2017年12月7日木曜日

中国は再生エネ発電にシフト 福島原発事故を教訓に

 JCASTのテレビウォッチが、NHKの
を紹介しました。

   中国の上海に本社のある太陽光パネルメーカーは去年出荷量が世界一になりました。
 太陽光発電はすでに火力や原子力よりも低い発電コストを実現しています。再生可能エネルギー発電(以下「再生エネ発電」と略称)の低コスト化は全世界的な傾向で、日本のLNG火力発電のコストは1キロワット時14円とされているのに対してアラブ首長国連合(UAEの太陽光発電は3円で、スウェーデン風力発電は6円です。

  中国は2015年に、2020年までに原発30基(計3,000万kwh)を建設する計画(第13次5か年計画)を立てましたが、実際の原発の建設認可件数は、2016年も2017年も0件で、高くて危険な原発から安くて安全な再生エネ発電へのシフトは今後も加速すると見られています。
  2014年に発表された「中国内陸部で福島原発のような事故が起これば、国家破綻を起こしかねない」とする論文で、政府にも「原発の安全性に限界がある言う認識が浸透したとされています。

  それに対して日本の再生エネ発電は世界の動きとは正反対で、一時3300社あった企業が倒産を続け、今年9月には1800社まで減りました。
 理由はコスト高いことと電力会社が再生エネ発電に冷淡なことで、ある企業は、太陽光発電事業のために3年前に土地を購入したものの、地元の電力会社から突然「送電線の増設が必要」31300万円の費用62か月の工期がかかると言われました。また2016年風力発電所の工事に着工した会社は、東北電力から「管内で送電線の空き容量がない」と言われました。
 送電線の「空き容量がないと言われれば、外部の業者は引き下がるしかありません。しかし京都大学の安田陽教授が東北4県の送電線利用率を調べたところ、実際には2~18%しか使われておらず、80%以上が空容量であったということです。


 電力会社が虚偽の理由を唱えてまで新規業者の発電事業参入を阻止しようとする理由は、一にかかって原発再稼働の余地を最大限残すためです。
 番組ではそこまでは言いませんが 諸悪の根源は「原子力ムラ」で、そうした利権集団を抱えている日本だけが世界の趨勢に全く逆行していることがその証です。

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日本の原発事故に学んだ中国が再生エネに走る
テレビウォッチ JCAST 2017年12月5日
  中国が今、再生可能エネルギーに電力の舵を切っている。全土で太陽光パネル設置を進め、日本へも、行き詰った自然エネルギー企業を買収してモーレツな勢いで進出する。これは何を意味するのか。重大な問題提起が、そこにあった。
   今年(2017年)10月の共産党大会で習近平主席は「エネルギーで革命を起こす」と宣言した。中国は2050年までに全電力の80%を再生可能な自然エネルギーにする目標を掲げた。

   上海に本社のある太陽光パネルメーカーは去年、出荷量が世界一になった。今は独自の発電にも乗り出し、中国内に発電施設が300か所以上ある。売りは高技術と低コスト。火力や原子力よりも低い価格を、すでに実現した。今後は、この発電インフラを世界に輸出する考えだ。アルゼンチンやメキシコからも引き合いがきているという。
   ベンチャー企業も急成長している。10年前に20人でスタートした風力発電会社が今では中国の風力業界トップ、30か国以上と取引がある。社長は「設備を設置5年後に解体し、以後は2年ごとに解体して調べるなどアフターサービスも充実させている」と自信をのぞかせる。
 
