10月に検査データの改ざん問題が発覚した神戸製鋼所は、西日本の電力会社が採用する加圧水型軽水炉(PWR)の原子炉格納容器をはじめ、全国の原発の主要設備に多くの部材を納入しているため、原発の再稼働に及ぼす影響は大きいということです。
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神鋼ショックが原発にも、大飯・玄海再稼働延期の裏事情
堀内 亮 週刊ダイヤモンド 2017年12月12日
編集部
ついに、電力業界にも“神鋼ショック”の波が押し寄せた──。関西電力大飯原子力発電所3、4号機(福井県)と九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県)の再稼働が、延期されることになった。
かねて、10月8日に発覚した神戸製鋼所による検査データの改ざんを受け、原発を保有する電力各社は危機感を募らせていた。というのも、神戸製鋼は西日本の電力会社が採用する加圧水型軽水炉(PWR)の原子炉格納容器をはじめ、全国の原発の主要設備に多くの部材を納入しているからだ。
データが改ざんされた神戸製鋼の製品が原発で使用されていることが判明すれば、真っ先に稼働停止に直結しかねない。電力業界の対応は誠に素早かった。
しかし、その電力業界らしい“横並び”の対応が、かえって“お上”である原子力規制委員会の怒りを買ってしまった。
11月9日に行われた原子力規制庁の会合には東京、中部、関西、九州の4電力の原発担当幹部が出席し、神戸製鋼のデータ改ざん問題について規制委側に「原子力施設の安全性に対し、直ちに重大な影響を与える問題ではない」と回答する資料を提出した。
すると、規制委の山中伸介委員は「非常に不満足。(原発の)安全上重要な部分に、神戸製鋼の製品が使われているかどうかを聞いている」と“出直し”を指示した。
その後、電力各社がさみだれ式に、規制庁に報告を行う事態になり、結果的に対応が後手に回った。
関電、九電の両社は、再稼働延期の理由について、神戸製鋼のデータ改ざん問題への対応に時間がかかるためとしている。
終わりが見えない安全確認
「給与の完全復活が遠のいた」。ある関電社員はこう嘆いた。
関電も九電も早期に原発を再稼働させ、収益を改善させるシナリオを描いていた。特に関電は大飯3、4号機を再稼働させた後に、電気料金の値下げを予定していたが、そのスケジュールも先送りになってしまった。
電力業界からは規制委に対する恨み節も聞こえてくるが、更田豊志委員長は「むちゃなことを言っているつもりはない。原発を運用する者としての責任」と意に介さない。今後の対応も、「長期戦になる可能性はある」と述べた。
つまり、神鋼ショックによる、電力業界への“とばっちり”は、まだ終わりが見えないのだ。
電力各社は、まずは原発の安全上重要な機器に絞って安全確認の調査を進めてきたが、今後は調査対象を広げざるを得ない。
神戸製鋼の報告書によると、データ改ざんは5年以上にわたって行われていた。さらに過去へさかのぼって調査が必要になる事態も予想される。
やはり原発は、見通しの立たない事業。今後も“外野”に振り回される可能性は少なくない。 (「週刊ダイヤモンド」編集部 堀内 亮)