基準「適合」を正式決定した後も、新潟県の米山隆一知事は「検証が終わらない限り、再稼働の議論はしない」と明言している。