   中国は、これまで発電の柱だった石炭火力には大気汚染や健康問題で、原子力には日本の福島原発事故で、ともに疑問符を持ち始めた。「中国内陸部で福島原発のような事故が起これば、国家破綻を起こしかねない」とする論文が2014年に発表された。研究者の一人は「原発の安全性に限界があると政府が気づいたのです」という。
   その中国政府は2020年までに原発30基という目標を掲げていたが、その通りには進んでいない。それどころか、再生可能エネルギーへの流れがはっきり加速し、「再生エネルギーが国家の最優先課題」とまでいう専門家もいる。
   長岡技術科学大学の李志東教授は「中国の再生可能エネルギーはもっとのびる。競争力が急速に高まり、輸出できるまでになった。ビジネスとして成長しています」「原発よりもいい電源として認識し始めた」と話す。
   武田真一キャスター「原発より再生可能エネルギーを優先させ、原発をつくらない分を太陽光でまかなえると確信しているわけですね」
 
   再生可能エネルギーの発電コストは、中国以外でも現実に安い。日本のLNG火力発電が1キロワット時14円とされるのに対して、スウェーデンでは6円の風力発電会社が登場し、UAEの太陽光発電は3円だ。再生可能エネルギーが「高くつく」というのは、すでにありもしないウソか誤解でしかない
   名古屋大学大学院の高村ゆかり教授は「こんなに下がるとは思わなかった。世界で新設される発電施設の2つに1つが再生可能エネルギーになる。政策で無理にそうするよりも、安いので市場が受け入れる」と解説する。

 日本では電力会社の壁に再生エネ企業が続々倒産に
   日本の再生可能エネルギーはどうなっているのか。
   世界とはなんとも正反対の状態だ。
   一時3300社あった企業が倒産を続け、今年9月には1800社まで減った。そこを狙って中国企業が「日本買い」に走ろうとしている。資金的に行き詰った事業が買い取られるケースが続出中だ。

   問題は高いコストと電力会社の対応だろう。たとえば、太陽光発電のために3年前に土地を購入しながら建設を中断した企業。地元の電力会社から突然「送電線の増設が必要」と、3億1300万円の費用負担を求められたためだ。しかも、6年2か月の工期がかかる。社長は「重要な事業だと思うが、どうにも継続できない」という。
   きちんとそこにあるインフラが日本では自由に使えない。新しい風力発電所の工事に2016年着工した会社は、東北電力に「管内で送電線の空き容量がない」といわれた。発電しても電気を送れないのだから、「稼働をストップしろと言われたのと同じ」だと関係者を嘆かせる。

   日本の電力会社が再生可能エネルギーに対してしばしば突きつける「空き容量ゼロ」は本当なのか。
   京都大学の安田陽教授が東北4県の送電線利用率を調べたところ、2~18%しか使われていなかった。電力会社は管内の火力、水力、原子力発電所がフル稼働した場合を想定して計算する。原発のほとんどが稼働していないのに、稼働したものとして計算に入れている。再生可能エネルギーが日本で広がらないわけだ。
   こうした再生可能エネルギーを取り囲む「壁」は、中国企業にとっても高いはずだが、固定価格買い取り制度を利用することを見込み、日本の安定した経済状況にも引きつけられるらしい。李教授は「日本のビジネスは魅力的で、日本で成功すれば世界で高いブランド力が得られる」と見る。

   高村教授は、対策として、まずは今ある送電線を最大限うまく使うことを強調する。「公正、中立、透明性の高い形で使われる必要があります。そうすれば発電コストを下げる大きなドライバーになります」と、改善をうながす。発送電分離という考え方もいつの間にか消されてしまった。やればできるのに、やらそうとしない、信じられない状態に日本はある。
   電力はすべての産業で力の源になる。中国が再生可能エネルギーの拡大によって安い電力を手に入れるなら、それは企業競争力が高まるということだ。
   武田キャスターは「海外の潮流も考えて再生可能エネルギーと向き合っていくべきだ」とまとめたが、再生可能エネルギーに席を譲ろうとしない原発の存在は、福島の人々ばかりか、日本企業全体の足を引っ張ろうとしているといっても過言ではない。NHKが良い番組を作りながら最後のところで電力会社や原発関係者に遠慮・忖度(そんたく)して言えないのなら、ここで言おう。原子力にこだわっていると、日本経済が滅びかねない。