2018年10月26日金曜日

防災行政無線のスピーカー 事故情報、全域に届くか

 原発事故の際、事故状況や避難指示などを迅速で正確に伝えるには、自治体の防災行政無線のスピーカーが重要ですが、東海第二原発に近い水戸市の例では、市内に約150本のスピーカーがありましたが、東日本大震災では老朽化でほとんど使えませんでした。
 来年3月までに全てのスピーカーを最新機種にし、無線が通じにくい地域については全スピーカー本を撤去し、代わりにラジオを配布し、情報を流すようにするということです
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<点検 東海第二原発 避難計画>
防災行政無線のスピーカー 事故情報、全域に届くか
東京新聞 2018年10月26日
 東海村の日本原子力発電東海第二原発で事故の際、住民の命を守るには、事故状況や避難指示などを迅速で正確に伝えることが基本になる。それを支えるのが、自治体の防災行政無線のスピーカーだ。
 (茨城)県のまとめでは、原発から三十キロ圏の十四市町村には、スピーカーは設置されているが、老朽化していたり、配置にばらつきがあったりするという。
 水戸市の常澄地区には、スピーカー約六十本が立つが、約三十年前に設置されたもので、市の担当者は「全国有数の老朽無線なんです」と打ち明ける。
 市内に約百五十本のスピーカーがあり、東日本大震災では老朽化でほとんど使えず、市職員が広報車を走らせ避難を呼び掛けた
 
 市は、現在のスピーカーの性能では原発事故などに対応することは難しいと判断。来年三月までに全てのスピーカーを最新機種にする。設置は半数程度になるが、聞こえる範囲など性能が格段に上がるため、問題ないとする。洪水対応のため、那珂川や桜川沿いに重点的に設置するという。
 内原地区では全スピーカー七十五本を撤去し、代わりに約五千三百世帯にラジオを配布し、情報を流す。担当者は「ラジオならば、原発事故の屋内退避でも活用できる」と話す。
 ただ、無線が聞こえない地区も残る。原発事故では市域全域が避難対象。そのため、市は、市民の携帯端末にメールで連絡するという。だが、携帯を持たなかったり、充電がなかったりすると、情報を取れなくなる恐れがある。
 
 福島県によると、東京電力福島第一原発事故では、地震で防災無線の基地局やスピーカーが壊れ、住民に伝えられないケースもあった。このため、住民は、口コミやテレビなどで独自に情報収集するしかなく、混乱に拍車を掛けた。
 また、住民への伝達内容を分かりやすくすることも課題だ。国の原子力災害対策指針でも、「用語を平易化するなど分かりやすくする」とある。
 
 七月に東海村であった避難訓練で、村は携帯に流す内容は詳細にしたが、昨年に比べ、無線で流す内容について事故の詳細をそぎ落とし簡略化した。ただ、訓練を見学していた原発を考える住民団体「リリウムの会」のメンバー津幡美香さん(47)は「原子力の知識を持たない人には、まだ分かりにくい」と指摘する。
 訓練後、村には内容について「分かりやすくなった」「シンプルに『逃げろ』だけでいい」と賛否両論の意見が寄せられた。担当者は「これからも内容を工夫し続けなくてはならない」と話した。 (山下葉月)