国・規制委・東電は、トリチウム含有処理水を最終的に海洋放出する意向を隠そうとしていませんが、先の3カ所での公聴会では徹底的に反対されました。
そもそもトリチウム含有処理水には、規制値以上の他の放射性物質は含まれていないというのが前提でしたが、公聴会の直前にそれを否定する情報が流されました。あたかも当初からそのタイミングを狙っていたかのようでした。
共産党国会議員団が3日、福島原発の多核種除去設備(ALPS)で処理した汚染水の処分方法をめぐる公聴会の結果や、約8割にあたる約75万トンの処理水にトリチウム以外の放射性物質が国の放出基準(告示濃度限度)を超えて残っている問題で、経済産業省、東電、原子力規制委員会から説明を受けました。
議員団は冒頭、汚染水の情報を隠蔽してきた東電と国に抗議しました。
毎日新聞の社説も併せて紹介します。
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情報隠し東電に抗議 共産党議員団 汚染水で聞き取り
しんぶん赤旗 2018年10月4日
日本共産党国会議員団福島チームは3日、東京電力福島第1原発の多核種除去設備(アルプス)で処理した汚染水の処分方法をめぐる公聴会の結果や、約8割にあたる約75万トンの処理水にトリチウム(3重水素)以外の放射性物質が国の放出基準(告示濃度限度)を超えて残っている問題で、経済産業省、東電、原子力規制委員会から説明を受けました。議員団は冒頭、汚染水の情報を隠蔽(いんぺい)してきた東電と国に抗議しました。
東電は、アルプス処理水に含まれる放射性物質濃度のデータを説明していませんでした。東電の木元崇宏原子力・立地本部長代理は「説明が足りなかったことを反省している」と述べ、基準超えの理由を「稼働率を上げて汚染水処理量を増やすことを優先したため」と釈明しました。
資源エネルギー庁の比良井慎司・原子力発電所事故収束対応室長は、基準超え汚染水の存在を以前から知っていたと認め、「今回まとめた資料で8割を超えていると公開した」と述べました。8月末の公聴会で、海洋放出への反対意見が相次ぎ、タンクでの長期保管も提案されたことについては、今後、国の小委員会で検討すると表明しました。
議員団は、汚染水問題は国民的な課題だと強調。また、公聴会はアルプス処理水に含まれる放射性物質はトリチウムだけであることを前提としていたと指摘し、公聴会のやり直しを求めました。
塩川鉄也、高橋千鶴子、藤野保史(以上衆院)、井上哲士、岩渕友、武田良介、山添拓(以上参院)の各議員が参加しました。
(社説) 福島処理水の基準超え 変わらぬ東電の隠蔽体質
.毎日新聞 2018年10月3日
福島第1原発の汚染水を浄化した処理水の8割超で、トリチウム以外の放射性物質の濃度が国の排出基準を超えていることが分かった。
東京電力と政府は基準超えを当初から知っていたが、積極的に公表してこなかった。処理水の処分に関する国民の合意形成を、自ら難しくした責任を重く受け止めるべきだ。
福島第1原発の汚染水は、国費も投じた多核種除去設備(ALPS)で浄化されている。東電は、トリチウム以外の放射性物質の濃度を基準値以下にできると説明してきた。処理水を薄めればトリチウムも基準値をクリアできるため、海洋放出が有力な処分方法と見られていた。
ところが、東電によれば、8月時点でタンクに貯蔵していた処理水89万トンのうち75万トンは、トリチウム以外の放射性物質を浄化しきれていなかった。基準の100倍以上の放射性物質を含む処理水だけで、6万5000トンもあった。
ALPSの稼働初期の不具合や、放射性物質を除去する吸着材の交換頻度を減らして処理効率を上げようとしたことが原因だという。
東電は処理水のサンプルの分析結果をホームページに載せていたが、会見などで説明はしていなかった。これでは情報公開とは言えない。東電の隠蔽(いんぺい)体質は変わっていないように見えてしまう。
政府がALPSに国費を投じたのは、東京五輪招致に絡み、汚染水が制御下にあることを打ち出す狙いがあった。東電に国民への説明を促さなかったのは、トリチウム以外に問題はないと国内外に印象づけたかったからだと言われても仕方ない。
東電は処理水を再浄化する方針だが、丁寧な説明を欠いた結果、ALPSの処理能力そのものにも疑念が持たれる事態を招いている。
処理水の処分について検討する政府の有識者小委員会でも「詳しい説明がこれまでなかった」「基準超えの処理水が思った以上に多い」などの意見が相次いだ。これまでの議論の土台が揺らいでいる。
福島第1原発では、あと2年ほどで処理水を貯蔵するタンクの設置場所がなくなるというが、期限ありきの処分方針決定は許されまい。透明性のある議論を積み重ね、国民合意を得る努力がさらに必要だ。