2017年12月1日金曜日

「もんじゅ」に関する毎日新聞の記事に 機構がクレーム

 日本原子力研究開発機構が、11月29日付毎日新聞の記事「もんじゅ 設計、廃炉想定せず ナトリウム搬出困難」に対して、誤報であると抗議する文書を発表しました。


 抗議文は「ナトリウムの取出しは技術的に可能であるにも関わらず、あたかも原子炉容器からナトリウムを抜き出すことが極めて困難であり、かつ、あらかじめ設計上の配慮を怠ったかのような印象を読者に与えようとするもの、「当機構としては甚だ遺憾であるとしています

 しかし添付された「記事解説」を読むと抜き出しの機構に関しては
「燃料がナトリウムから露出することが無いよう原子炉容器内のナトリウムを抜き取る設計にはしていない。原子炉容器内のナトリウムの抜き取りについては、今後詳細に検討して決定していく
となっています。
 
 要するに、現行はナトリウムを抜き出せる構造になっていないが、原子炉容器の底部まで差し込んであるメンテナンス冷却系の入口配管を活用する(吸引する)ことで抜き出せる可能性があるので、「今後詳細に検討して決定していく」というものです。

 ナトリウムの抜き出しは正常運転中には不要であっても、廃炉に当たっては必要不可欠な工程です。
 したがってその時には安全に抜き出せるように設計・制作されているべきであったのにそうなっておらず、ナトリウムの性状から見て装置の現地改造などは不可能な中で「具体策は今後検討する」というのでは、やはり設計ミスのそしりは免れないのではないでしょうか。
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平成29年11月29日付毎日新聞における「もんじ」に関する報道について
 平成29年11月29日
国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構

 本日(29日)付け毎日新聞に、「ナトリウム回収想定せず もんじゅ設計に「欠陥」」、「もんじ設計廃炉想定せず ナトリウム搬出困難」を標題とする記事が掲載されました。

 これらについては、技術的に可能であるにも関わらず、あたかも原子炉容器からナトリウムを抜き出すことが極めて困難であり、かつ、あらかじめ設計上の配慮を怠ったかのような印象を読者に与えようとするものであり、更には事実関係を十分に取材せずに掲載されたものであることから、当機構としては甚だ遺憾であります。

 今後、毎日新聞に対しては、このようなことが起こらないように、強<抗議するとともに善処を求めてまいります。

 本件に関する事実関係の詳細は、以下の「記事解説」をご覧下さい。

 記事解説URL


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記事解説
平成29年11月29日
日本原子力研究開発機構

件名:「ナトリウム回収想定せず もんじゅ設計に「欠陥」廃炉念頭なく」
平成29年11月29日(水)毎日新聞 朝刊(東京・大阪)1面

記事概要

○廃炉が決まっている高速増殖原型炉「もんじゅ」について、原子炉容器内を満たしている液体ナトリウムの抜き取りを想定していない設計になっていると日本原子力研究開発機構が明らかにした。放射能を帯びたナトリウムの抜き取りは廃炉初期段階の重要課題。
○同機構が近く原子力規制委員会に申請する廃炉計画には具体的な抜き取り方法を記載できない見通し。
○1次冷却系のナトリウム約760トンのうち、原子炉容器内にある数百トンは抜き取れない構造だという。
○原子力機構幹部は取材に対し、「設計当時は完成を急ぐのが最優先で、廃炉のことは念頭になかった。」
○炉内のナトリウムは放射能を帯びているため、人が近づいて作業することは難しい。

事実関係 概ね事実、一部事実誤認、誤報、その他

○「もんじゅ」における廃止措置の初期段階は燃料を炉心から取り出すことを最優先に行うことであり、原子力規制庁からもこれを最優先に行うことを要求されている。原子炉容器内のナトリウムは燃料取り出しが終了するまでは、原子炉容器から抜き取ることは行わない。
○「もんじゅ」における廃止措置の初期段階は燃料を炉心から取り出すことを最優先に行うことであり、原子力規制庁からもこれを最優先に行うことを要求されており、廃止措置計画の認可申請においても分割して申請することを許可されている。このため現在準備している廃止措置計画申請書は、先ず燃料取出し作業についての認可申請を行う計画である。燃料取り出し後に実施する原子炉容器内のナトリウム抜き取りについては、別途変更認可申請を行う計画である。
○運転段階においては、原子炉容器内にある燃料を冷却するために、万一の配管が破断するような事故が発生した場合においても、燃料がナトリウムから露出することが無いよう原子炉容器内のナトリウムを抜き取る設計にはしていない原子炉容器内のナトリウムの抜き取りについては、今後詳細に検討して決定していくが、原子炉容器の底部まで差し込んであるメンテナンス冷却系の入口配管を活用するなどにより抜き取ることが技術的に可能と考えている。その上で原子炉容器の最底部に残留するナトリウム(約1㎥)については、更なる抜き取り方法を検討するが、技術的に十分可能なものである。
○「もんじゅ」の1次系のナトリウムが放射化されていることは事実であるが、運転を停止してから、長期間経っていることから、1次系ナトリウムの放射能レベルは16Bq/g(原子炉容器室壁表面の線量率に概算すると約0.25μSv/h)(2014年4月時点)と低いレベルであり、人が近づけないレベルではない。

基本的な考え方

○平成28年12月21日「高速増殖原型炉もんじゅの取扱いに関する政府方針の決定について」により、廃止措置に移行することが決定した。
○文部科学省より平成29年6月13日「「もんじゅ」の廃止措置に関する基本方針の決定」を受け、同日、原子力機構より「「もんじゅ」の廃止措置に関する基本的な計画」を文部科学大臣に提出した。
○原子力機構としては、「基本的な計画」に基づき、政府一体の指導・監督の下、国内外の専門家による第三者評価を受けながら、立地地域並びに国民の理解を得つつ、安全確保を最優先に、我が国で最初のナトリウム冷却高速炉の廃止措置に着実に取り組む。

【補足】ナトリウム炉の特徴

①沸点が高いので、軽水炉のように高圧にする必要はない。そのため、万一、冷却材が漏えいしても減圧沸騰することはない。(緊急冷却装置が必要ない)

②沸点と伝熱性能が高く、原子炉出入口温度差が大きく取れるので、自然循環による崩壊熱除去が可能。

③配管等との共存性がよいため、腐食の心配がない。

④比重が軽く、水と同じくらいであるため、循環ポンプ等は従来技術を活用できる。

⑤中性子を減速しないため、高速中性子を利用でき、核分裂で発生する中性子数が多いので、プルトニウムを効率よく増殖できる。

⑥自然界に豊富にあり、安価。
以上