現行では稼働40年を迎えた原発は最大20年延長できますが、その審査では原子炉など重要施設の劣化具合の確認や耐用年数の見極めが難しく、審査期限間近まで時間がかかっているので、原子力規制委は、長期間稼働後廃炉となった原子力発電所を用い、主要部材の劣化具合を調べる研究を始めるということです。
それは当然必要なことですが、それではこれまで運転延長が認められたのはどのような調査を行って、どんな根拠で更に20年間の運転延長が認められたのでしょうか。
専門的な分野なので新聞等で一般に公表しにくのかも知れませんが、金属材料学の権威によって十分に検討されたのかも伝えられていません。
以前に、井野博満・東大名誉教授(金属材料物性)が、玄海1号機の原子炉のテストピースの「脆性遷移温度」の公表データから、原子炉本体が中性子照射を受けて劣化して「脆性破壊」を起こす危険があると指摘し、現実に玄海1号機は廃炉になりました。
そういうことからすれば40年までは無条件に安全ということ自体も無根拠です。
むしろ冒頭に記述された研究が済むまで、すべての運転延長は中止(再稼働した原発は停止)すべきです。
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規制委、廃炉原発で部材劣化を研究 延長審査を効率化
日経新聞 2017年12月3日
原子力規制委員会は長期間稼働して廃炉となった原子力発電所を用い、主要部材の劣化具合を調べる研究を始める。稼働40年を迎えた原発は最大20年延長できるが、その審査では原子炉や配管などの劣化状況の確認や耐用年数の見極めに時間がかかっている。廃炉作業で取り出した部材を調べることで、増加が見込まれる老朽原発の延長審査の効率化に役立てる。
東京電力福島第1原発の事故後、原発の運転期間は原則40年になった。規制委が認めれば最大20年延長できる。既に関西電力高浜1、2号機(福井県)や美浜3号機(同)が延長審査を通過した。ただ重要施設の劣化具合の確認や耐用年数の見極めが難しく、審査期限間近まで時間がかかった。
規制委は審査を滞りなく進めるためには、電力会社の提出資料だけでなく実際に収集したデータと比較しながら劣化を議論する必要があると判断した。電気事業連合会に協力を要請している。
廃炉作業が進む関電美浜2号機(福井県)や中部電力浜岡1、2号機(静岡県)などを活用したい考え。原子炉容器や配管、コンクリート構造物などの提供を求める。日本原子力研究開発機構や大学とも連携する方針だ。
廃炉が決まった原発を除く全国42基のうち、半数近くが運転開始から30年以上たっている。