北海道新聞が、泊原発の避難訓練で特にバス利用の実効性について問題点を指摘した社説を掲げました。
バスでの避難を計画したのに、実際にはバスが使えないということでは一体何のための訓練だったのかということになります。
道なり県なりがバスが使えると判断したのであれば、運転手の不安解消のための説明会が必要という指摘は実際的な提案です。その結果どうなるかは分かりませんが。
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(社説) 泊原発防災訓練 備えに穴ないか点検を
北海道新聞 2018年10月29日
この態勢で、住民は安全な場所に避難できるのだろうか。
北海道電力泊原発(後志管内泊村)から放射性物質が漏れ出したとの想定で実施した道の原子力防災訓練は、これまでと同じく、バスによる住民避難を行った。
しかし、バス会社の多くは実際に事故が発生した際のバス派遣に難色を示しており、計画通り移動手段を確保できるかは不透明だ。
訓練を重ねて避難などの手順を確認することは大切だが、事故時に対応が変わるようでは住民の不安を払拭(ふっしょく)できない。
道はまず、放射性物質の危険度や、防護服などの安全対策について情報を開示し、運転手に説明を尽くす必要がある。
他にも計画や備えに欠陥はないか、不断に点検し、改善を図ってもらいたい。
バスによる避難訓練は、6社の29台が後志管内の泊、共和、ニセコなど6町村の計約600人を札幌市などの避難所に運んだ。
ところが、この6社は今年7月までの北海道新聞の取材に「安全確保に不安がある」などとして、事故時のバス派遣は「できない」「困難」と回答していた。
その後、「可能」と答える会社も出てきたが、大半は現在も態度を明確にしていない。
住民が「本当にバスは来るのか」と心配するのも当然だ。
道と北海道バス協会は2015年、避難バス確保などのため「原子力災害時における住民避難用バス要請・運行要領」に合意した。
ただ、運転手の不安解消のための説明会などは開かれておらず、要領が周知されないまま、放置されていたのが実情だ。ずさんと言わざるを得ない。
道は道民を守る責務がある。対応を協会へ丸投げすることなく、自ら運転手の理解を得る努力が求められよう。
被ばくの可能性のある場所での作業に対する懸念は、バスだけに限らない。
冬場であれば、避難路の除雪も課題になる。重機を動かす建設業界などと事前に対策を話し合っておく必要がある。
今回は、台風による暴風雨と原発事故の複合災害への備えを試したが、台風で孤立した避難者の人数などの想定はなかった。
この点についても、参加した住民から実効性を疑問視する声が聞かれた。
実際の事故では「想定外」は通じない。より具体的な条件を設定して訓練を行うべきだ。