2018年10月27日土曜日

27- 国連特別報告者が福島への子どもの帰還見合わせを求める

 国連人権理事会特別報告者が、25日の国連総会で、福島原発事故避難者に対する日本政府の避難解除の基準=年間被曝量20ミリシーベルトではリスクがあるとして、子どもたちの帰還を見合わせるよう求めました
 日本政府は事故の当初から年間被曝量20ミリシーベルト以下であれば居住できるとして、それ以上の地域の住民だけの避難を認め、それ以下の地域からの避難者を「自主避難者」としてことごとく差別して来ました。前規制委員長の田中俊一氏は、「勝手に避難した人たちだから、国は手当てを出す必要はない」とまで述べました。
 
 年間被曝量20ミリシーベルトと言えば、放射線管理区域の定義=年間被曝量5ミリシーベルトの4倍にも当たるもので、そこで居住できるとするのは狂気の沙汰です。
 福島の事故に25年先だって起きたチェルノブイリ事故では、ソ連は「避難の権利」と呼ばれる原則を作り法制化しました。それは1ミリシーベルト以下は避難は不要、1~5ミリシーベルト地域の住民は自己判断で避難を決め(国は避難者にはしかるべき手当をだす)、5ミリシーベルト以上は強制的に避難させ手当てを出すという、極めて合理的なものでした。
 
 ですからそうした先例を無視した日本の基準は「野蛮」なレベルにあるもので、国際的に非難されるのは当然です。
 政府は帰還は強制ではないと言いますが、非帰還者には明確な差別をつけていること自体、強制に当たるものです。
 また政府は、ICRPが避難などが必要な緊急時の目安として、年間の被ばく量を20ミリシーベルトより大きく100ミリシーベルトまでとしていると主張していますが。それは事故直後に、文字通り「緊急避難的に」認められるという意味で、事故後7年以上が経過している日本のケースがその対象外であるのは自明のことです。
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国連の特別報告者 福島への子どもの帰還見合わせを求める
2018年10月26日
国連人権理事会が任命した特別報告者が、25日の国連総会で、福島の原発事故を受けた日本政府の避難解除の基準ではリスクがあるとして、子どもたちの帰還を見合わせるよう求めました。これに対して、日本側は、国際的な専門家団体の勧告に基づいていると反論し、日本側との立場の違いが浮き彫りになりました。
 
国連の人権理事会が任命したトゥンジャク特別報告者は、25日の国連総会の委員会で、東京電力福島第一原子力発電所の事故のあと、日本政府が避難指示を解除する基準の1つを年間の被ばく量20ミリシーベルト以下にしていることについて「去年、人権理事会が勧告した1ミリシーベルト以下という基準を考慮していない」と批判しました。
これに対し、日本政府の担当者は、この基準は専門家で作るICRP=国際放射線防護委員会が2007年に出した勧告をもとにしており、避難指示の解除にあたっては国内の専門家と協議して適切に行っているとして、「こうした報告が風評被害などの否定的な影響をもたらすことを懸念する」と反論しました。
 
この反論に、トゥンジャク特別報告者は、同じ専門家の勧告で、平常時は年間の被ばく量を1ミリシーベルト以下に設定していると指摘し、これを下回らないかぎりリスクがあるとして、子どもたちや出産年齢にある女性の帰還は見合わせるべきだと主張し、日本側との立場の違いが浮き彫りになりました。
 
政府「指摘は誤解に基づいている」
トゥンジャク特別報告者の批判について、政府の原子力被災者生活支援チームは、「ICRPの勧告では避難などの対策が必要な緊急時の目安として、年間の被ばく量で20ミリシーベルトより大きく100ミリシーベルトまでとしていて、政府は、そのうちもっとも低い20ミリシーベルト以下になることを避難指示解除の基準に用いている。また、除染などによって、長期的には、年間1ミリシーベルトを目指すという方針も示している」と説明しています。
 
そのうえで「子どもなどの帰還を見合わせるべき」という指摘については、「子どもたちに限らず、避難指示が解除されても帰還が強制されることはなく、特別報告者の指摘は誤解に基づいていると言わざるをえない」と反論しています。