2018年10月25日木曜日

原発賠償金1200億円の抜本改正は今回も見送り

 政府は臨時国会に原子力損害賠償資金の上限を現行の1200億円に据え置いたままの原賠法改正案を提出します。
 この上限額は1961年に制定された原賠法で、原発ごとに備えさせる損害賠償資金として定めたものですが、そのまま改訂することなく2011年3月の福島原発事故を迎えました。
 事故が起きてから賠償資金をまかなうため、2011年8急ごしらえで原子力損害賠償支援機構法を成立させた際にもこの上限額の改定は見送り、代わりに出来るだけ早急に見直しをする旨を付帯決議で謳いました。しかし結局現在に至るまで放置されました。
 
 この賠償資金は「損害保険金」として確保すれば良いので、1200億円に対しては約6000万円ほどの保険料を支払うことで済みます。実際の賠償金の100分の1ほどに過ぎない1200億円に据え置く理由は、増額するとそれに比例して保険料が上がり、原発の発電コストを押し上げるからです。
 その結果どうなるかは明らかで、事故が起きるたびに福島の事例が繰り返されることになります。
 事故が起きるとまず原賠支援機構に類するものを設置し、国はそこを通して電力会社に賠償金を融資し、電力は電気料金にその返済分を上乗せして国民から収奪した分で、数十年を掛けて精算します。
 
 要するに賠償金は国民が電気料の形で負担してくれるので、敢えて高額な損害保険に入る必要はないということで、この必要額の100分の1にも満たない賠償資金「1200億円」こそは、実際には原発が高コストであることを巧みに隠すための「マヤカシ」に他なりません。
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原発賠償、抜本改正見送り 電力会社の責任現状のまま
YAHOO ニュース 2018年10月24日
 原発で重大な事故が起きた際の賠償制度をめぐり、政府は、原子力損害賠償法の改正案を取りまとめた。原発ごとに備えさせる上限額を現行の1200億円に据え置き、電力会社の賠償責任も現状のまま「無限」とする。賠償額が8兆円超に膨らんだ東京電力福島第一原発事故の教訓から見直しの議論が始まったが、国の責任には踏み込まず、抜本的な改正は見送られた。
 
  原子力委員会の専門部会が議論の結果をまとめ、文部科学省が23日、自民党の部会に改正案を示した。臨時国会に提出する。
  現在の原賠制度は、電力会社に無過失・無限責任を負わせる。そのうえで民間保険や政府補償で原発ごとに最高1200億円を備えさせ、超えた分は、電力大手や政府が出資する原子力損害賠償・廃炉等支援機構が支援する。電力会社が負担する上限がなく、電力業界は見直しを求めていた。朝日新聞デジタル