30日付けの当ブログで紹介した毎日新聞の原発30キロ圏内の自治体を対象としたアンケート結果
について、琉球新報が詳細に分析して紹介しています。
以下に転載します。
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リスク同じ、再稼働に関与要求
琉球新報 2017年12月30日
原発30キロ圏内の自治体を対象とした毎日新聞のアンケート結果からは、事故時のリスクを背負わされているにもかかわらず、立地自治体ほどの権限がないという周辺自治体の不公平感が浮かび上がった。東京電力福島第1原発事故後、自治体が事故時の通報義務などを定めた安全協定を電力各社と結ぶ動きが広がってきているが、原発の命運を握る「再稼働の同意権」は、周辺自治体にとって依然、高いハードルだ。
福島第1原発事故後、原子力規制委員会の審査をクリアして再稼働した原発は5基ある。これらはすべて、立地する市町と県の同意で稼働した。
最初に再稼働した九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)を巡っては当初、周辺のいちき串木野市などから事前の同意権を求める声が上がったが、九電は取り合わなかった。
今回のアンケートで、30キロ圏内の周辺自治体には、原発稼働に慎重なところが少なくないことが明らかになった。
再稼働に対する同意権について「必要」か「一部必要」と回答した60の周辺自治体のうち、再稼働に「賛成」または「条件付き賛成」と答えた自治体が9ある一方、16自治体が「反対」と回答した。
美浜原発(福井県美浜町)など関西電力3原発の30キロ圏に入る滋賀県は「県民に原発に対する不安感が根強く残る現状において、容認できる環境にない」▽東海地震の想定震源域にある中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)に近い同県島田市は「地震活動が活発な中、災害時に原発が安全と言い切れない」−−など、事故を懸念する意見が多い。
また、残る35自治体は再稼働への賛否を明確にしなかったが、この中にも慎重な意見が目立つ。静岡県掛川市は「将来にわたり安全・安心が確保され、市民の理解が得られなければ再稼働できない」と答えた。30キロ圏内の住民が96万人と国内の原発で最多となる日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)について、同県那珂市は「96万人の避難は現実的に不可能。住民の安全安心を最優先に総合的に判断する」とした。
一方、運転開始から40年を超える「老朽原発」の運転延長の賛否も、再稼働と同じ構図だった。
原発の運転期間は原子炉等規制法で原則40年間と定められているが、規制委が認めれば一度だけ最長20年の延長ができる。こうした老朽原発の活用を「問題ない」と回答したのは5自治体のみで、全て立地自治体だった。23自治体が「問題がある」とし、このうち21が周辺自治体だった。「(40年という)原則を守るべきだ」(静岡県)、「安易に賛成できない」(新潟県柏崎市)など一部の立地自治体からも疑問の声が上がった。【鳥井真平】
◇「同意権」締結は困難
福島第1原発事故の影響が立地自治体にとどまらず広範囲に及んだのを受け、立地以外の周辺自治体が電力会社に対し、再稼働などの重要な決定の同意権を含む安全協定の締結を求める動きが相次いでいる。しかし、原子力政策を担う経済産業省の幹部は「立地自治体以外に、同意権を新たに認めることはまずない。再稼働のハードルが確実に上がるから」と断言する。
来年11月に運転開始から40年を迎える東海第2原発を巡っては、現在も電力会社と周辺自治体の水面下の協議が続く。原電は運転延長の申請期限が迫った11月、茨城県と東海村だけに認めている同意権を水戸市や日立市など周辺5市にも「実質的」に広げるとする新たな安全協定案を東海村と5市に内々に示した。
しかし、毎日新聞が入手した新協定案では「再稼働及び運転延長しようとする際の事前了解に関する事項は規定されていない」と明記した上で、「意見の提起や回答の要求などを通じた事前協議により実質的な事前了解が担保される」と、同意権の有無はあいまいな書きぶりになっていた。県、東海村と現在結んでいる協定で新増設や再稼働の「事前に了解を得る」と明記しているのと対照的だ。
九電玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)を巡っては、30キロ圏の同県伊万里市が立地自治体並みの同意権を求めた。九電側と45回もの交渉を重ね、16年2月に結んだ協定では、増設計画に意見を言えたり、県の調査に同行できたりする権限が認められたが、再稼働の同意権の明記は見送られた。伊万里市は今回のアンケートに「避難計画を義務付けるなら、地元同意手続きで蚊帳の外に置くべきではない」と不満を表明した。
周辺自治体間でも権限に格差があるケースもある。京都府伊根町は、運転中の高浜原発(福井県高浜町)の30キロ圏にある府内7市町の中で唯一、非常時に直接連絡することなどを定めた協定を結べていない。
関電は福井県内で、原発の立地市町との間に一つ自治体をはさむ位置関係にある「隣々接」までは直接連絡の協定を結んでいる。だが、伊根町のように高浜町との間に舞鶴、宮津両市(いずれも京都府)が入る「隣々々接」は前例がなく、協定の対象外とされた。
格差を是正しようと、京都府が伊根町を含む7市町とともに関電側に「隣々接並み」の対応を要求。協定こそ実現しなかったものの、直接連絡の内諾は得た。京都府原子力防災課の担当者は「名よりも実を取ることを優先した」と話した。【大久保昂、玉腰美那子、岡田英】