2017年12月21日木曜日

産経が伊方原発「差し止め」決定に関する各社社説を検証

 産経新聞が、広島高裁伊方原発3号機の運転差し止めを決定したことについての、新聞各社の社説を比較検討する記事を載せました。

 対象とした社説は下記の通りです。
 【産経】・阿蘇の大噴火が理由とは
 【朝日】・火山国への根源的問い
 【毎日】・噴火リスクへの重い警告
 【読売】・再び顕在化した仮処分の弊害
 【日経】・原発の火山対策への警鐘だ
 【東京】・火山国の怖さを説いた
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【社説検証】
伊方原発「差し止め」 広島高裁「阿蘇山の巨大噴火」が理由
産経「原発以前に九州が灰燼に 説得力に乏しい判決」 朝日「周辺に火山多く、影響大」 東京「何と明快な論法」と評価
産経新聞 2017年12月20日
 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求める仮処分の即時抗告審で広島高裁は、訴えを退けた3月の広島地裁決定を覆し、差し止めを命じた。3号機は一昨年7月、原子力規制委員会による安全審査に合格している。
 高裁は伊方原発から130キロ離れた阿蘇山の巨大噴火を挙げ、9万年前の破局的噴火の規模なら火砕流到達の可能性は否定できないとした。

 「あまりに極端だ。そうした噴火が起きれば、原発以前に九州全体が灰燼(かいじん)に帰するではないか」。驚きとも呆(あき)れともつかない評言で今回の判断を批判したのが産経である。
 高裁は、破局的噴火の発生確率が「日本の火山全体で1万年に1回程度」であることや、その種のリスクは無視し得るとする社会通念が定着していることを認めている。その一方で、規制委が策定した内規(火山影響評価ガイド)に破局的噴火の火砕流が含まれていることを差し止めの根拠としたのである。
 「強引さと言い訳めいた論理展開が目立ち、説得力の乏しい決定といえる」。こう断じた産経は、広島地裁で審理中の本訴訟の行方を眺めて運転停止を「来年9月30日まで」と限定したことについても「自信のなさ」と言い切った。

 厳しい見方は読売も同様である。「原発に限らず、破局的噴火を前提とした防災対策は存在しない。殊更にこれを問題視した高裁の見識を疑わざるを得ない」

 これらに対し、火山の「噴火リスク」をことのほか重大に捉えたのが、「脱原発」を基本姿勢とする朝日、毎日、東京の3紙である。朝日は「周辺に火山がある原発は多く、影響は大きい」とし、毎日は「世界有数の火山国である日本は、原発と共存することができるのか。そんな根本的な問いかけが、司法からなされたと言えよう」として、ともに国や規制委、電力会社に高裁の判断を重く受け止めるよう迫った。東京も「何と明快な論法であろうか」と高裁を高く評価する。
 3紙はそろって、現在稼働中の九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)にも言及し、毎日は広島高裁の決定に従えばこれらも「停止の対象となるだろう」と予測した

 日経は「仮処分で原発が即座に止まれば電力供給に及ぼす影響は大きい」と原発の稼働に支持を見せるものの、「四国電や規制委は、高裁が噴火対策に憂慮を示した点は重く受けとめるべきだ」とも訴えた。
 運転差し止めを求める仮処分の申請は複数の地裁でも相次ぎ、結果は分かれているが、抗告審での高裁判断は耐震強化などの対策を施した原発の安全性を認めたものとなっていた。

 産経は、今回の広島高裁の決定はこうした大勢に水を差す対応だと非難するとともに、「規制委の安全審査に合格した原発への仮処分自体、そもそも不適切ではないか」として、原発の運転の可否を仮処分の判断に委ねることに疑義を呈した。

 読売も「証拠調べを十分に行わずに短期間で判断する仮処分は、効力も即座に生じる。高度な知見を要する原発訴訟への適用には慎重であるべきだ、とかねて指摘されてきた。その弊害が改めて顕在化した」と仮処分の問題点を指摘する。

「福島第一原発の事故の教訓は、めったにないとして対策をとらなければ、取り返しのつかない被害を招くというものだった」と朝日は言う。福島の事故の教訓はしっかりと銘じなければならないが、際限なき「ゼロリスク」の追求はむしろ、真の安全から遠ざかるのではないか。(清湖口敏)

 ■伊方原発の「差し止め」決定を受けた社説
 【産経】・阿蘇の大噴火が理由とは
 【朝日】・火山国への根源的問い
 【毎日】・噴火リスクへの重い警告
 【読売】・再び顕在化した仮処分の弊害
 【日経】・原発の火山対策への警鐘だ
 【東京】・火山国の怖さを説いた
 〈注〉朝日は15日付、他は14日付