原発の安全性を監視・検査する新制度が2020年4月に導入されるのを前に、原子力規制委員会は10月1日、関電大飯原発で試験運用を始めました。
現行の制度では、検査項目や日程などを電力会社に事前に通告し、チェックリストに従って行いますが、16年に国際原子力機関(IAEA)からこれは硬直的と指摘され変更しました。
従来型の“チェックリスト型検査”では様々な見落としが生じ、米デービス・ベッセ原発で異常な兆候があったにもかかわらず、定められた検査項目にないとの理由で検査官が見過ごした結果、圧力容器が破裂寸前になった例があったということです。
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柔軟な原発検査、大飯で試験運用 IAEA指摘受け検査官に権限
福井新聞 2018年10月1日
原発が安全に運転・管理されているかを監視する国の検査の新制度が2020年4月に導入されるのを前に、原子力規制委員会は10月1日、実際の原発施設で試験運用を始めた。同日は福井県おおい町の関西電力大飯原発で行い、1年半の間に全国計17原発で実施する。現行の検査は、決められた項目だけを確認する「チェックリスト方式」だったが、新制度では、検査官が施設にいつでも自由に立ち入り、設備やデータを調べ、現場の作業員に聞き取りもできる。
現行の制度では、検査項目や日程などを電力会社に事前に通告し、立ち入りが制限されるエリアもあったが、16年に国際原子力機関(IAEA)から硬直的と指摘され、変更した。
この日、大飯原発には、規制委の山中伸介委員らが視察に訪れた。視察の冒頭で、検査官や関電幹部らを前に「試験運用を通じて検査への実践力を培ってほしい」と述べた。その後、現在運転中の大飯3号機で、ポンプ室から出火したと想定して関電が消火訓練を行い、検査官が立ち会って検査。
新制度では、検査官はチェックリストではなく、実務上の着眼点を詳細にまとめた「検査ガイド」を使う。検査ガイドは、運転管理や防災・非常時対応、放射線管理などの分野ごとに分かれている。1年半の試験運用で、検査ガイドの内容や検査の所要時間、自由に立ち入りをした際の問題点を洗い出して修正する。
規制委、原子力新検査制度をきょう試運用開始/大飯で火災防護確認
電気新聞 2018年10月1日
原子力規制委員会は、きょう1日から新検査制度の試運用を始める。原子力規制庁の検査官が、リスクの大小などを意識した「原子力規制検査」を全国の発電所で実施。一方、事業者側は旧来の“言われたことだけをやる”姿勢を改め、自らの施設を健全な状態に保つ責任は、事業者自身にあることを強く肝に銘じる必要がある。規制当局、事業者の双方が、言いたいことを言い合える関係を構築できるかが、試運用成功の鍵となる。 (近藤 圭一)
2020年4月に始まる新検査制度の成功は、更田豊志委員長が最も意識している最重要事項だ。更田委員長は、日本が参考にするROP(原子炉監視プロセス)導入につながった米デービス・ベッセ発電所の例を挙げ、定められたメニューに基づいた従来の“チェックリスト型検査”では、様々な見落としが生じる可能性を指摘。デービス・ベッセでは、異常な兆候があったにもかかわらず、定められた検査項目にないとの理由で検査官が見過ごし、圧力容器が薄皮一枚になっていた。